第114回:メルセデスAMG C63 S(前編)

2015.08.21 水野和敏的視点 水野 和敏

設計者のプライドとノウハウが宿る

「メルセデスAMG GT」(以下、GT)に搭載されている、あのトルクフルな4リッターV8ツインターボエンジンをCクラスのエンジンルームに押し込んだら、どんなスーパーセダンが誕生するか? それを実際に試みたのがメルセデスAMG C63(以下、C63)です。前回に続き、今回も最新のAMGをじっくりテストしていきます。

GTと同様に、C63にも標準型と、ハイパワー仕様の「S」が用意されています。今回テストするのは後者。最高出力は510psとGTと同じですが、最大トルクは71.4kgmと、GTの66.3kgmを上回っています。早速、このC63のアイデンティティーともいえる大排気量V8エンジンが、どのように搭載されているのか見てみましょう。

ボンネットを開けると、エンジンルームの中は一見したところ、びっちり詰まっています。しかし、これは実によく考えられています。

「V8+ツインターボのエンジンを、サイドメンバーの幅の中にどのようにして入れるのか?」とか、「ラジエーターなどの冷却系をどのようにして成立させるのか?」とか、「フロントエンドの重量増加を、どのようにして強度や剛性、または操縦安定性や乗り心地とバランスをさせるのか?」といったことが、最初のベース車の計画時点から考慮されていることがわかります。

ただし、ターボの配置と吸気系配管の取り回しなど、実際に成立させるための手段は、設計者自身のアイデアで対応しています。エンジニアもプライドを持ったいい仕事をしています。単なる設計基準や規格だけで対応し、部品を寄せ集めただけで造っている設計とは全く違います。C63のエンジンルームには、本当の意味での、設計者自身のプライドとノウハウが感じられるのです。


第114回:メルセデスAMG C63 S(前編)の画像 拡大

第114回:メルセデスAMG C63 S(前編)の画像 拡大
メルセデスAMG C63 S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1840×1430mm/ホイールベース:2840mm/車重:1520kg/駆動方式:FR/エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ/トランスミッション:7AT/最高出力:510ps/5500-6250rpm/最大トルク:71.4kgm/1750-4500rpm/タイヤ:(前)245/35ZR19 (後)265/35ZR19/車両本体価格:1325万円
メルセデスAMG C63 S
    ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1840×1430mm/ホイールベース:2840mm/車重:1520kg/駆動方式:FR/エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ/トランスミッション:7AT/最高出力:510ps/5500-6250rpm/最大トルク:71.4kgm/1750-4500rpm/タイヤ:(前)245/35ZR19 (後)265/35ZR19/車両本体価格:1325万円
    拡大

第114回:メルセデスAMG C63 S(前編)の画像 拡大
関連記事
  • メルセデスAMG C43 4MATIC(4WD/9AT)【試乗記】 2022.12.28 試乗記 「メルセデスAMG C43 4MATIC」に積まれるM139は、2リッター直4エンジンにF1由来の電動・排気ターボチャージャーを組み込んだAMG謹製の最新パワーユニット。そのパフォーマンスは、「もしや力不足では?」という疑念を拭い去るに十分なものだった。
  • メルセデスAMG SL43(FR/9AT)【試乗記】 2023.2.25 試乗記 1954年に初代が誕生して以来、メルセデスの最上級オープンカーと位置づけられてきた「SL」。その新型たる「メルセデスAMG SL」は、乗るほどに優れた技術力を実感させる、極めて完成度の高いスポーツモデルだった。
  • フェラーリ・プロサングエ(4WD/8AT)【海外試乗記】 2023.3.8 試乗記 フェラーリ初の4ドア・4シーターモデル「プロサングエ」に、冬のアルプス山麓で試乗。一部から「SUVの跳ね馬なんて……」と懐疑的な目で見られていたマラネッロの新作は、V12フェラーリの血統を確かに受け継ぐ、由緒正しきスーパースポーツに仕上がっていた。
  • メルセデスAMG C43 4MATIC/AMG C43 4MATICステーションワゴン【海外試乗記】 2022.7.29 試乗記 最新世代の「メルセデス・ベンツCクラス」に、メルセデスAMGの手になる高性能モデル「AMG C43 4MATIC」が登場。「F1由来のテクノロジーでパフォーマンスを高めた」という走りの質は? 欧州はフランスの道で確かめた。
  • 孤高の多気筒ユニット、W12エンジンとは何だったのか 2023.3.13 デイリーコラム フォルクスワーゲン グループのW型12気筒エンジンが、2024年4月をもって生産終了となる。ユニークな構造を持つこの高性能エンジンは、自動車界に何をもたらしたのか。その歩みや存在意義について西川 淳が語る。
ホームへ戻る