第111回:マツダ・ロードスターSスペシャルパッケージ(後編)

2015.07.31 水野和敏的視点 水野 和敏

このセッティングは「あり」だ

新型ロードスターに搭載される1.5リッター直4自然吸気エンジン(131ps、15.3kgm)は、「アクセラ」に搭載しているものをベースに、スポーツカーのエンジンらしくより高回転化させたものです。その開発目標どおり、回転フィールはスムーズで気持ちいいのですが、今回のような山道では、ちょっと“トルク感的なパワー”が足りないように思えました。

一方、足まわりについてはうまくまとめられていると思います。適度なダイレクト感があって、また走っていることを体感できる突き上げもあって、スポーツカーらしい演出というものがわかりやすくなされています。

もっとも、ロードスターのサスペンションは限界性能が決して高いわけではないし、限界付近のスタビリティーバランスがいいかといえば、そちらもそうでもありません。ロードスターファンの方々にはきつく聞こえるかもしれませんが、この足まわりは絶対的な評価だと、それほどレベルが高いわけではないと思います。

しかし、普通のドライバーに「いま自分はスポーツカーに乗っている!」と感じさせるには、このセッティングはちょうどいい。非常にうまい演出がなされていると思います。あたかも、自ら乗りこなしているような感覚にさせる演出です。とてもうまくまとめています。

例を挙げれば、旋回中にリアがグッとよれていき、まだタイヤの表面が鳴いてもいないうちから、テールスライドしそうな気配がうまく作られている。リア側がロールして滑っていくようなフィーリングを、あくまで安全な領域の中で、スポーツカーの楽しさとして味わわせる。なかなかうまい演出です。これなどは、ロードスターを4世代続けて作ってきたからこそ持つことができたノウハウでしょう。

ロードスターの販売価格とユーザー層を考慮したら、この足まわりのセッティングは「あり」だと思います。スポーツカーだからといって、なんでもかんでもプロドライバーが限界付近の挙動を語るようなものにする必要などないのです。

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