ベントレー・コンチネンタルGT V8/GTC V8(4WD/8AT)【海外試乗記】
やっぱりV8 2012.03.07 試乗記 ベントレー・コンチネンタルGT V8/GTC V8(4WD/8AT)
これまで12気筒モデルしかなかった「コンチネンタルGT/GTC」に、V8モデルが加わった。同モデルは、従来モデルより排気量こそ小さいものの、スポーティー色は強まっているという。スペインからの第一報。
伝統の復活
2世代目となった「コンチネンタルGT」と「コンチネンタルGTC」に、アウディとの共同開発による4リッターV8直噴ツインターボエンジンと8段ATが新たに搭載されることとなった。既存のW12ツインターボはもちろん健在で、そのまま併売されるというから、愛好家ならずともそのすみ分けが気になるところだろう(もちろんV8の方が「お買い得だろう」というのは想像できるけれど……)。ベントレーによれば、W12がラグジュアリー路線であるのに対し、V8ではよりスポーティー色が強められていると主張する。
なるほどベントレーには近年、ロールス・ロイスと“同じ”高級車イメージがついてしまっているが、歴史的にみればドライバーズカー色の濃いブランドだ。高級車ビジネスにおいて、スポーツ性がプレミアムカーの重要な要素になっている今、正統なヘリテージを持つブランドが、持ち前のスポーティーイメージを生かさない手はない。
当然、本格的な試乗テストでは、メーカーの“主張”をあらゆる角度から検証することが目的となる。スペイン北部で開催された国際試乗会には、サーキット試乗をはじめ、一般道やワインディングロード、高速道路など、さまざまなテストステージが用意されていた。
W12よりもスポーティー
ナバッラサーキットでGT、GTCの両モデルを試した。テストカーにはいずれもV8専用デザインとなるオプションの21インチホイールが与えられていた。さらにブラックアウトされたグリルや、8の字型のエキゾーストフィニッシャーも、アグレッシブな雰囲気を主張している。
まずはクーペボディーの「GT」を試す。スターターボタンを押すと、フルフェイスのヘルメットをかぶっていてもW12とは明らかに違うエンジンサウンドが体に伝わってくる。ピットレーンを走りだした段階でまず、新エンジンの触感にひと安心した。W12と比べてエンジンスペックが劣っている(といっても以前のW12とたいして変わらないが)一方、さほど車重は変わらないため、動き出しが“のろま”なのではないか、と勝手に心配していたのだ。だが、それも杞憂(きゆう)に終わった。新たに2段増えたギアをうまく活用したクロスレシオ、ということもあるだろう。ピットレーンを飛び出すと、ぎゅっと塊感のあるダッシュをキメてくれた。
サーキットでかなり酷使された後だったためか、タイヤやブレーキパッドは必ずしも万全な状態ではなかったが、それでも感動したのは、前アシのさばきのよさだった。旧型の「コンチネンタル・スーパースポーツ」もサーキットで楽しいモデルだったが、そちらがパワーで振り回して楽しむキャラクターだったのに対して、今度のモデルは車体のバランスのよさや、リニアリティーを感じさせる操縦性にドライビングファンを見い出せるタイプだ。
鋭さ、確かさ、軽やかさ、頼もしさ、すべてに渡ってW12モデルよりも確かに“スポーティー”である。この段階でスタートダッシュとステアリングフィールについては、ベントレーの“主張”を受け入れてよいことが確認できた。
エンジンパワーも十二分である。パワー感と官能フィール(サウンドを含む)とのバランスが見事で、W12よりもむしろベントレーらしい。そう、やっぱりベントレーには8気筒が似合う。
ヘルシーなエンジン
続いて「GTC」で一般道を走る。もちろん、優雅で堅固なソフトトップをオープンにして走った。スペインも2月ではまだ風が冷たい。ネックウォーマーを利かせれば、なるほど心地いいが、逆に膝頭のあたりが寒く感じられて参った……。それはともかく、頭上に風を感じながらのドライブは、クーペのそれと遜色のないもので、多少のゆるさもかえって“肩の力を抜いた”感覚に感じられて気分がいい。
新しいパワートレインは、アウディ用のそれと同様に気筒休止システムがウリである。音とビジュアルで8→4気筒への変化をわからせるブランドもあるが、ベントレーのものはそこまで“でしゃばり”じゃない。休止の作動はほとんどわからない。確かにアクセルペダルを踏むか踏まないかというクルージング時など、やや“薄味”になったかな、と思う瞬間もあったけれど、“V4モード”に切り替わったことをはっきりと体感することは難しい。
それよりも、じわじわと速度を上げていくときなど、ややザラついた、いかにも燃料が薄く感じられるときがある。CO2排出量をW12モデルの2/3とした新パワートレインを、「ああ、たしかにヘルシーだな」と思うのは、そういう瞬間だった(もっともそうしたヘルシー感の大部分は、気筒休止システムと8段ATによるところが大きい)。
