メルセデス・ベンツEクラス【試乗記】
E320がベストチョイス 2002.08.14 試乗記 メルセデス・ベンツEクラスメルセデスのミドルクラスセダン「Eクラス」が、6年半ぶりにフルモデルチェンジした。スペインはバレンシア地方で開催された国際試乗会で、『Car Graphic』初代編集長の小林彰太郎が、新型Eクラスに乗った。
会員コンテンツ「Contributions」より再録。
Sクラス並の質感
日本市場でも夏前には発売されるメルセデスのミドルサイズセダン、新型「Eクラス」(W211型)を、いち早くスペインでテストした印象を記す。
結論から言うなら、新型Eクラスは旧型に比べ、事実上すべての点で、次元が異なるほど改善されていた。21世紀のメルセデスは、とびきり上質な実用車という伝統的美点に加えて、操縦すること自体の魅力をたっぷり備えるに至り、ライバルBMWの牙城にまた一歩迫ったのである。
Eクラス全体のコンセプトも大いに変わった。4ドアのメルセデスとしては初めて、後席だけでなく、前席バックレストも水平に前倒できるようになった。その結果トランクスルーと合わせれば、2900mmの長尺ものが積める、多目的性を得たのである。
新Eクラスのインテリアは、旧型からみると遥かに質感が高く、見た目にも豪華で上級サルーンの「Sクラス」に匹敵する。ステアリングは、電動で角度とリーチの両方を調節できるのが非常にいい。運転席に座ると体型を瞬時に感知して、クッション/バックレスト内の空気室を調整し、上半身のホールドを最適にする、世界初の電子制御シート「ダイナミックマルチコントロール」もオプションで備わる。
シャシーはエンジンより速く
足まわりで最大の話題は、「E320」以上にオプションで装着できる、「電子制御アクティヴエアサスペンション」と、「ブレーキバイワイア」だろう。前者は、一歩先にS/SLクラスで採用された技術で、バネとダンパーの強さを、前後・上下・左右の加速度、荷重、路面状況、ステアリング角速度などに応じ、瞬時に変化させる。シトロエンは同様なアクティヴサスペンションを、1995年から採用しているが、メルセデスのはさすがに制御がきめ細かい。
エンジンの種類は、当面ガソリンが3種(V6がE240とE320、V8はE500)、ディーゼルが2種(4気筒がE220 CDI、5気筒はE270 CDI)の合計5種類用意されているが、日本へ輸入されるのは残念ながらガソリン3車種のみである。トランスミッションは、本国には6MTが依然として健在。シフトレバーを左右に動かしてでギアチェンジできる「シーケントロニック」もあり、日本仕様はこの5ATのみとなる。
スペインでは、ガソリン3車種に乗る機会があった。すべてを考慮に入れると、エアサスペンション付きのE320(5AT)がベストチョイスだと思った。
224psの出力と、32.1kgmのトルクに不足のあるはずもなく、必要ならセレクターを左右に振って、低いギアのままエンジンを6000rpmまでキープし、ポテンシャルをフルに使って走れる。この新型5ATはローまでロックアップが効くほか、ドライバーの癖を学習して、それに合ったシフトパターンを選択するすぐれモノである。
むろんメルセデスだから、“シャシーはエンジンより速く”、けっして破綻を見せない。足は非常にしなやかで当たりはソフトだが、ハンドリングは一級品である。筆者はバリアブルレシオである、速度感応パワーステアリングのフィールが特に気に入った。
E500は薦められない。E500で合法的に走るのは、苦痛以外のなにものでもないからだ。
(文=小林彰太郎/写真=ダイムラークライスラー日本/2002年3月)

小林 彰太郎
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