第8回:片道3000円の上海便ってどうよ?
LCCと軽乗用車で考える、人類激安移動の臨界点
2013.07.01
小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ
東京-大阪間より安い上海ジェット便
ハナシはいきなりクルマからそれますが、先日話題のLCC(ローコストキャリア)、春秋航空に乗ってみました。そう、一時「立ち乗りできないか」まで真剣に検討したっつう驚異の中華系LCCですよ。
その体験があまりの衝撃だったので、不肖小沢、思わず移動にまつわるコスパのハナシと、激化するローコスト競争に思いをはせてしまいました。
なにせ茨城-上海便が一時タイムセール価格で3000円! もちろん片道だけど、ウソみたいじゃないですか。別にキャンセルしても惜しくないし。もっともそれは運賃オンリーで、このほかに空港使用税1400円や燃油サーチャージ6000円(これが一番高い!!)がかかるけど、それでも片道総額1万400円!! ぶっちゃけ、新幹線の品川-名古屋間の「のぞみ」指定席に匹敵し、京都や大阪行くより安いわけよ(笑)。
さっそくインプレッションいかせていただくと、まずビックリなのが高速バス! 春秋の運賃激安の理由は、発着する茨城空港の使用料が成田や羽田に比べて圧倒的に安いからなのだが、そこがクセ者。なにしろヘンピな場所にあるので、東京からクルマで行ったら高速代だけで片道3000円弱かかる。ガソリン代がざっと1000円としても4000円弱。これだけでもエアの運賃超えてます。
よって専用バスが出てるんですが、それが片道500円! 異様に安いと思ったら、実は茨城県の補助を受けてんだよね。バスは東京駅から朝9時に出るんだけど、乗り込むとそこは既に中国! ここからしてギューギュー詰めで、ちょっと日本語使うのがはばかられるくらいのムードでした(笑)。
ちなみに茨城空港そのものはいかにも田舎でひなびた感じがよろしい。「これで温泉でもついてたら最高~」なんて思いながら、待つこと2時間ちょい。いよいよ現れた機体はLCCの常識「エアバスA320」で、まあそれはいいけど確かにエコノミー席は狭かった。座席ピッチが結構タイトで、身長176cmの俺だと背もたれに合わせて座ると平気だけど、ちょっとお尻をズラすとヒザが前の席につく。いわば「ポルシェ911」ほどじゃないけど、昔の「ルノー・トゥインゴ」のリアぐらいの狭さというか……わかんないかコレ?
でも基本ガマン強い不肖小沢。シートそのものは悪くないし、通路側だったんで普通に仕事してたら、フライト約3時間で無事に上海に到着。そしてつくづく思ったな。今や人にとっての移動にかかるお金ってなんなんだって。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
どこまで攻める? 「タント」に「春秋」!
そもそも以前東京の渋滞がひどかった時は、「成田にクルマで人を送りに行き、飛行機に乗った人が沖縄に着くのとほぼ同時に、送った人も東京の自宅に着いた!」みたいなことがザラで、「同じ2時間の移動」でもなにそれ? というハナシがよくあった。それが今回は「同じ1万円の移動」だよね。
かたや新幹線で名古屋、かたや飛行機で上海まで行くことができる。同じ運賃なのに、距離にして366kmと1780kmという約5倍の恐ろしい差。便利さでは新幹線の方が上だけど、運賃はますます移動距離に比例しなくなってきている。
一方、同じようにクルマの世界もコスパのバランス崩壊が進行しつつある。特にリアシートの居住性。きっかけは「ダイハツ・タント」に代表される超ハイト系の軽だ。例えば2007年デビューの現行2代目タントは、室内長2m16cmで当時の「レクサスGS」を16cmも超え、「LS」をも1cmも上回る異常事態。と思ったら、去年出た「ホンダN BOX」は、それを2cmも上回り、さらに別アプローチで攻めてきた伏兵「N BOX+」に、驚異の2.2m超えを果たした「スズキ・スペーシア」の登場……と、まさに人類の広さに挑む戦いはチキンレースと化しつつあるのだ。
乗り心地や快適性はお値段約6倍のLSの方が全然上ってハナシもあるけど、タントやN BOXが街中でそんなにひどいかっていうと、それほどじゃない。それより「チャリンコ載せられる分、こっちの方がいい」という意見はあるし、やはりその価格破壊であり価値破壊が、超ハイト系の普及の原動力になってるわけよ。
こうしたローコスト商品普及のウラには必ずある種の逆転現象があって、LCCは「燃料代より安い運賃」であり、超ハイト系は「リムジンより広い室内長」だ。
その驚異はますます進化する傾向で、年内に出るっていう3代目タントがどこまで室内長を伸ばすかが見もの。それこそ、春秋航空が「立ち乗り」を検討したぐらいの策を練らないと、もう方法はない気がする。エンジンを屋根の上に置くとか(笑)。
正直、現時点でどちらもかなりの臨界点という気はしますけどね。
