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日産エクストレイル20X“エマージェンシーブレーキ パッケージ”(4WD/CVT)

見た目は一新、中身は継承 2013.12.26 試乗記 森口 将之 武骨なクロカンルックを捨て、伸びやかなスタイリングとなった新型「日産エクストレイル」に試乗。特設のオフロードコースで、その実力を試した。

海外ではウケるカタチ

写真を見て「もうタフギアじゃなくなったんだ」と落胆した人がいるかもしれない。でも新型「エクストレイル」の開発担当者に聞くと、日本ではそういう意見が多いものの、欧州や、「ローグ」の名で売られる北米ではウエルカムだという。
僕自身、少し前にその状況を教えられた。9月にアメリカ西海岸で開催された「日産360」なるグローバル試乗会で、かつてわが国で「テラノ」として売られていた「パスファインダー」の最新型に出会ったら、新型エクストレイルを大きくしたようなフォルムに横置きパワートレインを組み合わせていて、驚いた覚えがある。
ようするに欧米では、SUVとしての機能をキープしていれば、カタチはスマートなほうがいいという考えが主流らしい。一方、心配性の日本人(?)に対しては、カタログの走行写真はオフロード中心としたうえに、横浜にある日産自動車本社横の空き地でオフロード試乗会まで実施した。取材日はメディア向けだったが、その後の週末には一般ユーザーがタフさを体験したという。

新型エクストレイルはカタチが激変しただけでなく、新世代のCMFプラットフォームを採用している。ドライブトレインには、エンジントルクを制御して起伏のある路面での車体の揺れを抑える「アクティブライドコントロール」、 カーブや下り坂でフットブレーキへの依存度を弱める「アクティブエンジンブレーキ」、ブレーキ制御による「コーナリングスタビリティアシスト」などのロジックを組み込んだ。うち最初の2つは世界初だ。
今回は5つのセクションが用意されたコース内を極低速で走行しただけなので、加速やハンドリングや乗り心地は分からず、2つの世界初の効果も体感できなかったけれど、いくつかの性能はチェックすることができた。

「日産エクストレイル」は、レジャーユースでの使い勝手を重視したミドルサイズSUVとして2000年に登場。2013年12月に発売された新型は、3代目にあたる。
「日産エクストレイル」は、レジャーユースでの使い勝手を重視したミドルサイズSUVとして2000年に登場。2013年12月に発売された新型は、3代目にあたる。
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新型「エクストレイル」は、角張ったスタイリングが特徴だった従来モデルからイメージを一新。全体的に丸みを帯びたデザインとなった。
新型「エクストレイル」は、角張ったスタイリングが特徴だった従来モデルからイメージを一新。全体的に丸みを帯びたデザインとなった。
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インテリアでは、先代モデルと同じくフロアやシートにはっ水加工を採用。ドリンクホルダーや収納スペースを増やし、使い勝手を改善している。
インテリアでは、先代モデルと同じくフロアやシートにはっ水加工を採用。ドリンクホルダーや収納スペースを増やし、使い勝手を改善している。
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トランスミッションはCVTのみの設定。アームレストの手前には、4WDシステム「オールモード4×4i」の走行モード切り替えスイッチが備えられている。
トランスミッションはCVTのみの設定。アームレストの手前には、4WDシステム「オールモード4×4i」の走行モード切り替えスイッチが備えられている。
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日産 エクストレイル の中古車

ゆとりを増した車内空間

試乗したのは中間グレード「20X」で、ボディーサイズは全長4640×全幅1820×全高1715mm。長さは5mm、幅は30mm、高さは15mm拡大したものの、1500kgの車両重量は旧型より逆に20kg軽い。エンジンは2.5リッターが消え、2リッター・ガソリンは直噴化して最高出力が137psから147psに、最大トルクが20.4kgmから21.1kgmにアップした。

ドアを開けてキャビンに入ると、インテリアデザインもエクステリア同様、スマートになったことに気付く。質感も上がっている。見た目のタフっぽさは薄れたけれど、シート、フロア、ラゲッジボードは防水加工とするなど、やるべきことはやってある。

感心したのは後席だ。前席より着座位置が一段高く、見晴らしがいいし、着座姿勢も好ましい。おまけに75mmも伸びたホイールベースのおかげか、身長170cmの僕なら足が楽に組める。
ここまで余裕をもたせたのは、新型には3列シート7人乗りが用意されたから。ちなみに3列車は2列目にスライド機構も付く。ただし2分割のラゲッジボードを自在に組み合わせて、多彩な荷室を構築できるのは2列車だけだ。年に1、2度しか3列目を使わないという人なら、エクストレイルらしいギア感覚を満喫できるこっちのほうがいい。

