ジープ・チェロキー ウォーリアー(4WD/9AT)
さらにイージーな元祖SUV 2015.02.13 試乗記 「ジープ・チェロキー ウォーリアー」は、「チェロキー」シリーズの中でもよりオフロード向けの仕様となる「トレイルホーク」グレードをベースにした限定モデルだ。その走破性能を確かめに“スノートレイル”を目指した。精悍に見える
あれ、なんだか思っていたよりカッコいい。切れ長の目のようなポジションランプをヘッドライトに“錯覚”させる「ロールス・ロイス・ファントム」や「日産ジューク」と同じような仕掛けありのフロントデザインは斬新なのだろうが、それを除けば新型チェロキーのスタイリングには特に見るべきものはないと思っていた。武骨でボクシーなこれまでのモデルに比べれば洗練されたのかもしれないが、一転して丸みを帯びたそのフォルムは、今や星の数ほどある大小SUVと大差なく、かえってその中に埋没してしまった印象を持っていた。
ところがこのトレイルホークがベースの“ウォーリアー”は、以前に試乗したチェロキーの他のグレードよりも、雪の中で引き締まって精悍(せいかん)に見える。特別仕様の濃いグリーンのボディーカラーのせいもあるのだろうが、実はほかにもタフに見える理由がある。3車種設定されているチェロキーの日本仕様の中で最もジープらしいというか、4WDとして本格派という位置づけのトレイルホークは、フェンダーガードがより張り出していて全幅1905mmと他の2モデルより45mm広く、また最低地上高も220mmと40mm高い。ジープの名を持つ4WDに“本格的”というのも奇妙だが、ベーシックグレードの「ロンジチュード」はただの前輪駆動(FWD)だから、そういう区別も必要な時代ということなのだろう。
また同じくローレンジ付きオンデマンド式4WDである最上級グレードの「リミテッド」ともその駆動システムは若干異なる。トレイルホークではセンターコンソールのセレクテレインシステムのダイヤルで切り替え可能なドライブモードがリミテッドの4種から5種類(オート/スノー/スポーツ/サンド&マッド、およびロック)に増え、さらにリアデフロックと登坂・降坂時に極低速での一定速走行ができるセレクスピード・コントロールも備わった「アクティブドライブ・ロック」と称する専用の4WDシステムとなる。これが「トレイル・レイテッド」というバッジ付きとなるゆえんだ。このバッジは本格的なオフロード走行性能を備えているお墨付きらしい。
9速にはほとんど入らない
この5世代目に相当する(FCAジャパンは初代を勘定に入れず4代目と言っているが)新型チェロキーはFWDプラットフォームになったことで従来型から大きく変身している。それに伴う新しいチェロキーの特徴がZFの横置きFWDおよび4WD用の最新型9段ATを採用していること。トレイルホークとリミテッドでは3.2リッターV6との組み合わせで、黒子に徹して粛々と働いているが、ただし9段もあるギアを効果的に使っているようには感じられない。というのも、高速道路をごく普通にメーター100km/hで巡航している際のエンジン回転数は1600rpm強だが、実はトップギアではなく7速で走っている。セレクターを左側に倒してマニュアルモードにすることもできるが、それで8速を選んでもメーター内の表示が「8」に変わるだけで、それ以上のギアには実際には入らない。つまり、インジケーターには実際にエンゲージしているギアが表示されるのではなく、以前のレクサスと同じようにシフトアップするギアの上限を示しているものにすぎない。一般道では確認するのが難しいが、8速は120km/h、トップ9速は140km/h近くにならないと入らないようだ。しかも巡航状態からちょっと踏み込むと即座に段を飛ばしてキックダウンしてしまうので、高いギアのままでシュルシュルと加速するというわけにはいかない。ということは、少なくとも日本ではせっかくの9段ATの恩恵もあまり感じられないのだ。
最高出力272ps(200kW)/6500rpm、最大トルク32.1kgm(315Nm)/4300rpmのスペックを持つ3.2リッターV6 DOHCエンジンは、現代のSUVユニットの標準からすると軽快に回りたがる高回転型といえる。スムーズに嫌みなく健康的に吹け上がるのだが、実用域のトルクはさほど強力な印象はなく、ピックアップも特に鋭いわけでもない。トップ2段が飛び抜けて高い9ATと車重2トンもあるSUVにはあまりマッチしているようには思えなかった。
イージーで扱いやすい
スタッドレスタイヤのせいもあるのか、街中や一般道での乗り心地は意外なほどに当たりがソフトで、4WDということから想像する武骨なゴツゴツ感などはまったく感じられない。ただしスピードが増すとホイールの上下動が残り、今ひとつ落ち着かない。それなりに静かで安定した走りっぷりではあるものの、大きな入力をビシッと抑えるのは得意ではないようだ。
