ジープ・グランドチェロキー リミテッド(4WD/8AT)/グランドチェロキー ラレード(4WD/8AT)
どこでも頼れるパートナー 2014.02.20 試乗記 マイナーチェンジを受け、より精悍(せいかん)に、そしてエコに生まれ変わった「ジープ・グランドチェロキー」。3.6リッターV6モデルの走りを、長野・白馬の雪道で試した。8段AT搭載で燃費が向上
2014年1月下旬、フィアットとクライスラーが経営統合し、新社名が「フィアット・クライスラー・オートモービルズ」と発表される前夜、われわれはフィアット クライスラー ジャパンから「ジープで雪道を走りませんか?」とお誘いを受け、長野県白馬村を訪れた。
白馬といえば長野五輪の開催地。原田雅彦が137mの大ジャンプをぶちかました白馬ジャンプ競技場近くの雪道を新型「グランドチェロキー」で走った。かつてアウディがクワトロの優位性を示すのにどこかのジャンプ台を駆け上がるCMがあったよなぁ、でもグランドチェロキーならそんなの余裕だろうなと、競技場の近くを走りながら考えた。
さて、今回試乗したグランドチェロキーは、本国で2010年、日本では11年に発売された4代目。13年末にマイナーチェンジし、彼らが「モア・アグレッシブ・デザイン」と呼ぶ鋭い顔つきになったほか、ATが5段から一気に8段になって燃費が向上した。1993年に登場した初代から今回のマイチェン後のモデルまで、ジープを名乗るにふさわしい悪路走破性を備えながらも、ゴリゴリのクロカンルックではなく洗練されたエクステリアを貫いてきたのが特徴。
日本仕様のグランドチェロキーには、「ラレード」「リミテッド」「サミット」「SRT8」の4モデルがある。大ざっぱに説明すると、ラレードとリミテッドがV6エンジンを積み、サミットとSRT8がV8エンジンを積む。ラレードが金属バネ仕様で、残る3モデルはエアサス仕様。すべてセンターデフ付きのフルタイム4WDとなる。
絶大な安心感がある
今回、雪上試乗したのは、ラレードとリミテッド。両モデルに共通する3.6リッターV6 DOHCの”ペンタスター”エンジンとZF製8段ATの組み合わせが素晴らしい。最高出力286ps/6350rpm、最大トルク35.4kgm/4300rpmと十分なスペックを誇るエンジンが生み出すパワーを、8段ATが効率よく路面に伝える。スタートはグイッと発進するし、その後も伸びやかでスムーズに回るので、まるでもう少し大きな排気量のクルマに乗っているよう。
じゃあV8はもう不要か!? このクラスのSUVではこの議論になりがちだが、不要とは言わない。V8にはV8の魅力があると思う。だが価格が高いし、ランニングコストがかさむのは事実。積極的にV6を選ぶのもありだと思う。V6モデルのJC08モード燃費は8.6km/リッター。同クラスのSUVと同程度だが、グラチェロの場合はガソリンがレギュラー仕様ということを忘れるべきではない。これでアイドリングストップが付いたらなぁ。
それにしても、スタッドレスタイヤを装着した最新のグランドチェロキーは、過信はできないものの、除雪した上にまた数センチ積もった一般道でドライバーに絶大な安心感を与えてくれる。新型には「セレクテレイン」というダイヤル式の走行モード選択スイッチがあり、スノー、サンド、マッド、ロック、スポーツ、オートからモードを選べる。ぐるぐる回して試してみたが、雪上を普通に気をつけて走る程度では、どこにあっても違いを感じられなかった。ま、オートにしておけば間違いない。
ラレード? それともリミテッド?
雪で覆われた荒れた地面のクローズドスペースで、ラレードとリミテッドをガンガン乗り比べてみると、乗り味には結構な違いがあった。装備などを除くと、両者の違いはサスペンションのみ。ラレードがコイルサスで、リミテッドがエアサス。意外や意外、滑りやすい凹凸路面ではラレードのほうがしっかりと路面を捉え、高いトラクション性能を感じさせた。一方、エアサスのリミテッドは、決して走らないわけではないが、凹凸で多少跳ねるようなそぶりが見え、ラレードほど気持ちよく走ることができなかった。
白馬の雪道を走破した後、リミテッドで東京まで帰った。高速巡航をはじめとする良路面ではラレードよりもリミテッドのほうがはっきりと乗り心地がよく快適。高速走行では低く、悪路走行では高くと、車高を4段階に調整できるなど、エアサスならではの機能もあるので、どちらを買うべきか迷うところだ。本格的に悪路を走るならラレードだが、ほとんどの人にとってはエアサスのリミテッドのほうがありがたみを感じる機会が多いだろう。
V6のグランドチェロキーは423万7500円~542万8500円。サイズや性能は「メルセデス・ベンツML350 4MATIC」(760万円)や「BMW X5 xDrive35i」(798万円)、「アウディQ5 3.0 TFSIクワトロ」(673万円)あたりに近い。だが見ればわかる通り、欧州勢のほうが高い。ではグランドチェロキーは安い代わりに何を我慢しなければならないのかというと……特に何も思い付かない。そりゃジャーマンSUVのほうが内装のクオリティーは高いかもしれないが、本質的に劣っているところは見当たらない。コストパフォーマンスの観点を取り入れると、がぜんグランドチェロキーが魅力的に感じられるのであった。
(文=塩見 智/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
ジープ・グランドチェロキー リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4835×1935×1805mm
ホイールベース:2915mm
車重:2200kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:286ps(210kW)/6350rpm
最大トルク:35.4kgm(347Nm)/4300rpm
タイヤ:(前)265/60R18 110Q/(後)265/60R18 110Q(グッドイヤー・ラングラーIP/N)
燃費:8.6km/リッター(JC08モード)
価格:542万8500円/テスト車=542万8500円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:5453km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:347.8km
使用燃料:--リッター
参考燃費:11.9リッター/100km(約8.4km/リッター、車載燃費計計測値)
ジープ・グランドチェロキー ラレード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4835×1935×1825mm
ホイールベース:2915mm
車重:2160kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:286ps(210kW)/6350rpm
最大トルク:35.4kgm(347Nm)/4300rpm
タイヤ:(前)265/60R18 110Q/(後)265/60R18 110Q(グッドイヤー・ラングラーIP/N)
燃費:8.6km/リッター(JC08モード)
価格:427万3500円/テスト車=427万3500円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。