三菱、今年の目標はEV初のパイクスピーク制覇
2013.05.16 自動車ニュース三菱、電気自動車によるパイクスピーク初の総合優勝を狙う
三菱自動車は2013年5月16日、米国コロラド州で開催されるモータースポーツイベント「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」2013年大会に、EVプロトタイプの「MiEV EvolutionII」2台で参戦し、総合優勝を目指すと発表した。
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■狙うはEV初のパイクスピーク完全制覇
三菱は、2012年に市販車部品を搭載した「i-MiEV Evolution」でパイクスピークに初参戦。予選でコースアウトするというアクシデントに見舞われたものの、増岡浩選手のドライビングにより電気自動車クラス2位を獲得していた。今年の目標は、電気自動車によるパイクスピーク初の総合優勝。目標タイムは昨年の優勝タイムが9分46秒であったことと、レギュレーションの変更による参加者のタイムアップを考慮し、昨年の記録より1分短い9分30秒を掲げた。
参戦車両の「MiEV EvolutionII」は、市販車用の量産部品を元に、パートナー企業と先行開発した高容量バッテリー、高出力モーターを搭載。駆動システムはフロント2基、リア2基の4モーターによる電動4WDで、専用ボディーによる車両軽量化や空力性能の改善とも相まって、昨年の参戦車両より走行性能は大幅に高められているという。
ドライバーには、ダカールラリーで日本人初の2年連続総合優勝を果たし、昨年もパイクスピークに参戦した増岡選手を監督兼務で起用。もう一台には、同レースの二輪車クラスで過去6度の優勝を誇るグレッグ・トレーシー選手が搭乗する。
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■参戦車両は2012年から全方位的に進化
今年の参戦車両である「MiEV EvolutionII」は、2012年の走行データや経験をもとに、直線でのタイム短縮のための動力性能向上、カーブでのタイム短縮のための旋回性能向上、安定したタイムを確保するための操作安定性向上の、3つの課題を重視して開発されたものである。
駆動モーターは1基ごとの出力を向上させるとともに(80kW→100kW)、搭載数を3基から4基に増加。合計出力を240kWから400kWに高めている。これと併せてバッテリーも強化。50kWhのバッテリーは低重心化のため、床下に敷き詰められるように搭載される。駆動方式は前後輪を2基ずつのモーターで駆動する電動4WDで、「ランエボ」などで定評のある車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」を採用。車両に働くヨーモーメントを最適に制御するAYC(Active Yaw Control)や、ブレーキ力と駆動力を制御し、走行安定性を向上させる ASC(Active Stability Control)、ABSなどを統合制御することで、高い走行性能と優れた操縦安定性が追及されている。
ボディーはパイプフレーム製のシャシーにカーボン製のカウルをかぶせたもので、空力性能の追求により、空気抵抗を増やすことなく「i-MiEV Evolution」のおよそ4倍ものダウンフォースを得ることに成功したという。
三菱ではこれらの改良について、動力性能の向上により15秒、空力性能の向上により10秒、本年から使用が許可されるスリックタイヤの装備により20秒と、計45秒のタイム短縮が可能になると試算。残りの15秒分については、増岡選手いわく「今年が2度目となりますし、残りの15秒は私が縮めます」とのことだった。
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■ライバルはツワモノぞろい
先述の通り、三菱の「MiEV EvolutionII」が総合優勝を遂げれば、EVとして初の快挙となる。
パイクスピークでのEVの優位性について「静かで速く、エンジン車よりレスポンスも良い」「パイクスピークの頂上付近は平地より40%も空気が薄い。エンジン車はパワーダウンしてしまうが、EVは最後まで全力でいける」と語る増岡選手だが、最大のライバルとして挙げたのは、最高出力800psのエンジン車を投入するプジョー。「ドライバーもWRC王者のセバスチャン・ローブと強力なので、エンジン車の最速タイムは恐らくプジョーが出すだろう」とのことだ。
また、同じEVクラスのライバルとしては、パイクスピークの常連であるモンスター田嶋選手のチームと、昨年、奴田原選手のドライブでEVクラス優勝を果たし、今年はロッド・ミレン選手を起用しての参戦を表明しているトヨタチームを挙げた。
2013年のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムは、6月25日に開幕。同月30日に決勝が行われる。
(webCG 堀田)