メルセデス・ベンツCLA250(FF/7AT)
伝統にとらわれない価値 2013.09.05 試乗記 ダイナミックなデザインとスポーティーな走りが自慢。メルセデス・ベンツの新型4ドアクーペ「CLAクラス」の実力を確かめた。「ミニCLS」は三枚目?
「メルセデス、大丈夫かなぁ」と、まことに余計なお世話ながら、ちょっと心配になった。スリーポインテッドスターの新しいコンパクトモデル、「CLA」を目の前にして。
「メルセデス・ベンツCLAクラス」は、いうなれば「Aクラス」のオシリにトランクを追加したクルマだ。ただ、キャビンと独立した荷室が付いたのはいいのだが、なだらかに落ちるルーフラインのせいで、後席の天地はずいぶんと狭くなった。大人では、長時間の使用は厳しかろう。「もともと2+2の4ドアクーペだから」と割り切ればいいのだが、それにしては「肝心のカッコがねェ……」と思わざるを得ない。クルマに限らず、デザインの良しあしは、見る人の個人的な嗜好(しこう)によるところ大ですが、ここはあえて、主観に沿って述べさせていただきます。
ちょっと古いクルマ好きの人なら、「プジョー309」を思い出すかもしれない。日本車では、例えば「日産マーチ」の先代モデルにあったセダン(海外仕様)や「ホンダ・フィットアリア」。ハッチバックが本来の姿であるクルマを3ボックス化すると、どうもプロポーションが妙なことになりがちだ。そこに独特の“味”が生じて、愛着を抱くマニアがいらっしゃることは否定しない、というか、むしろ大いに応援したいところだが、それはともかく、メルセデスもAクラスの3ボックス化にあたって、ある種の危惧を抱いたのであろう。打ち出したコンセプトが、「ミニCLS」。
「流麗で印象的なルーフライン」「スポーティーでダイナミックな3本のキャラクターライン」「アグレッシブで力強いフロントマスク」が、“Coupe Light A-Class”ことCLAの特徴として挙げられる。それぞれは正しくその通りで、たしかに斜め後ろ上方から実車を眺めるとCLSに見えなくもないが、サイズに余裕があるFR車のフォルムを、コンパクトなFF車に移植するのはムリがあろう。なんだかパースが狂っているような、常日頃から広角レンズでのぞいているような、獅子舞のごとく頭デッカチな、端的にいって、“妙ちくりんなバランス”が、本来二枚目であるはずのCLAに、三枚目の愛嬌(あいきょう)を与えている。
年配層に受け入れられるか
2013年7月24日に、わが国での販売が始まったCLAクラス。まずは4グレードがラインナップされた。
1.6リッター直4ターボ(122ps、20.4kgm)を搭載する「CLA180」が335万円。2リッター直4ターボ(211ps、35.7kgm)を積む「CLA250」が459万円。四輪駆動版「CLA250 4MATIC」が484万円。そして、同じく2リッター直4ながら、最高出力360ps(!)、最大トルク45.9kgmと、AMGらしいハイチューンが施された「CLA45 AMG 4MATIC」が、値段もハイチューンな710万円となる。
ボディーサイズは、全長×全幅×全高=4685×1780×1430mmと、ほぼ「Cクラス」と同じサイズ。「C180」が399万円、「C250アバンギャルド」が589万円だから、「廉価でCクラスサイズのベンツが手に入る」と考えることもできる。もちろん、CLAは「A/Bクラス」と同じFFプラットフォームを活用したモデルだから、FRの駆動方式を採るCクラスとは根本のところで異なるクルマだが。
メルセデスとしては、CLAをして、Aクラスの4ドアクーペとして、相対的に若い人に買ってもらいたいところだろう。一方、ひとり勝手に心配するのは、次のようなケース。
長年メルセデスを乗り継いできて、いまは「Eクラス」を所有している。子供たちもすっかり手を離れたし、もう少し気楽にクルマと接したい。夫婦のアシだから、後席の居住性は重視しない。Cクラスは前に乗ったことがある。「新しいCLAとやらは、どうだろう?」と、なじみのセールスパースンに持って来てもらう、または販売店に足を運ぶような、年配の方々である。
軽快でダイレクトな走り
