第23回「メルセデス・ベンツS400ハイブリッド エクスクルーシブ」(後編)
2013.11.08 水野和敏的視点止まっても走っても快適な後席
前回に引き続き、「メルセデス・ベンツS400ハイブリッド エクスクルーシブ」を見ていきましょう。なお、今回はS400ハイブリッドをテストするにあたり、「レクサスLS600hL エグゼクティブパッケージ(4人乗り)」と「ポルシェ・パナメーラS ハイブリッド」にも試乗しています。この2台については、次回詳しく触れたいと思います。
さて、高級車もこのクラスになると、もちろん、運転手付きで乗る人も多いでしょう。リアシートに座るためにドアを開けると……、オッ! ドアが軽いですね。最近のSクラスは車重軽減のためにアルミを多用しています。かつてのSクラスはドアが重くて、「運転手が開けてくれるもの」でしたが、コレなら自分で開けてもいいかもしれません!? ただ、ドアを閉めたときに、昔のような「いかにもベンツ」な、重厚な音が出なくなったのが、少し寂しいですね。
「日産GT-R」でもオールアルミ製のドアを採用しましたが、実はアルミ製のドアは重量や開閉操作の軽減だけでなく、側面衝突に対して、衝撃Gの軽減や変形量の制御にも効果があるのです。
つまり、側面衝突の実質的な性能も向上していると思われます。このように、売りやデータとして出てこないところもきちんと進化していることが、すごく大事なところです。
後席に腰を落ち着けてみると、寸法的な広さこそホイールベースが長い「レクサスLS600hL」が勝りますが、全体のコーディネート、居心地や空間のつくり方、そして走行中の快適性は明らかにSクラスの方が勝っています。
自社テストコースという決められた空間の、限られた路面と時間の評価によって開発されたクルマと、ニュルブルクリンクをはじめ、ありとあらゆるところを実際に走り込んで開発されたクルマの違いが見事に出ています。
私がGT-Rの開発でニュルブルクリンクを使っていたとき、後席に人や計測機材を乗せ、タフなニュルブルクリンクのサーキットを全開で走って後席の開発をしていたSクラスが思い出されます。
レクサスLSは、ソフトで切れ込むフロントに対し、踏ん張ってあまり動かないリアと、前後の動きが対照的なサスペンションセットとなっているばかりか、ノーズダイブが大きく、カックンと利いて前後バランスが変化するブレーキなどのせいで、乗り心地の落ち着きやフラット感に欠けます。
また、路面の変化によって生じる細かい突き上げが、後席ではたえず気になります。まるで前後席で別の違うクルマに乗っているかのようです。1500万円という販売価格が意味するものは何でしょうか?
しかし、Sクラスの後席に座っていると、そうした不満を感じません。前席に乗っても、後席に乗っても、音も乗り心地も全く同じクルマなのです。
こんなところにも、Sクラスにはニュルブルクリンクで鍛えられた前後トータルバランスの技があるのです。
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