キャデラックXTS プラチナム(FF/6AT)
長年のファンにささぐ 2013.06.17 試乗記 長年にわたりキャデラックを乗り継いできたオーナーのため、ヤナセが独自に輸入しているフルサイズセダン「XTS」。おおらかで鷹揚な、ちょっと懐かしいアメリカンラグジュアリーの魅力をリポートする。新車で買える「昔のアメ車」
もうなくなっちゃったのかな、でも時代の要請かな、「昔はよかった」なんて言うのはよくないよな、言ったってしかたないな……と思っていたら、まだあった! ヤナセさんが頑張って入れてくれたおかげで、ものすごく久しぶりに「昔のアメ車」に新車で乗ることができた。
「キャデラックXTS」。現在、シボレーやキャデラックなどのGM各車を正規に輸入しているのはGMアジア・パシフィックだが、XTSはかつてのキャデラックやフォルクスワーゲンのインポーターであり、今はガイシャをよく知る販売会社となったヤナセ(の関連会社)が、独自に輸入するフルサイズのセダンだ。
キャデラックは、大昔はそれはそれは高級車で、プレミアムの代表的存在。メルセデスがどうした? 比べるならロールス・ロイス持ってこいというほどのビッグネームだったが、だんだんドイツ車に押され気味となり、ある時、本気で欧州車に立ち向かおうと決意。FFだらけだったラインナップを次々にFRに置き換えた。日本でも人気の「ATS」や、先日新型が発表された「CTS」は、グローバルで戦うための新世代キャデラックだ。
見た目はカクカク、乗ればフワフワ
ただし、みんながみんな、ニュルで鍛えたセダンが欲しいわけではなく、昔ながらの鷹揚(おうよう)な乗り心地のセダンが欲しいという人もいる。FFだろうがFRだろうが関係ないというお客さんもいる。自分で運転しないという人もいる。そういうお客さんのために用意しているのがXTSだ。巨大市場の中国では、大きければ大きいほど偉いという文化があり、その対策でもある。
3.6リッターV6を横置きし、前輪を駆動。スタイリングこそ近頃のキャデラックの流儀にならってエッジが利いた攻撃的なカクカクボディーだが、乗ればフワフワ仕上げ。本当の昔のアメ車はあまり知らないけれど、多分こういう風だったのだろう。パワステのアシスト量は多めで、指だけでも回せる。ただし、意外にステアリングはクイックで、少し回せば鼻先がクイッと向きを変えてくれる。もう少しダルでスローなステアリングのほうが“らしい”と思うが、おかげで巨体のわりに街中での取りまわしは悪くない。
エンジンとトランスミッションは、特別に書いておきたいことはないが、不満もない。この車体を見れば、だれでもV8エンジンを想像してしまうが、V6なんだなこれが。V8大好きのアメリカ人も、最近になって世の中に「燃費」という意味の言葉があるということを知り、本当にV8じゃなきゃ成立しない大事なクルマ以外はV6に置き換えるようになった。
ずっと“キャディ”に乗ってきた人へ
とにかく飛ばして楽しむクルマじゃない。少しでもステアリングを切ればグラっとロールし、そのままビシっと安定するのではなく、いつまでもゆらゆらしているように感じる。本当にゆらゆらしているのかもしれない。どっちかわからないけれど、とにかくスポーツドライビングをしようという気にはならない。だからといって、劣っているわけではもちろんない。「マグネティックライド」という磁気に反応するフルードの入ったダンパーが備わっているので、その気になれば瞬時に硬くも柔らかくもできるはずだが、あえてずっと柔らかいままにしているのだろう。
どうしてヤナセが、わざわざGMジャパンが入れないモデルを独自に輸入したかといえば、クルマはずっとフルサイズのキャデラックと決めているような人が、まだ結構いるからだろう。ずーっと「ドゥビル」やその後継の「DTS」あたりを愛用してきた人に「これからはこっちですよ」とATSやCTSを提案するわけにいかないのは、なんとなく想像できる。
そういう顧客のほとんどは高齢者だと思うが、そうであればXTSがこういう仕立てになっているのもよくわかる。シートを振動させて車線逸脱を警告してくれるし、クルーズコントロールは前のクルマに追従してくれるタイプだ。「リア・クロストラフィック・アラート」といって、車庫や駐車枠からバックで出ようとするときに左右からクルマがきていたら警告してくれるシステムもついている。こういうデバイスは高齢者にはありがたい。いや本当はだれにだってありがたいのだが、高齢者にはより歓迎されるはずだ。
こういうクルマがあるのはアリだと思う。すべてのクルマがスポーティーだったら気味が悪いって。
(文=塩見 智/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
キャデラックXTS プラチナム
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5130×1850×1510mm
ホイールベース:2837mm
車重:1896kg
駆動方式:FF
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:308ps(227kW)/6800rpm
最大トルク:36.5kgm(358Nm)/5200rpm
タイヤ:(前)245/40R20 95V M+S/(後)245/40R20 95V M+S(ブリヂストン・ポテンザRE97 A/S)
燃費:--km/リッター
価格:870万円/テスト車=912万2000円
オプション装備:車体色<クリスタルレッド ティントコート>(12万6000円)/インダッシュエンターテインメントナビゲーションシステム(25万円)/キャデラックエマージェンシーキット(4万6000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:5091km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(4)/山岳路(1)
テスト距離:217.0km
使用燃料:41.5リッター
参考燃費:5.2km/リッター(満タン法)

塩見 智
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