貴重な「日本の得意技」だった
歴史を振り返れば、ヨーロッパにおいての日本車の高い評価の一端は、4WDが担ってきた。長いことこの旧大陸には、信頼性が高く、かつ手頃な価格の4WD車がほとんどなかった。そのため、日本製4WD車は、特に積雪が多い国で早くから注目された。
ボクがかつて訪れたオーストリアの山あいの村は、住民のガレージにことごとくスバル車が収まっていた。長年スイスでトヨタの人気車種は、意外にも「カローラ 4WD」であった。
1970~80年代に日本車輸入規制が敷かれていたイタリアでは、隣国から並行で輸入された「ダイハツ・タフト」や「スズキ・ジムニー」(いずれも初代)が、降雪の機会が多い北部で支持を集めた。
そのイタリアでは、2000年代に入ると、「スバル・レガシィ」は交通警察隊に、「フォレスター」は憲兵(カラビニエリ)や森林警備隊、財務警察に続々採用された。
そうした日本製4WDに対する定評をどだいに、スタイリッシュさを加えたRAV4は、SUVブームのけん引役となった。また、ライバルである日産に「キャシュカイ」や「ジューク」を造らせただけにとどまらず、韓国や地元ヨーロッパブランドをも大いに刺激した。
ありそうでなかったジャンルを開拓するという、日本ブランドの得意技を感じさせるプロダクトが欧州から少なくなりつつある今、RAV4がしるした足跡は、クルマという範疇(はんちゅう)を超えて貴重に思えるのはボクだけだろうか。
(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=Akio Lorenzo OYA、トヨタ自動車)

大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。20年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』、『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。
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