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ボルボV60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション(4WD/8AT)

バランスの妙 2022.06.24 試乗記 サトータケシ ボルボ最新の改良型プラグインハイブリッドシステムを搭載するミドルクラスステーションワゴン「V60」に試乗。モーターの出力やバッテリーの強化によって従来モデル比でほぼ2倍となるEV航続距離を実現した走りと、日常使いにおける実燃費を確かめた。

エンジンとモーターの連携はシームレス

待ち合わせ場所に指定されたホテルのエントランスでボーッと突っ立っていると、「ボルボV60リチャージプラグインハイブリッド」が車寄せに滑り込んできた。このとき「あぁステーションワゴンっていいな」と思った。

最近のボルボのSUVはどれも上品ないでたちで、「どないだー!」という押し出しの強さは感じない。けれどもやはり背が高いぶん、前面投影面積が大きくなり、デカいツラが圧を生む。次々と高級SUVがやって来るホテルのエントランスで見るボルボV60の楚々(そそ)としたたたずまいは、実に新鮮だ。

ボルボV60リチャージプラグインハイブリッドは、今年(2022年)に入ってからPHEVのシステムが一新された。簡単に言うと、モーターの高出力化とバッテリーの容量を拡大したことがポイントで、電動化の方向にさらに一歩踏み出したことになる。

カタログ値では91kmのEV走行が可能になっているけれど、運転席に座って試乗車両のシステムを起動してみると、それほど電気が残っていない。まずはエンジンとモーターを効率よく組み合わせる「Hybrid」モードを選んでスタートする。

フロントに積むエンジンが前輪を駆動し、リアに積むモーターが後輪を駆動するAWDシステムのレイアウトは不変で、エンジンにはスターターを兼ねたモーター「CISG(Crank Integrated Starter Generator)」が組み合わされる。

発進加速は極めて滑らかで静か。思わずEV走行を主体にする「Pure」モードを選んでしまったかと錯覚してしまうほど。エンジンとモーターの連携がシームレスだからインパネのエネルギーフローのチャートを凝視しないと、どっちが主力として車体をけん引しているのかの判断が難しい。けれどもじっくりと観察すると、CISGが効いているようだ。

CISGは発電と駆動の両方の役割を備えたモーターで、これが穏やかなのに力強いという、ちょっと矛盾するようだけれど好ましい極低速域での加速フィールをアシストしている。

2022年1月に日本導入が開始された最新型「ボルボV60」。今回試乗した「V60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション」には、従来モデルよりも容量が約60%大きい18.8kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーが搭載され、ほぼ2倍にあたる91kmのEV航続距離を実現している。
2022年1月に日本導入が開始された最新型「ボルボV60」。今回試乗した「V60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション」には、従来モデルよりも容量が約60%大きい18.8kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーが搭載され、ほぼ2倍にあたる91kmのEV航続距離を実現している。拡大
充電口は左のフロントフェンダーに設置。搭載される容量18.8kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーは、200V 16Aの普通充電で空の状態から4.5~5時間で満充電に至る。
充電口は左のフロントフェンダーに設置。搭載される容量18.8kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーは、200V 16Aの普通充電で空の状態から4.5~5時間で満充電に至る。拡大
インストゥルメントパネルのデザインは、従来型から大きな変更はない。写真のインテリアカラーはアンバーとチャコールのコンビネーションで、ダッシュボードに天然ライムウッド(マット仕上げ)を用いた「リニアライムアルミパネル」が組み込まれている。
インストゥルメントパネルのデザインは、従来型から大きな変更はない。写真のインテリアカラーはアンバーとチャコールのコンビネーションで、ダッシュボードに天然ライムウッド(マット仕上げ)を用いた「リニアライムアルミパネル」が組み込まれている。拡大
9インチのセンターディスプレイに内蔵されるインフォテインメントシステムはグラフィックや操作ロジックをリニューアル。より直感的なコントロールを可能にしたという。写真はユーザーの好みに各種設定を変更できる「My Car」のドライブモードを表示した様子。
9インチのセンターディスプレイに内蔵されるインフォテインメントシステムはグラフィックや操作ロジックをリニューアル。より直感的なコントロールを可能にしたという。写真はユーザーの好みに各種設定を変更できる「My Car」のドライブモードを表示した様子。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4760×1850×1435mm、ホイールベース=2870mm。車重は2070kgと発表されている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4760×1850×1435mm、ホイールベース=2870mm。車重は2070kgと発表されている。拡大
ボルボ V60 の中古車

スーパーチャージャーがなくてもパワフル

穏やかなのに力強い、気はやさしくて力持ち、というパワートレインが、このクルマのキャラクターにふさわしいと感じるのと同時に、試乗前に感じていた懸念が吹き飛んだ。懸念というのは、従来のPHEVシステムのガソリンエンジンは、スーパーチャージャーとターボチャージャーで過給していたのに対して、新システムはスーパーチャージャーが外されてターボチャージャーのみになっていることだ。

