メルセデスベンツC240(5AT)【ブリーフテスト】
メルセデスベンツC240(5AT) 2001.04.24 試乗記 ……500.0万円 総合評価……★★★★花よりダンゴ
"地下駐車場から駆け上がってくるC240を見ながら、「ずいぶんスマートになったなァ」と思った。Aピラーが寝ている。ドラッグ係数は、わずか0.27(C180は0.26)だという。
硬い芯に、ゆるめに革を巻いたステアリングホイールを握って走り始めると、若々しくなった外観とはうらはらに、ズッシリとした、まごうかたなき“メルセデスライド”が印象的。フロントサスペンションがダブルウィッシュボーンから「3リンク式」と呼ばれるストラット形式に、ステアリングギアがリサーキュレーティングボールからラック&ピニオンに、とシンプルな機構になったが、ドライブフィールに軽々しさはない。
一方、トンネルコンソールに設けられた折り畳み式カップホルダーをはじめ、レインセンサーによるオートワイパー、周囲が暗くなると自動的にヘッドライトを点灯させるオートライトシステム、そのうえ車線変更時にはウィンカーレバーに触れるだけで数回ターンシグナルライトが点滅し、いざクルマから降りるためにキーを抜くと、ステアリングホイールが跳ね上がってシートが後退……と、下にも置かぬおもてなし。そんなにドライバー甘やかしてどうするの?
「E」「A」「M」それぞれの初期モデルの、ベンツらしからぬ品質で評判を落としかけたスリーポインテッドスター。Cクラスの開発にあたっては、コンパティビリティ(自車が潰れることで、相手のダメージも減らす)を主張するエンジニアサイドと、クラッシュテストの成績を重視する営業サイドとの対立があったと聞く。導き出されたのは、自ら“メルセデス”を模し、かつ、転がり出すと止まらない「ゲルマン魂」で押し進められたユーザーフレンドリー路線。花よりダンゴのニューモデル。"
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年9月27日から日本での販売が開始されたニューCクラス。190の後継車として初代Cクラスがデビューしたのは1993年だから7年ぶりのフルモデルチェンジである。「ボディ」はもちろん、「ステアリング形式」(ボールナットからラック&ピニオンへ)も「フロントサスペンション形式」(ダブルウイッシュボーンからストラットへ)も変更され、見ても乗っても触っても先代Cクラスの面影はほとんど残っていない。日本へは、2リッター直4(129ps)搭載しかし名前は「C180」、2リッター+スーパーチャージャー(163ps)の「C200コンプレッサー」、そして2.6リッターV6(170ps)を積む「C240」の3種類が輸入される。トランスミッションは、すべて5段AT。(グレード概要)
C240は、Cクラスサルーンのトップグレード。コンパクトモデルながら500.0万円と、価格はトヨタ・クラウン並み。ステアリングホイールは、左右どちらでも選べる。C200コンプレッサーとの装備上の違いは、自動防眩ルームミラー&ドアミラー、レインセンサー、そして6連奏CDチェンジャーが付くことだ。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
メーターナセル内には、260km/hまで書かれた大きな速度計が中央に。左に申し訳なさそうに回転計、右に燃料計が備わり、細かい情報は、速度計内のディスプレイに表示される。必要最小限の情報をドライバーにわかりやすく伝えるという点で、妥協がない。インストゥルメントパネルは、曲面を使ったソフトな造形となった。インパネ両端の、柔らかく左右に突き出すブロワーは、ちょっとメルセデス離れしている(?)。センターコンソールのスイッチ類が、やや煩雑。
(前席)……★★★★
座面長がしっかりあり、しかも前端が軽くスラントしているため太股への圧迫感がごく小さく、ペダル操作もしやすいシートだ。安楽ではないが、疲れにくい。サイドサポートは、ほとんど考慮されない。なお、トンネルコンソールには、深さ6cmのトレーと10cmの保冷モノ入れのほか、“飛び出す”カップホルダーが備わる。
(後席)……★★★★
高めの座面と、前席下に足先を入れられることで、数値以上に広く感じる足もと。前席背もたれ裏の両端がえぐられ、前に足が長いヒトが座ったとき、つまりフロントシートが後にスライドされた場合に、すこしでもスペースを稼ぐ工夫がされている。頭上のスペースは必要十分。天井が頭の後まで伸びているのも加点ポイントだ。トンネルコンソール後端に、後席用のエアコン吹き出し口が設けられる。
(荷室)……★★★
床面最大幅140cm、奥行き105cm、高さ50cmと、数値上はまずまずのラゲッジルーム。しかし、FR車ゆえ、デファレンシャルを避けるためか奥のフロアが持ち上がり、また、マルチリンクサスの張り出しのためトランク奥の幅は85cmと大幅に狭まる。後席背もたれが、分割可倒式になっているのが救い。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
遮音がよくされた静かなV6 3バルブユニット。スロットルを開けても、声を荒げることがないかわり、スウィートな面を見せることもない。粛々と働く動力源だ。細かくギアが切られた5段ATはスムーズなうえ、軽くペダルを踏めばすぐに下のギアにチェンジするので、痛痒感ない加速を得られる。シフターを左右に動かすことでシーケンシャルにギアを変えることが可能な「ティップシフト」の反応もいい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
ベンツのユーザーが望むであろう重厚感ある乗り心地を実現。トップグレードらしく「205/55R16」と、下位グレードの「195/65R15」よりひとまわり大きなサイズのタイヤを履く。高速でのスタビリティは抜群。ハンドリングは素直で上質。カーブの連続が楽しいが、それでも、たとえばBMWのようにドライバーのココロを煽らないのが、シュツットガルト産の個性である。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者webCG青木禎之
テスト日2000年10月6日
テスト車の形態広報車
テスト車の年式2000年型
テスト車の走行距離1920km
タイヤ(前)205/55R16 91V/(後)同じ(いずれもブリヂストンTuranza RE030)
オプション装備--
テスト形態ロードインプレッション
走行状態市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離287.7km
使用燃料34.0リッター
参考燃費8.5km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
NEW
「カスタム」はオラオラ路線へ!? 新しい「ホンダN-BOX」のフロントデザインを考察する
2026.8.26デイリーコラム2026年7月に登場した「ホンダN-BOX」のマイナーチェンジモデルはデザインに手が入れられており、特に「カスタム」はいわゆる「オラオラ感」が大幅にアップ。他社の同系モデルと同様の路線を歩むことになった。いまホンダのデザインに何が起きているのか? -
NEW
第126回:新型BMW X5(前編) ―これは終わりの始まりか? 迷走する“ノイエクラッセ・デザイン”に物申す―
2026.8.26カーデザイン曼荼羅スポーティーなプレミアムSUVの代名詞だった「BMW X5」が、ついに新型に! “ノイエクラッセ”のエッセンスが取り入れられたそのデザインの評価は? そもそもこの造形で、BMWはなにを表現したかったのか? 賛否のわかれる新型X5のデザインを、有識者と考えた。 -
OEM車で自社製品らしさを出すために、多田さんだったら何をする?
2026.8.25あの多田哲哉のクルマQ&A他メーカーが開発したクルマを、自社製品として別の名前でユーザーに供給するOEM車。エンジニアの工夫次第で、オリジナルとは異なる独自の個性を出すことはできるのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。 -
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.8.25試乗記BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。 -
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】
2026.8.25試乗記カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。 -
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。





