軽自動車もLCCも、果たしてここからどこをどう詰めてくるのか? 要注目なのですっ!(笑)
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃 2026.4.18 小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。
-
第56回:走行16万kmでも電池の劣化なし! -20℃でもエアコンが効く! 新型「日産リーフ」のスゴイところを聞く 2026.3.23 航続距離が伸びたり走りの質がよくなったりで話題の3代目「日産リーフ」だが、本当に見るべき点はそこにあらず。小沢コージが開発エンジニアを直撃し、ジミだけど大きな進化や、言われなかったら気づかないような改良点などを聞いてきました。
-
第55回:続・直撃「BYDラッコ」! 背が15cmも高いのに航続距離が「サクラ」&「N-ONE e:」超えってマジか? 2026.2.3 2026年の発売に向けて着々と開発が進められている「BYDラッコ」。日本の軽自動車関係者を震え上がらせている中国発の軽スーパーハイト電気自動車だが、ついに大まかな航続可能距離が判明した。「これは事件だ!」ということで小沢コージが開発関係者を再直撃!
-
第54回:18年目の大改良! 奇跡の不老不死ミニバン「デリカD:5」のナゾ 2026.1.11 三菱のオールラウンドミニバン「デリカD:5」が2025年末にまたも大幅改良を敢行。しかもモデルライフが10年をとっくに過ぎた2024年に過去最高の台数が販売されたというのだから、いったい現場で何が起きているのか。小沢コージが開発者を直撃!
-
第53回:失敗できない新型「CX-5」 勝手な心配を全部聞き尽くす!(後編) 2025.12.20 小沢コージによる新型「マツダCX-5」の開発主査へのインタビュー(後編)。賛否両論のタッチ操作主体のインストゥルメントパネルや気になる価格、「CX-60」との微妙な関係について鋭く切り込みました。
-
NEW
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記
2026.5.27エディターから一言“世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。 -
NEW
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】
2026.5.27試乗記「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。 -
NEW
まさしく桁違いの1169PS&2000N・m 新型「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」が搭載する数々の新機軸
2026.5.27デイリーコラム2025年発表のコンセプトカー「メルセデスAMG GT XX」が新型「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」として正式にデビューした。その中身は100%電気自動車であり、上位グレードは最高出力1169PSという途方もないスペックを誇る。技術的ハイライトを解説する。 -
NEW
第114回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(前編) ―「トヨタ・タンドラ」の導入に対する元カーデザイナーの本音―
2026.5.27カーデザイン曼荼羅「トヨタ・タンドラ」が日本にやってくる!? トランプ大統領のゴリ押しと、トヨタ&ホンダによるアメリカ生産車の日本導入決定により、今にわかに注目を集めている“アメリカのクルマ”。かの地で育まれた特殊な造形美を、カーデザインの識者はどう見ているのか? -
車載カメラが普及した今、“デジタルサイドミラー”が主流にならないのはなぜか?
2026.5.26あの多田哲哉のクルマQ&Aサイドミラーの役割をカメラが担う“デジタルサイドミラー”は、レクサスやアウディなどで採用例があったものの、普及するには至っていない。その決定的な理由はなにか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんが語る。 -
マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R(FR/6MT)【試乗記】
2026.5.26試乗記販売台数わずか200台の限定車「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」に試乗。スーパー耐久レース参戦をはじめとするマツダのモータースポーツ活動を担うサブブランドが生み出した初の市販コンプリートカーは、いかなる走りをみせるのか。