BMW 328iスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
攻める定番 2012.04.01 試乗記 BMW 328iスポーツ(FR/8AT)……672万1000円
スポーティーセダンの雄「BMW 3シリーズ」。“シルキー6”から高効率な2リッター直4ターボに載せ替えた新型は、引き続きプレミアムセダンの定番であり続けるのか。
まごうことなき3シリーズ
新型「BMW 3シリーズ」は、まず「328i」が日本に導入された。BMWもメルセデス・ベンツもモデル名の数字と排気量がリンクしなくなって久しいが、新型328iも2.8リッター直6ではなく、2リッターターボの直4エンジンだ。読んで「なんだ直4か」とがっかりした人にこそ乗ってほしい。BMWもそう考えているはずだ。
これまでBMWをBMWたらしめてきた直6エンジンのスイートな回転フィーリングは確かにすてきだったが、いろいろひっくるめると新世代直4ターボのほうが魅力的で、これなら素直に直6エンジンに対して「またいつか(なにかしら技術的ブレイクスルーでもあれば)!」と言える。
新型には素の328iのほかに、「スポーツ」「モダン」「ラグジュアリー」という3種類の仕立てが用意される。どれも微妙にフロントマスクが異なるほか、インテリアに用いられるパネルなどが、それぞれその名が示す方向の装飾となる。価格は、570万円のノーマルに比べ、これら3グレードはいずれも16万円高い586万円。
新しい顔つきの良しあしについては皆さんの判断に任せるが、ヘッドランプユニットが内側に細く伸びてキドニーグリルにくっついたデザインについて、写真で初めて見た時の「目ヤニか?」という違和感はすでになくなり、カッコいいと思う。先代のほうがハンサムだったかもしれないが、新型だって3シリーズ以外のなにものにも見えない。
現在のBMWのデザインは、全体的に一時のアバンギャルドなデザインからコンサバティブなデザインに戻ったが、そのなかで「3」はちょっと冒険した感じだ。一方でリアスタイルは「5シリーズ」同様そっけない。ボディーサイズはライバルに合わせて多少大きくなっているが、不便なほどではない。
直6に負けているのは音質だけ
今回乗った「スポーツ」ラインは、キドニーグリルのフィンがブラックに塗られ、エアインテークにシルバーのラインが入り、ノーマルの225/50R17に対して225/45R18と大きなタイヤとホイールが備わる。よりスポーティーな形状のフロントシートが装備され(テスト車はスキンがオプションのダコタレザー)、ダッシュボードやスピード/タコメーターに(ボディーカラーが何色だろうと)赤いアクセントが入るのがインテリアの特徴だ。
皆さんが最も気になるであろう直4ターボエンジンは、結論から言うとパーフェクトだ。ターボラグの低減を狙って排気を2系統に分けてひとつのタービンに送る、BMWお得意のツインスクロールターボのおかげで大きな排気量のNAエンジンのように自然。
それもそのはず、アイドリングに毛が生えた程度の1250rpmから(4800rpmまで)、35.7kgmの最大トルクを発生する。そして5000rpmで最高出力245psを発生。また、インテークバルブのリフト量を制御するバルブトロニックや、吸気も排気もバルブタイミングを変化させるダブルバノスも採用するなど、BMWが持てる技術をすべて投入した“バイエルン発動機祭り”みたいなエンジンだ。
実際、1560kgの車体に対して十分すぎるパワーを、全域で得ている。回転フィーリングだって下手なV6あたりより滑らかで、振動もなく、(実際にエンジンが発している音量はともかく)車内に響く音量も低い。いいことだらけ。先代までの“シルキー6”に届かないのは音質だけと言ってよい。
ま、そもそも新型は5000rpmでピークを迎える特性なんだから、突き抜けるほど回してもいいことはなく、どんどんシフトアップして実(速さ)を取るべきだ。その代わりに得たパワーと燃費の両立なのだ。JC08モード燃費15.2km/リッターは、同じく直4ターボエンジンを積む「メルセデス・ベンツCクラス」や「アウディA4」のどのモデルより優れているのだから、立派というしかない。
さらに高みへ
スタイルとエンジン以外は、僕らが知ってる3シリーズのまま。フロントエンジン、リアドライブというパッケージでしか味わえないステアフィールと挙動を、飛ばしても流しても味わえる。
エンジンのレスポンスやシフトタイミング、パワーステアリングのアシスト量などを変化させる「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」は最近の高級車がこぞって採用する電子デバイスのたぐいだが、「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ・プラス」の3モードに加え、「エコ・プロ」というモードが設定されるのが、いま風だ。
このモードにするとエンジンの出力特性、シフトタイミング、エアコン、シートヒーターなどが、すべて燃費方向を向く。それでも退屈な走りを強いられるようなことはなかった。買ってしばらくはいろいろ試すと思うが、落ち着いたら真夏や真冬以外の街中では、このモードに固定になる人が多いんじゃないだろうか。
そうやって手を替え品を替え燃費を稼いだ結果、BMWはほとんどのモデルでエコカー減税を受けられ、うち20モデル以上でエコカー補助金をも受け取ることができる(2012年4月現在)。328iの場合、ノーマルで24万7700円、スポーツ、モダン、ラグジュアリーで25万2900円(いずれもグリーン税制分<購入時ではなく翌年度の自動車税が半額になる>を含む)の減税が受けられ、全モデルで10万円の補助金が適用される。つまり、どれを買ってもだいたい35万円のお得。
BMWは全メーカーが全力で取り組むパワーと燃費の両立に関して、この「328i」や「523i」あたりで、ガソリンエンジンだけで可能なことはすべてやってきたと言えるだろう。現状ではこれ以上はディーゼルや、ハイブリッドといった飛び道具しかないはずだ。遠くない将来、そうしたソリューションが日本で売られる3シリーズにも投入されるだろう。それらを待つもよし、今ポンと328iを買うもよし、好きにしてほしい。
だいたい昔から、だれかにクルマを薦める際にBMW3シリーズを推すほど、回答者として無難で攻めていない選択はないのだから。と、ヤサぐれてしまうほど、今度の3シリーズは、いや今度の3シリーズ“も”よくできたクルマだ。
(文=塩見智/写真=小林俊樹)
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塩見 智
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