4WDシステムはこれまでと共通。通常は前後軸間の駆動力配分を100:0~50:50の間で自動制御しているが、50:50でロックしたり、後軸への駆動力をカットしてFF車として走らせたりもできる。
4WDシステムはこれまでと共通。通常は前後軸間の駆動力配分を100:0~50:50の間で自動制御しているが、50:50でロックしたり、後軸への駆動力をカットしてFF車として走らせたりもできる。
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全車に標準装備される防水加工のシート。一部のグレードを除き、オプションでスエード調トリコットを採用したファブリックシートも用意される。
全車に標準装備される防水加工のシート。一部のグレードを除き、オプションでスエード調トリコットを採用したファブリックシートも用意される。
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新型「エクストレイル」には、2列シート仕様と3列シート仕様の2種類が用意される。写真は2列シート仕様のリアシート。3列シート仕様では、セカンドシートに208mmの前後スライド機構が備えられる。
新型「エクストレイル」には、2列シート仕様と3列シート仕様の2種類が用意される。写真は2列シート仕様のリアシート。3列シート仕様では、セカンドシートに208mmの前後スライド機構が備えられる。
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2列シート仕様のラゲッジルーム。広さは550リッターで、2分割式のフロアボードにより、さまざまなかたちに仕切ることができる。(写真をクリックすると、ラゲッジボードによる仕切りの例と、シートの倒れる様子が見られます)
2列シート仕様のラゲッジルーム。広さは550リッターで、2分割式のフロアボードにより、さまざまなかたちに仕切ることができる。(写真をクリックすると、ラゲッジボードによる仕切りの例と、シートの倒れる様子が見られます)
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「タフギア」の実力は健在

直噴化された2リッターエンジンとCVTのコンビは、斜度20度のラージヒルの登りで一時停止、再発進という過酷なタスクを難なくこなしてくれた。CVTにマニュアルモードがないのは不便かも、と思ったけれど、Lレンジに入れて4WDロックモードを選べば、絶妙なスピードを保ち、良好なピックアップを示してくれる。旧型から継承したヒルディセントコントロールも、下り坂で着実に速度を落としてくれた。
ロックセクションでは強靭(きょうじん)なボディーに支えられたサスペンションが自在にストロークし、ショックを和らげるとともに確実な接地をもたらしていることが分かる。タイヤサイズが225/65R17と、必要以上に太く低偏平にしないところもオフ重視の表れと見た。

試乗コースには、「セーフティパッケージ」に含まれる日産初採用の「エマージェンシーブレーキ」「インテリジェントパーキングアシスト」を試す場も用意されていた。前者は他社の衝突被害軽減ブレーキと比べて大きな違いはなかったが、後者は日産自慢のアラウンドビューモニターの画像を応用しており、自車の状況が把握しやすかった。

一方、気になったのは、ボンネットの見切りがイマイチであること。角張った旧型が並外れて優れていたともいえるが。それと最低地上高は205mmを確保しているものの、歩行者保護対策もあってフロントバンバー位置が下がったうえに、先端にスポイラーまで備えているから、アプローチアングルは明らかに減った。

でもそれ以外の部分はしっかりタフギアであり続けていることが、今回の試乗で分かった。納得できない? そういう人には、旧型のまま残されたクリーンディーゼル仕様を選ぶという奥の手があることを、最後に付け加えておこう。

(文=森口将之/写真=荒川正幸)

斜度20度の登坂路を登る新型「エクストレイル」。
斜度20度の登坂路を登る新型「エクストレイル」。 拡大
タイヤを大きくストロークさせてロックセクションを乗り越える。なお、地上高は全車共通で205mmとなっている。
タイヤを大きくストロークさせてロックセクションを乗り越える。なお、地上高は全車共通で205mmとなっている。
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タイヤサイズは225/65R17と、SUVらしく高めのハイトを確保。テスト車には、グッドイヤーのオールシーズンタイヤが装着されていた。
タイヤサイズは225/65R17と、SUVらしく高めのハイトを確保。テスト車には、グッドイヤーのオールシーズンタイヤが装着されていた。
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自動操舵(そうだ)によって車庫入れや縦列駐車の運転をサポートする「インテリジェントパーキングアシスト」。日産車としては今回が初の採用となる。
自動操舵(そうだ)によって車庫入れや縦列駐車の運転をサポートする「インテリジェントパーキングアシスト」。日産車としては今回が初の採用となる。
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日産エクストレイル20X“エマージェンシーブレーキ パッケージ”(4WD/CVT)【試乗記】の画像 拡大

テスト車のデータ

日産エクストレイル20X“エマージェンシーブレーキ パッケージ”

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1820×1715mm
ホイールベース:2705mm
車重:1500kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:147ps(108kW)/6000rpm
最大トルク:21.1kgm(207Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)225/65R17 102H M+S/(後)225/65R17 102H M+S(グッドイヤー・アシュランスCS)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:252万7350円/テスト車=295万500円
オプション装備:リモコンオートバックドア<ハンズフリー機能、挟み込み防止機構付き>(5万2500円)/ルーフレール(5万2500円)/NissanConnectナビゲーションシステム+アラウンドビューモニター<MOD(移動物検知)機能付き>+インテリジェントパーキングアシスト+ステアリングスイッチ<オーディオ、ナビ、ハンズフリーフォン、クルーズコントロール>+フロント&バックソナー+BSW<後側方車両検知警報>+ふらつき警報+クルーズコントロール(31万8150円)

テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
 

日産エクストレイル20X“エマージェンシーブレーキ パッケージ”
日産エクストレイル20X“エマージェンシーブレーキ パッケージ” 拡大

日産エクストレイル20X“エマージェンシーブレーキ パッケージ”(4WD/CVT)【試乗記】の画像 拡大
森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車は「シトロエンGS」と「ルノー・アヴァンタイム」。

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