サーキットで見せたフットワークはそのままに、大陸(コンチネンタル)のカントリーロードを軽快にこなしていく。W12モデルよりも車体の大きさを意識させないのは、ボディーサイズとクルマのキャラクター、そしてエンジンスペックのバランスが取れているからだろう。そうした感触に加え、全身をふるわせるV8のエグゾーストノートをダイレクトに味わえるのがドロップヘッドならではの魅力だ。
彼らの“主張”は、確かに受け取った。そして正直に言うと、“12発マニア”の筆者でさえ、もうW12は要らない、とも思った。なるほど、12気筒のシルキーなフィールは捨て難い。けれどもベントレーらしいのは、イメージ的にもパフォーマンス的にも、やっぱりV8。そんな思いが募ったテストドライブだった。
(文=西川淳/写真=ベントレーモーターズ)

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
-
日産キックスG(FF)【試乗記】 2026.9.9 日産が満を持して投入したコンパクトSUVの新型「キックス」。Cセグメントに迫るサイズとなったこのモデルは、競合ひしめくマーケットで存在感を示せるのか? 上級グレード「G」の試乗を通し、ライバルに対するアドバンテージを探った。
-
マツダCX-5 L(FF/6AT)【試乗記】 2026.9.8 マツダの最量販SUV「CX-5」の最新モデルに試乗。計画外のフルモデルチェンジによって誕生した3代目は、走りや操作系などに、従来のマツダにはない新しい試みが見られる一台となっていた。失敗の許されない基幹モデルの仕上がりを報告する。
-
日産エルグランドG e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.9.7 「日産エルグランド」が16年ぶりのフルモデルチェンジを敢行。すでにプレミアムミニバンのジャンルは後発のライバルに席巻されている現状だが、日産はそのライバルとは別のアプローチ=走りの楽しさで復権を目指すという。その成否やいかに。
-
ランボルギーニ・レヴエルトSV(4WD/8AT)【海外試乗記】
2026.9.5 ランボルギーニの歴史において「SV」の2文字は特別な意味を持つ。その称号が与えられた、ハイブリッドの最新マシン「レヴエルトSV」の走りやいかに? イタリアのテストコースで試乗した西川 淳がリポートする。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.9.2 BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。
-
NEW
日産リーフB7 G(後編)
2026.9.13ミスター・スバル 辰己英治の目利きミスター・スバルこと辰己英治さんが、電気自動車(EV)の3代目「日産リーフ」に試乗。日産が擁する最新EVの○と×とは? これからのEVは、どのようなクルマを目指すべきなのか? 15年の歴史を持つEVの走りに触れ、自動車の未来について考えてみた。 -
BMW X3 20 xDriveオリジナル(4WD/8AT)/X3 20d xDriveオリジナル(4WD/8AT)【試乗記】
2026.9.12試乗記「BMW X3」に新たなエントリーグレードの「オリジナル」が登場。装備の厳選によって価格抑制を図ったとのことだが、人気のディーゼルエンジン搭載車では、なんと基準車から100万円近く引き下げたというから見逃せない。安かろう悪かろうのはずはないと思いつつも、その仕上がりをチェックした。 -
徹底比較! 新型三菱パジェロ VS. トヨタ・ランドクルーザー
2026.9.11デイリーコラムいよいよ登場した新型「三菱パジェロ」。日本での公道デビューはもう少し先となるが、現状で公開されている情報から読み取れることはなにか? クロカン界の王者「トヨタ・ランドクルーザー“250”/“300”」との比較を通し、その実像に迫る。 -
思考するドライバー 山野哲也の“目”――レクサスRZ550e“Fスポーツ”編
2026.9.11webCG Moviesレーシングドライバー山野哲也がステアバイワイヤ採用のEV「レクサスRZ550e“Fスポーツ”」に試乗。ほかのクルマではなかなか味わえない走りの特徴について、プロの目線でリポートします。 -
1年目の通知表 新型「ホンダ・プレリュード」の販売実績は想定どおり?
2026.9.10デイリーコラムホンダが新型「プレリュード」を発売してから1年。デビュー1周年記念モデルともいうべき特別仕様車「2027リミテッドエディション」も登場した。現在までの販売実績を確認しながら、その人気や評判を探ってみた。 -
日産キックスG(FF)【試乗記】
2026.9.9試乗記日産が満を持して投入したコンパクトSUVの新型「キックス」。Cセグメントに迫るサイズとなったこのモデルは、競合ひしめくマーケットで存在感を示せるのか? 上級グレード「G」の試乗を通し、ライバルに対するアドバンテージを探った。