机の上で考えれば、極低回転域でのパワーとレスポンスを担うはずのスーパーチャージャーが不在となるわけで、低速域でのドライバビリティーが損なわれるのではないかと心配になる。

けれども前述したように心配は無用で、エンジン自体の最高出力は変更前の317PSから253PSに低下しているものの、CISGの最高出力が48PSから71PSにアップしている。スーパーチャージャーがなくなったぶんのパワー低下をCISGが“電気ターボ”として補っているわけで、ここだけ見ても電気が果たす役割の比率が高まっていることがわかる。

しかもスーパーチャージャーが担当していた仕事を、より静かに、滑らかに行うわけだから、失ったものはないといえそうだ。

先行車や対向車の有無など走行状況に応じて、ヘッドライトの照射位置を自動調整する「フルアクティブハイビームLEDヘッドランプ」が標準装備される。プラグインハイブリッドモデルはフロント左右のエアインテーク部分にメッキの加飾が追加されており、他グレードと識別しやすい。
先行車や対向車の有無など走行状況に応じて、ヘッドライトの照射位置を自動調整する「フルアクティブハイビームLEDヘッドランプ」が標準装備される。プラグインハイブリッドモデルはフロント左右のエアインテーク部分にメッキの加飾が追加されており、他グレードと識別しやすい。拡大
「V60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWD」のパワーユニットは、最高出力253PSの2リッター直4ターボエンジンに同71PSのCISG、同145PSのリアモーターが組み合わされる。従来型に備わっていたスーパーチャージャーは、CISGの出力向上により導入が見送られている。
「V60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWD」のパワーユニットは、最高出力253PSの2リッター直4ターボエンジンに同71PSのCISG、同145PSのリアモーターが組み合わされる。従来型に備わっていたスーパーチャージャーは、CISGの出力向上により導入が見送られている。拡大
「V60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション」には19インチサイズの「5オープンスポーク」ホイールが標準で装備される。今回の試乗車はこれに235/40R19サイズの「ミシュラン・プライマシー4」タイヤが組み合わされていた。
「V60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション」には19インチサイズの「5オープンスポーク」ホイールが標準で装備される。今回の試乗車はこれに235/40R19サイズの「ミシュラン・プライマシー4」タイヤが組み合わされていた。拡大

ADASの仕上がりに一日の長

高速道路のETCゲートを通過したところで軽くアクセルペダルを踏み込んでみると、ゲート手前の減速でいったん休憩に入っていたエンジンが目を覚まし、回転を上げる。一部のハイブリッド車には、このエンジン再始動の音と振動が気に障るというか、それまで静かだったぶん、残念な気持ちになるものもあるけれど、このクルマは違った。

エンジンが始動する際の音や振動をほとんど感じることなく、ごく自然にエンジンとモーターが連携プレーをスタートする。このあたり、よく練られているという印象だ。

ここで、パワートレインをスポーティーな特性にする「Power」モードを選択。するとエンジン回転を高く保つようになり、アクセルペダルの操作に対する反応も素早くなる。

このレスポンスのよさにはモーターも貢献しているようで、エンジンが回転を上げるのと連動してモーターも加勢していることが感じられる。結果として、エンジン単体での加速とも、モーター単体での加速とも異なる、迫力と洗練がいい具合にミックスしたスムーズな加速感を味わうことができた。

左手親指のほぼワンアクションで作動するアダプティブクルーズコントロールのインターフェイスは良好で、この使い勝手のよさは現状でトップレベルだろう。追従する際の加減速がドライバーの感覚に合っていて、これもこのシステムが使いやすいと感じるポイントのひとつだ。

ボルボが「パイロットアシスト」と呼ぶ車線維持支援機能の作動もごくナチュラルで、ドライビングの邪魔はしないけれど本当に大事なところでは注意喚起するあたりも含めて、ADAS系はキメ細やかにチューニングされている。

最上級グレードの「T6 AWDインスクリプション」には、他グレードでオプションとなる「チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ」が標準で装備される。
最上級グレードの「T6 AWDインスクリプション」には、他グレードでオプションとなる「チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ」が標準で装備される。拡大
スウェーデンのオレフォス社が手がけるクリスタル製のシフトノブは、最上級グレードの「インスクリプション」にのみ装備。従来型ではスタート/ストップスイッチの下にドライブモード選択スイッチが備わっていたが、最新型では廃止されている。
スウェーデンのオレフォス社が手がけるクリスタル製のシフトノブは、最上級グレードの「インスクリプション」にのみ装備。従来型ではスタート/ストップスイッチの下にドライブモード選択スイッチが備わっていたが、最新型では廃止されている。拡大
ボディー中央に駆動用のリチウムイオンバッテリーが搭載されているため、後席足元の中央部分は大きく盛り上がっている。同バッテリーは容量増加に伴い単体重量が約19kg増加し、133kgとなった。
ボディー中央に駆動用のリチウムイオンバッテリーが搭載されているため、後席足元の中央部分は大きく盛り上がっている。同バッテリーは容量増加に伴い単体重量が約19kg増加し、133kgとなった。拡大
荷室容量は5人乗車の通常使用時で529リッター。荷室床下にはボードを垂直に起こし買い物バッグなどを固定できるグロサリーバッグホルダー(写真)が備わっている。
荷室容量は5人乗車の通常使用時で529リッター。荷室床下にはボードを垂直に起こし買い物バッグなどを固定できるグロサリーバッグホルダー(写真)が備わっている。拡大

