ボルボS60(5AT)【試乗記】
ボルボとウドン 2002.08.05 試乗記 ボルボS60(5AT) ……390.0万円 2002年7月1日、ボルボのミドルクラスサルーン「S60」に、エントリーグレードが追加された。同年7月30日、岡山県は倉敷市で開催されたプレス向け試乗会で、webCG記者が試乗した。激しいシノギの削り合い
「たまたまドアが4枚ある」と謳われるボルボのスタイリッシュなサルーン「S60」に、2002年7月1日、新しいグレードが追加された。従来、最も廉価だった「S60 2.4」より30.0万円安い365.0万円のプライスが付けられたモデルで、その名も「S60」。車名のあとに数字はつかない。なぜなら、搭載されるエンジンが、「2.4」と同じ、2.4リッター直列5気筒エンジンだから。ただし、最高出力は「2.4」より30ps低い140psとなる。スウェーデン本国では以前からカタログに載っていたモデルで、このたび、晴れてわが国でのデビューとあいなった。つまり、従来のボトムモデル「2.4」は、いわば2.4リッターNA(自然吸気)エンジンのハイチューン版だったわけだ。
S60のワールドデビューは、2000年夏。日本へは、2001年1月から導入が始まった。なぜ、ようやく140ps版が輸入されることになったかというと、もちろんS60があるていど市場にいきわたったということがあるが、幾多のライバルが台頭してきたからである。
たとえば、ジャガーは「Xタイプ」に、エントリーグレード「X 2.0 V6」を追加した。エンジンは2.1リッターV6(159ps、20.4kgm)ながらナビゲーションシステムが標準で、価格がS60と同じ365.0万円である。メルセデスベンツは「Cクラス」に、DVDナビなどを付けた特別限定車「C180リミテッド」(410.0万円)を設定するなど、激しいシノギの削り合いが繰り広げられている。
S60は、わが国ではエステート(ワゴン)メインのボルボのなかで3番目の売れ筋モデル。導入してからの売り上げ台数は、目標の1300台を大きく超える2133台と好調だ。セダンの市場を守りつつ「より多くのお客様にお選びいただけるように」(広報氏)追加したのが、エントリーモデルたる「S60」である。
その試乗会が、2002年7月29日に岡山県は倉敷市を基点に開催された。
見分けがつかない
倉敷という名前の由来は、中世時代、領主に収める米を収納する「倉敷地」からきたとする説が有力だそうだ。なるほど、昔の町並みを保存する「美観地区」を訪れると納得できる。柳並木の掘り割りを錦鯉が泳ぎ、黒字に白のバッテン模様の「なまこ壁」に囲まれた蔵屋敷や、格子窓を持つ古い家が並ぶ。われわれが泊まった、ナンの変哲もないビジネスホテルから約200m、歩いて2分ほどの距離である。
観光客の少ない早朝を狙って、美観地区で撮影を行った。白壁と柳の緑に囲まれた「クラシックレッド」のボルボはカッコイイ。気の早い観光客が、通りすがりにクルマを眺めていく。
S60と2.4に、外観上の違いはほとんどない。リアに「2.4」のバッヂが付かないこと、2.4の「16インチタイヤ+アルミホイール」に対し、「195/65R15タイヤとスチールホイール」が組み合わされることくらいである。もちろん、ホイールカバーは標準装備。テスト車は、「EBO」(アーリーバイイングオファー)と呼ばれる、レザー内装とアルミホイール、オーディオのアディショナル装備を装着するので、ますます2.4と見分けがつかない。EBOは、初期ロットのみのお徳セットだ。価格は、25.0万円。これを付けても、2.4との価格差に5.0万円余裕があることを考えると、お徳感は高い。
内装の違いは、シート素材が新開発のファブリックになったことだけ。試乗車は、ベージュのレザーシートを装着し、ゴージャスだった。ステアリングも本革巻で、運転席のみパワーシートが付く。
これでいいのだ
岡山県内の試乗コースも用意されていたが、せっかく四国が近いことだし、有名な讃岐ウドンが食べたかったので、あえて瀬戸大橋を渡る四国への道を選ぶ。リポーターとカメラマン2人を乗せて、弊社自動車専門誌『NAVI』のサトー副編集長のドライブで走り出す。30psデチューンされたエンジンだというが、「男4人と撮影機材を2人分積んでるのに、トルクに不足はまったくない」とサトー。そのコトバ通り、ステアリングホイールを握って実際に運転すると、予想以上によく走る。デチューンされたといっても、トルクは22.4kgm/3500rpm。2.4と較べて1.1kgm低いだけなのに加え、最大トルク発生回転数は1000rpm低いのだ。4500rpm以上ではノイジーだが、高速道路の追い越しもラクにこなす。
5段ATは普通のストレートゲート。ターボ系はシーケンシャルモードを持つのに対し、NA系には装着されない。でも速く走るクルマじゃないから、不便はない。山道の下りなどでホールドするには、むしろ便利だ。低速でちょっとバタつく足まわりが気になったが、目くじら立てるほどでもないのは、195/65R15と細身のタイヤのおかげだろう。
S60は、設定としてはエントリーグレードであるが、道具として必要十分だ。4人+機材を乗せて、街乗りから山道、高速道路まで軽くこなす。ハイパワー版もあるけれど、瀬戸大橋を渡りながら瀬戸内海を眺め、「これでいいのだ」と思った。運転しても乗っていても急かされず、ノンビリ景色を眺めながら走る気になる。2.4より30.0万円安いから、浮いたお金でパッケージオプションを付けて、余った5.0万円で旅にでる。いいんじゃないでしょうか? ちなみにわれわれが訪れたウドン屋は、香川県のタクシー運転手オススメの「長田屋」さんというお店。安くて美味しいですよ。
(文=webCGオオサワ/写真=清水健太/2002年7月)

大澤 俊博
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