第2回:圏央道開通!! ただし7割(その1)
関越道、中央道、東名高速がつながった
2014.09.04
矢貫 隆の現場が俺を呼んでいる!?
圏央道の建設計画
首都圏中心部から半径約40~60kmで千葉、埼玉、東京、神奈川を通る延長約300kmの圏央道。もちろん自動車専用道路だけれど、その位置づけは「高速道路」ではなく「一般国道(468号線)」で、正式な名称は「首都圏中央連絡自動車道」である。
国土交通省が作成した古いパンフレットには、圏央道建設の意味について次のように書いてあった。
「首都圏の交通は年々混雑を極めており、その解消のためにさまざまな道路整備が進められています。その中核となるのが3環状9放射ネットワーク構想で……以下略」
3環状とは、首都高速道路の都心環状線を中心に、中央環状線、東京外郭環状線(=外環)、圏央道のことで、それに接続する9放射というのは、東北道・常磐道・東関東道・館山道・湾岸道路・第三京浜・東名高速・中央道・関越道。このすべてがネットワークされるのはいつになるやらわからないけれど、ずっと昔、国土交通省に圏央道と外環道の建設計画を聞いたことがある。いつ開通なのですか、と。
「平成19年度までに東北道から西側(東北道~関越道~東名道~第三京浜)の圏央道と、東北道から東側の外環道が完成する予定」
国交省はこう答えたけれど、外環道はともかく、圏央道の建設はずいぶん遅れているのがわかる。
1996年(平成8年)に、まず最初の区間、関越道と交差する鶴ヶ島JCT(=埼玉県)から東京都の青梅ICが開通。2007年(平成19年)には青梅ICから八王子JCTが開通したことで関越道と中央道がつながった(茨城県と千葉県でも部分開通)。以下省略するが、今年6月28日には高尾山ICから相模原愛川IC間の14.8kmが開通し、こうして関越道、中央道、東名高速がつながったのだった。
で、せっかくの記念だから、わが取材班もそのルートを走ってみようではないか、となった。といっても、この“記念”という言葉には“喜ばしい”の意味はほとんど込められていない。“心配だ”の記念なのだ。
外環道経由で関越道に入り、所沢、川越のICを越え、3つ目のインター、鶴ヶ島の少し手前にある鶴ヶ島JCTで圏央道に、というのがこの日のルート。途中で取材をしながら東名高速の海老名JCT までの約110kmを走ってみようというものだ。
取材の足に、と担当編集者が用意してくれたのは日産自動車の「NV200」。けれど、これ、ただのNV200ではなく、ニューヨーク市で使われる本物のイエローキャブだった。いかにもニューヨークのタクシーらしく、前席と後席を防弾仕様のアクリルガラスで仕切っている。運転手と客は、スイッチをONにしてマイクを通してしゃべり、料金の受け渡しは、パチンコ屋さんの景品交換所と同じで、ガラスの下からすっとだす。
実際に運転してみると、こりゃ、確かにタクシー向きの自動車だと思った。左ハンドルなのに、つまり、久しぶりに運転する左ハンドル車なのに、不思議なことに、ハンドルが左にあるとか右だとか、その種の感覚をまったく意識させない。それどころか、運転しやすいとかしにくいとか、それすら感じさせないのである。言いようによっては「運転手を選ばない」となるわけだから、NV200、まさにタクシー車両向きと言うべきだろう。
余談だけれど、日産自動車は今年9月でタクシー専用車としてのセドリックの生産を中止し、以降は、ニューヨークのイエローキャブに提供しているのと同じNV200をタクシー車両として投入するのだという。乗り降りが楽な低床タイプで、後ろのドアを開ければ標準装備のスロープを使って車いすのまま乗り込むことができる、いわゆるユニバーサルデザインのタクシー。東京では、すでに約35台が稼働している。
(つづく)
(文=矢貫 隆)
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矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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