ドライ路面でも雪道でもハンドリングは標準的といったところ。特にシャープでも鈍くもなく、重い車にふさわしい、ゆったりとしたリズムで運転するにはちょうどいい。アクティブドライブは、ロック(Rock)モード(ローレンジの場合のみ選択可能)を除けば4輪が剛結されているようなダイレクト感はあまりないが、それでも予想以上にタイヤの接地感など車両からのインフォメーションが感じ取れるのがチェロキーの美点である。全体的にちょっとルーズだが、扱いやすく安心できるという点ではチェロキーの伝統を受け継いでいるといえるだろう。
都心から軽井沢を往復したおよそ500kmの行程の大部分が高速道路だったにもかかわらず、平均燃費は8.0km/リッターと最新の9ATを備えている割には平凡な数字だった。レギュラーガソリンで済むのはありがたいが、このぐらいでは少なくとも日本ではちょっと分が悪い。
有名だからこその悩み
一新されたインストゥルメントパネルやインテリアは、これまでのチェロキーとは打って変わったモダンなデザインになり、トリム類のフィニッシュレベルも同様に一足飛びに引き上げられたことは間違いないが、残念ながら他のSUVも同じように進歩しているせいで、特に抜きんでているわけではない。インテリアのスペースは十分で、さらにリアシートは分割可倒式の上にスライドとリクラインも可能であり、ワゴンとしての使いやすさはきちんと考慮されている。
そういえばウォーリアーとは、昨年夏に限定150台で発売されたトレイルホークの特別仕様モデルで、ボンネットのデカール、ブラックのアルミホイールといったコスメティックに加え、本来はオプション装備となるアダプティブクルーズコントロールやレーンキープなどから成る「セーフティパッケージII」(32万4000円)が標準装備されるお買い得仕様でもある。その勇ましい名前だけに、グリーンの専用ボディーカラーも昔ながらのオリーブドラブかと思えば、実際には「エコグリーン」と言うそうだ。現代風なのかもしれないが、あきれるほどにつまらないネーミングである。
本格的なクロスカントリー能力が重視されない今、無数のSUVの中での位置取りはますます窮屈になっている。武骨なタフギアを狙うのか、オシャレでクールなワゴン的ポジションを取るのか、どのブランドも苦心しながらそれぞれのポジショニングを探っているはずだ。新型チェロキーは米国では好調と聞くが、日本ではその有名な名前のせいで立ち位置に迷っているように思えてならない。
(文=高平高輝/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
ジープ・チェロキー ウォーリアー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4630×1905×1740mm
ホイールベース:2720mm
車重:1990kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.2リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:9段AT
最高出力:272ps(200kW)/6500rpm
最大トルク:32.1kgm(315Nm)/4300rpm
タイヤ:(前)245/65R17 107Q/(後)245/65R17 107Q(グッドイヤー・ラングラーIP/N<スタッドレスタイヤ>)
燃費:8.8km/リッター(JC08モード)
価格:451万4400円/テスト車=451万4400円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:5859km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:507.6km
使用燃料:63.1リッター
参考燃費:8.0km/リッター(満タン法)/9.0km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
NEW
OEM車で自社製品らしさを出すために、多田さんだったら何をする?
2026.8.25あの多田哲哉のクルマQ&A他メーカーが開発したクルマを、自社製品として別の名前でユーザーに供給するOEM車。エンジニアの工夫次第で、オリジナルとは異なる独自の個性を出すことはできるのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.8.25試乗記BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】
2026.8.25試乗記カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。 -
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。





























