スズキSX4 Sクロス(4WD/CVT)
隠れた快作 2015.05.18 試乗記 スズキのコンパクトクロスオーバー「SX4」がフルモデルチェンジ。名前も新たに「SX4 Sクロス」となった新型の試乗を通し、今日におけるスズキの“登録車”の実力を探った。「スイフト」と並ぶ世界戦略車
日本では「スイフト」の陰に隠れてなじみが薄いが、スズキにとってはこれからの市場を切り開く影の世界戦略車。SX4の位置づけは、言ってみればそんなところだろうか。
かつての業務提携先であったフィアットとの共同開発で初代が登場したのは、今からほぼ10年前の話。ハンガリーのマジャールスズキで生産された完成車はフィアットにも供給され、「セディチ」の名で欧州マーケットでも一定の人気を博することになる。一方のスズキは中国や南米、アフリカなどの新興マーケットでのシェア獲得の足がかりとしてSX4を活用。今回の第2世代では中国での生産も開始した。
表の顔であるスイフトには東欧やインドといったマーケットを託す一方で、新しい市場に対してはいち早くBセグメント系クロスオーバーを投入し、新しいニーズの獲得にいそしむ。つまるところ、そんなことをかれこれ10年以上前からたくらんでいたわけだ。大手と違って投げ込めるタマには限りがある。その制約はスズキにとってむしろ好都合なのだろうか。そう思わされるほどの先見性だ。
新しいSX4には「Sクロス」というサブネームが設けられた。恐らくスズキとしては、こちらの名前の方を強く推していきたいのだろう。カタログやホームページのタイトルでもSクロスの側が大きく記されている。
軽量化こそスズキの“社是”
別名を浸透させたい理由の一つは、その車格にありそうだ。全長4300mm、全幅1765mmというサイズは初代に対して完全に一回り大きく、どちらかといえばCセグメントのそれに近い。とはいえ、「ホンダ・ヴェゼル」や「マツダCX-3」といった最近のコンパクトクロスオーバーは軒並みSクロスに近いサイズとなっており、このカテゴリーの標準的な体格と表現しても差し支えないだろう。海外市場メインの輸入物件ということもあって、全高は1575mmと機械式駐車場に対応できていないが、最低地上高は165mmとCX-3以上、ヴェゼル未満のところを確保している。そして重量はFF仕様で1140kgと、ヴェゼルのガソリン車に対して40kg、搭載エンジンがディーゼルのみとなるCX-3に対しては実に120kgも軽量だ。「アルト」のみならず、スズキの軽量化に対する取り組みがあらゆる車種に行き渡っていることがうかがえる。
搭載されるエンジンは「M16A」型の1.6リッターツインカム4気筒ユニット。「スイフトスポーツ」に搭載されるそれと基本を同じくするが、クルマのキャラクターに伴うチューニングの違いもあって、最高出力はスイフトスポーツよりも900rpm低い回転域で19ps低い117psを発生。燃費はFFモデルの場合、JC08モードで同じくCVTを搭載するスイフトスポーツよりも2割近く優れた18.2km/リッターをマークする。ちなみにSクロスのトランスミッションはCVTのみとなり、7段の手動変速モードはステアリングパドルで操作することも可能。ただしアイドリングストップ機構は搭載されない。
ひたすら真面目
内装は意匠や質感こそ凡庸だが、必要なものがあるべきところにある、奇をてらったところのない作りには好感が持てる。また、前後左右のカップルディスタンスには余裕があり、居住性はCセグメントハッチバックと比べても遜色はない。後席は凝ったフォールディング機能を持たない代わりに、座面が一段高く据えられ、それ自体の大きさもしっかり採られている。Aピラーに視界が大きく遮られる点は気になるも、総じて真面目な空間構成だ。
そんな印象はエンジンも然(しか)りで、刺激めいたところはまったくないぶん、低回転域からのトルクに不足はなく、軽い車体をしっかりと前に押し出してくれる。アクセル踏み始めのコントロール性は、悪路での扱いやすさも少しは加味したのだろう、オンロードではややもっさりとした印象を受けるかもしれないが、これはエンジニアの良心と受け止めたいところだ。CVT自体はスリップ感がしっかり抑えてあり、2000~4000rpmという頻繁に使う回転域での伝達感にも不満はない。一方で高回転域ではエンジンの細かな振動や音の割れもみられないわけではないが、クラスを考えれば許容範囲にある。
スズキの“登録車”は侮れない
一方で、クラスを超えたポテンシャルを感じさせてくれるのがライドフィールだ。セットアップの指向は初代のSX4や「スプラッシュ」などと同様、ロールをしっかり抑えて姿勢変化を少なくし、ロール剛性を高める方向にもっていっている。が、前述のモデルにも増してダンパーが微小入力域からしっかり減衰力を立ち上げており、低速域での乗り心地についてはザラザラやゴツゴツといった雑味がきれいに取り除かれていた。
スイフトよりも高められたボディー剛性もあって、アシの動きは大径タイヤをものともせず、全域でしなやかだ。そして見た目にそぐわないワインディングロードでのキビキビ感は、運転している当の本人がちょっと引くほど。この上質な乗り味とのバランスを測るならば、タイヤサイズは16インチにダウンしてもいいかもしれない。そう思わせるほど骨や節がしっかりしているという印象だ。
白のナンバープレートを下げたスズキのクルマの走りが、やたらとしっかりしていてあらびっくり……というのは、なにもこのクルマに始まったことではない。前述のスプラッシュやスイフト、「キザシ」など、ここ10年余の間に登場したモデルには共通して言えることだ。いずれもメインマーケットはよその国である上、日本では中小販売網の大勢が軽にばかり注力することもあってか、これらが大きくクローズアップされる機会は少ない。Sクロスとて、その殻を破ることは相当難しいだろう。せめて、クルマ好きが頭の片隅にこれをとどめておいていただければ幸いに思う。コンパクトカーの動的水準において、スズキはトヨタやホンダを差し置くほどの存在であることを。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏)
テスト車のデータ
スズキSX4 Sクロス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4300×1765×1575mm
ホイールベース:2600mm
車重:1210kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:117ps(86kW)/6000rpm
最大トルク:15.4kgm(151Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)205/50R17 89V/(後)205/50R17 89V(コンチネンタル・コンチエココンタクト5)
燃費:17.2km/リッター(JC08モード)
価格:225万7200円/テスト車=244万1502円
オプション装備:※以下、販売店オプション カーナビゲーションシステム(14万3478円)/フロアマット(2万412円)/ETC車載器(2万412円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。






















