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ボルボV60 T4 R-DESIGNプラス(FF/6AT)/S60ラグジュアリー エディション(FF/6AT)

乗ったらナットク 2014.09.03 試乗記 下野 康史 ボルボの中核モデル「V60」「S60」に、2タイプの特別仕様車が登場。装備充実の両モデルを走らせ、クルマとしての実力を確かめた。

“リファイン版”の“おトクな仕様”

ミドルサイズ・ボルボ、60シリーズに登場した2種類の特別仕様車に乗った。
最初に試したのは、S60/V60に設定される「ラグジュアリー エディション」。ボルボお得意の安全装備や電動レザーシートなど、約50万円相当のオプションが付いて、標準車より20万円ほど安い。特別仕様っていうより、ズバリ“お値引き”でしょ!? という気もするが、試乗したS60だと399万円。この価格でこんな充実装備を持つモデルは、なるほど「Cクラス」や「3シリーズ」や「A4」にはない。

おさらいすると、現行S60の登場は2010年。2013年夏に変更点4000カ所以上というビッグマイナーチェンジを受けて現在に至る。
だが、あいにく筆者は数年前の“出たて”のS60しか経験がなかった。そのため、細かすぎて伝わりにくい特別仕様よりもまず、ビッグマイナー以降の最新S60が持つ洗練度の高さに感銘を覚えた。カタログ上のスペックは変わっていないが、直噴1.6リッターターボはいっそう静かでスムーズになったし、足まわりも、乗り心地が明らかに滑らかになった。

ボルボといえばワゴン、と、古い人間は考えがちだが、地味な印象のS60もV60の半分近くは売れている。2013年の実績で言うと、3246台対1515台である。セダンも健闘しているのである。

テールゲートの利便性はもちろんワゴンの独壇場だが、S60も後席背もたれを全幅にわたって前倒しすることが可能で、“貫通トランク”になる。こうすると、荷室の奥行きも150cmに広がって、ワゴンに肉薄する。そんな点でもS60は健闘しているのである。

「S60ラグジュアリー エディション」は、装備充実の1.6リッターモデル「S60 T4 SE」に、安全装備のパッケージオプションや本革シートなどを加えた特別仕様車。2014年5月に発売された。


    「S60ラグジュアリー エディション」は、装備充実の1.6リッターモデル「S60 T4 SE」に、安全装備のパッケージオプションや本革シートなどを加えた特別仕様車。2014年5月に発売された。
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「ラグジュアリー エディション」の目玉となる本革シート。ボディーカラーに合わせて、ソフトベージュ(写真)またはオフブラックのシート地が用意される。
「ラグジュアリー エディション」の目玉となる本革シート。ボディーカラーに合わせて、ソフトベージュ(写真)またはオフブラックのシート地が用意される。
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「S60」のトランクルームには、荷物を固定する“仕切り”や長尺物用のスキーホールが備わる。後席の背もたれを倒し、容量を拡大することもできる。(写真をクリックすると空間のアレンジが見られます)
「S60」のトランクルームには、荷物を固定する“仕切り”や長尺物用のスキーホールが備わる。後席の背もたれを倒し、容量を拡大することもできる。(写真をクリックすると空間のアレンジが見られます)
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後席のロック解除は、トランクルーム上部のレバーを引くことで行う。
後席のロック解除は、トランクルーム上部のレバーを引くことで行う。
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ボルボV60 T4 R-DESIGNプラス(FF/6AT)/S60ラグジュアリー エディション(FF/6AT)【試乗記】の画像 拡大
ボルボ の中古車

パワーとトルクも「大盛り無料」

もう一台の“スペシャルな60”は「T4 R-DESIGNプラス」である。
こちらもセダンとワゴンに用意される特別仕様で、高額オプション「セーフティ・パッケージ」を標準装備して、価格は素のT4 R-DESIGNより約18万円安い。

さらに“プラス”の特典は、1.6リッターターボを販売店でチップチューンする「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」が購入者全員にプレゼントされることである。
ノーマルだと180psの最高出力が200psに、24.5kgmの最大トルクが29.1kgmになる。実に今日的なディーラーオプションである。そのうち、自宅のパソコンでダウンロードできるようになるのだろうか。

ボルボのレーシングチームの名を冠したポールスター・パフォーマンス・パッケージそのものは1年ほど前からあり、テールに“POLESTAR”の青いエンブレムを付けたボルボがすでに約1000台路上を走っているという。別売りだと約20万円のこのディーラーオプションも“プラス”ではタダ、ということになると、特別仕様T4 R-DESIGNプラスのお買い得感はいや増す。もちろん試乗したV60もインストール済みだった。

スポーティーな1.6リッターモデルに安全装備のセットオプションを加えたのが、特別仕様車「T4 R-DESIGNプラス」。ワゴン、セダンともに、2014年8月に発売された。
スポーティーな1.6リッターモデルに安全装備のセットオプションを加えたのが、特別仕様車「T4 R-DESIGNプラス」。ワゴン、セダンともに、2014年8月に発売された。
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本革とパーフォレーテッドレザーからなる専用デザインのシートは「R-DESIGN」ならではの装備。色はブラックのみとなる。
本革とパーフォレーテッドレザーからなる専用デザインのシートは「R-DESIGN」ならではの装備。色はブラックのみとなる。
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「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」装着車両には、写真に見られるブルーのエンブレムが装着される。
「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」装着車両には、写真に見られるブルーのエンブレムが装着される。
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ボルボV60 T4 R-DESIGNプラス(FF/6AT)/S60ラグジュアリー エディション(FF/6AT)【試乗記】の画像 拡大