燃費は満タン法で23.1km/リッター

新装なったPHEVシステムとその周辺に目を奪われがちであるけれど、このクルマが土台からしっかりしていると感じるのは、乗り心地のよさと素直な操縦性が両立しているからだ。市街地程度のスピードではゆったりとした動きを見せるサスペンションは、路面からのショックを上手に吸収して、車内の平穏を保つ。一方で速度が上がるにつれてフラットな姿勢をキープする方向にキャラ変をして、今度はしっかり感と安定感を伝えるようになる。

高速巡航では市街地を走るときのようなふんわり感は減り、路面からの突き上げはそこそこ感じるけれど、長距離・長時間ハンドルを握っても疲れないのは、こういう性格だ。荷物を積んでかなたを目指す、ステーションワゴンの使い方にフィットしている。

コーナーではいかにもサスペンションが正しく地面と接しているという印象で、素直に向きを変える。クルマをねじ伏せたい、クルマを操るダイレクト感を味わいたい、スリルや刺激を求める、という方にはモノ足りないかもしれないけれど、リラックスしてステアリングホイールを握れるクルマであることは間違いない。

燃費を満タン法で計測すると、23.1km/リッターという良好なものであった。冒頭で電気が残り少なかったと記したけれど、それでも「充電しなきゃ」という焦りを感じなくて済むのはPHEVの利点だ。

試乗を終えての感想は、これだけ全体の統制がとれているクルマも珍しいということだ。控えめで上品なスタイリングとシンプルだけど上質なインテリア、効率的で洗練されたパワートレインとしつけの行き届いた乗り心地などなど、一部が突出することなく、全体の狙いがピタッとバランスしている。こういうクルマにしたいという意図が明確なのだ。世界的にボルボの販売が好調な理由がよくわかった。

(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

英国の老舗音響ブランドBowers & Wilkinsの「プレミアムサウンドオーディオシステム」は34万円のオプションアイテム。サブウーハー付きの15スピーカーで構成され、トータル出力1100Wを誇る。
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「インスクリプション」グレードに標準装備されるファインナッパレザー仕立ての前席には、リラクゼーション(マッサージ)機能とベンチレーション機能が備わっている。外装色が「ぺブルグレーメタリック」の場合のみ、表皮が写真の「アンバー」色となる。
「インスクリプション」グレードに標準装備されるファインナッパレザー仕立ての前席には、リラクゼーション(マッサージ)機能とベンチレーション機能が備わっている。外装色が「ぺブルグレーメタリック」の場合のみ、表皮が写真の「アンバー」色となる。拡大
試乗車の後席に備わっていたリアのシートヒーターは、ステアリングヒーターとセットで「クライメートパッケージ」に含まれる5万5000円のオプションアイテム。
試乗車の後席に備わっていたリアのシートヒーターは、ステアリングヒーターとセットで「クライメートパッケージ」に含まれる5万5000円のオプションアイテム。拡大
今回の試乗車両がまとっていた「ぺブルグレーメタリック」のボディーカラーは、9万2000円の有償色。これを含め「V60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション」では、全11色から外板色を選択できる。
今回の試乗車両がまとっていた「ぺブルグレーメタリック」のボディーカラーは、9万2000円の有償色。これを含め「V60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション」では、全11色から外板色を選択できる。拡大

テスト車のデータ

ボルボV60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4760×1850×1435mm
ホイールベース:2870mm
車重:2070kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:253PS(186kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/2500-5000rpm
フロントモーター最高出力:71PS(52kW)/3000-4500rpm
フロントモーター最大トルク:165N・m(16.8kgf・m)/0-3000rpm
リアモーター最高出力:145PS(107kW)/3280-15900rpm
リアモーター最大トルク:309N・m(31.5kgf・m)/0-3280rpm
タイヤ:(前)235/40R19 96W/(後)235/40R19 96W(ミシュラン・プライマシー4)
ハイブリッド燃料消費率:15.6km/リッター(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:91km 
EV走行換算距離:91km
交流電力量消費率:202Wh/km
価格:824万円/テスト車=881万6650円
オプション装備:ボディーカラー<ぺブルグレーメタリック>(9万2000円)/Bowers & Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1100W、15スピーカー、サブウーハー付き>(34万円)/クライメートパッケージ<ステアリングホイールヒーター、リアシートヒーター>(5万5000円) ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー<フロント&リアセット/スタンダード/工賃含む>(8万9650円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2825km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:231.1km
使用燃料:10.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:23.1km/リッター(満タン法)/23.7km/リッター(車載燃費計計測値)

ボルボV60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション
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サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

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