この日の試乗車は、CLA250。1.6リッターターボのCLA180とは一線を画す上級版だが、ドアを開けて運転席に座ると、なんだか戸惑う。ダッシュボードやパネル類、後付け然としたナビゲーションシステム、シートポジションを調整する見慣れたボタンまわりの樹脂、そしてトンネルコンソールに設けられたモノ入れ。これまでのメルセデスFRモデルのクオリティーに馴染(なじ)んできた人は、ちょっとギョッとするのではないか。若作りの赤いステッチが入ったスポーティーなシートはいいけれど、全体に、大変失礼な言い方で申し訳ないのだが、少々、「安づくり」。
300万円台の(CLA180の場合)価格に引かれて、国産大衆車から“ファースト・メルセデス”として購入するにはいいが、ダウンサイジングの結果として、他のメルセデス車から乗り換えた場合、着る服が、ビスポークから“つるし”のスーツになってしまったような寂しさを感じるかもしれない。
新たにMINIブランドを設けて、FFモデルとの住み分けを明確にしたBMWと比較して、メルセデスは、従来のプレミアムなFRモデルと、気軽なFFモデルが同居している。次第に、クオリティーの面でも評判も、FF車のそれが、FR車を駆逐してしまうのではないかと、まことに余計なお世話ながら、ちょっと心配になる。
……と、いろいろ難癖を付けたCLA250であるが、走らせれば、これがよく走る。180モデルが積む1.6リッターターボより7割増しのアウトプットは伊達(だて)ではなく、1500kgのボディーを軽快に運ぶ。ハッチバックモデルより大人1人分ほど重いはずだが、開口部が狭まった影響か、ボディーの剛性感がグッと高まり、走りのダイレクト感が増している。トランスミッションは、デュアルクラッチ式の7段AT「7G-DCT」。新しいCLAは、“メルセデスの伝統”には頓着せず、一種のはやり物として、懐に余裕がある若者が選ぶと、楽しく乗れるかもしれない。
安全装備もしっかり搭載する。レーダーを使って前走車との距離を測定。衝突の危険が生じた場合に警告する「CPA」や、ドライバーの疲労度を推測して注意を促す「アテンションアシスト」が全車標準装備。さらに、危機的な状況で自動ブレーキをかける「CPAプラス」、前のクルマとの距離を保ちつつ、場合によっては停車する便利なクルーズコントロール「ディストロニック・プラス」、斜め後ろの死角部分を監視する「ブラインドスポットアシスト」を含む「セーフティーパッケージ」が、19万円で用意される。老若男女を問わず、オススメのオプションだ。
(文=青木禎之/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツCLA250
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×1780×1430mm
ホイールベース:2700mm
車重:1500kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:211ps(155kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92W/(後)225/40R18 92W(ブリヂストン・ポテンザRE050A)
燃費:--
価格:459万円/テスト車=506万円
オプション装備:セーフティーパッケージ<ブラインドスポットアシスト+ディストロニック・プラス+レーンキーピングアシスト+CPAプラス+プレセーフ>(19万円)/AMGエクスクルーシブパッケージ<本革シート(前席シートヒーター付き)+レザーARTICOダッシュボード(レッドステッチ入り)+レザーARTICOドアパネル(レッドステッチ入り)+コンビニエンスオープニング・クロージング機能+Harman/kardon ロジック7サラウンドシステム>(28万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1613km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:279.6km
使用燃料:35.1リッター
参考燃費:8.0km/リッター(満タン法)/8.1km/リッター(車載燃費計計測値)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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