チューンせずとも“らしさ”は光る

ノーマル180psのS60の直後に乗った200psのV60、当然、興味の的はチップチューンされた1.6リッターターボにあった。排気系も含めてエンジンのハードは変わっていないのに、V60のほうがイイ音がしたから、より高回転を好むようになったのは間違いない。イイ音が聴ける高回転までついつい引っ張れるキャラになったのだ。

だが、パワーの差はそれほど体感できなかった。町なかのみのインプレッションだと、S60のほうがむしろきびきび軽快に走る実感があった。実際、V60 T4 R-DESIGNよりS60ラグジュアリー エディションのほうが、車重は20kg軽い。

ついでに言うと、明らかに硬いR-DESIGNの足まわりよりも、ソフトで滑らかなノーマル足のほうがより好印象だった。設計の新しい「V40」は、フル加速時にハンドルがとられるFF特有の“トルクステア”を見事に消し去ったが、60シリーズにはまだ少し残っている。その意味でも、S60、V60ともに180psあれば必要十分である。そもそも、ボルボがあんまり高性能に走ると、ボルボらしくなくなるのになあ、と、個人的には思う。

現在、ボルボの国内販売はV40が55%(クロスカントリーを含む)を占めている。だが、今回あらためてV60をチェックしてみると、後席の居住性や荷室の広さはコンパクトハッチのV40を大きくしのぐ。荷室奥行きは、後席使用の平常時でも、後席を畳んだフルフロアでも、V60のほうが20cm近くタップリしている。ボディーが大きいからあたりまえとはいえ、ムードで「V70」からダウンサイジングした人がいるとすると、果たして本当にV40で足りているのだろうかと、他人事ながら心配になる。 
ひとクラス上の60シリーズもちゃんと売っていかなくてはならない。今回の特別仕様も「V40だけじゃないボルボ」の日本版戦略車種なのである。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=田村 弥)


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テスト車の「T4 R-DESIGNプラス」はコンピューターチューニングによりエンジンのパワーを引き出す「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」を装着。エンジンルームの見た目には、変化はない。
テスト車の「T4 R-DESIGNプラス」はコンピューターチューニングによりエンジンのパワーを引き出す「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」を装着。エンジンルームの見た目には、変化はない。
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「ラグジュアリー エディション」と同様、「T4 R-DESIGNプラス」にも安全装備のセットオプション「セーフティ・パッケージ」が与えられる。写真は、全車速追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)の設定画面。
「ラグジュアリー エディション」と同様、「T4 R-DESIGNプラス」にも安全装備のセットオプション「セーフティ・パッケージ」が与えられる。写真は、全車速追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)の設定画面。
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ワゴン「V60」の荷室。3分割式の後席や助手席を倒すことで、さまざまな荷物の積載に対応する。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます)
ワゴン「V60」の荷室。3分割式の後席や助手席を倒すことで、さまざまな荷物の積載に対応する。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます)
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「V60 T4 R-DESIGNプラス」のボディーカラーは、白系2種、黒系、青系の計4色が用意される。
「V60 T4 R-DESIGNプラス」のボディーカラーは、白系2種、黒系、青系の計4色が用意される。
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ボルボV60 T4 R-DESIGNプラス
ボルボV60 T4 R-DESIGNプラス
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定員3人の後席。背もたれは4:2:4の3分割で折りたたむことができる。
定員3人の後席。背もたれは4:2:4の3分割で折りたたむことができる。
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エンジンチューニングのほか、「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」には認定証やオーナーズブックなどが含まれる。(写真=ボルボ・カー・ジャパン)
エンジンチューニングのほか、「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」には認定証やオーナーズブックなどが含まれる。(写真=ボルボ・カー・ジャパン)
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ボルボV60 T4 R-DESIGNプラス(FF/6AT)/S60ラグジュアリー エディション(FF/6AT)【試乗記】の画像 拡大

テスト車のデータ

ボルボV60 T4 R-DESIGNプラス

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1865×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1590kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:180ps(132kW)/5700rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)235/40R18 95W/(後)235/40R18 95W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト3)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:479万円/テスト車=494万9429円
オプション装備:クリスタルホワイトパールペイント(10万2858円)/セーフティ・パッケージ(特別装備)/※以下、販売店装着オプション パークアシストカメラ<リア>(3万857円)/ETC車載機<音声ガイダンス機能付き>(2万5714円)/ポールスター・パフォーマンス・パッケージ(特別装備)

テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1242km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

ボルボS60ラグジュアリー エディション
ボルボS60ラグジュアリー エディション
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「S60ラグジュアリー エディション」には、衝突被害を回避・軽減する自動ブレーキシステムや、BLIS(ブラインドスポット・インフォメーションシステム)など、さまざまな安全装備が与えられる。写真は、その一部の作動スイッチ。


    「S60ラグジュアリー エディション」には、衝突被害を回避・軽減する自動ブレーキシステムや、BLIS(ブラインドスポット・インフォメーションシステム)など、さまざまな安全装備が与えられる。写真は、その一部の作動スイッチ。
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特別装備のひとつ、本革シート。後席(写真)は6:4の分割可倒式で、中央席の背もたれにはスキーホールが設けられる。
特別装備のひとつ、本革シート。後席(写真)は6:4の分割可倒式で、中央席の背もたれにはスキーホールが設けられる。
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ボルボS60ラグジュアリー エディション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1865×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1540kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:180ps(132kW)/5700rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)215/50R17 95W/(後)215/50R17 95W(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:399万円/テスト車=412万8857円
オプション装備:メタリックペイント<パワーブルーメタリック>(8万2286円)/レザー・パッケージ+セーフティ・パッケージ+PCCキーレスドライブ(特別装備)/※以下、販売店装着オプション パークアシストカメラ<リア>(3万857円)/ETC車載機<音声ガイダンス機能付き>(2万5714円)

テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1120km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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