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スズキSX4 Sクロス(4WD/CVT)

飾らない実力者 2015.06.02 試乗記 熊倉 重春 「SX4」の後継車種として生まれた、スズキのクロスオーバーモデル「SX4 Sクロス」。欧州を中心とした世界の市場に投入されるSUVは、実直なまでに作りこまれた走行性能と実用性を備えていた。

納得のユーティリティー性

正論をズバッと言い切られると抵抗できない。どこまでも基本に忠実なスズキSX4 Sクロスは、そんなクルマだ。コンパクト級のSUVやクロスオーバーが大はやりの今、本当に必要なことを真っすぐに叫ぶ正直者といえる。

ホイールベース2600mm、全長4300mm、全幅1765mmと以前のSX4より少し大型化し、5ナンバー枠を飛び出したSクロスだが、逆に全高は1575mmとやや低められ、そのぶん乗用車的な雰囲気が増した。室内スペースも、後席で見ると、身長173cmのドライバーが楽な運転姿勢を取った後ろで膝の前にげんこつ2個の余裕が残り、大人4~5人がくつろいで座れる(背もたれはわずかにリクライン可能)。

そのうえでハッチバックの中の荷室は床面の奥行きが最低でも73cmあるほか、左6:右4の割合で分割して畳める背もたれを倒すと(シングルフォールド)、前席のコンソールまで、実測で合計1.6mの長い空間が現れる。テールゲート開口部の最高点までは床から73cmだが、床のパネルを9cm低く移すのも可能で、そのぶん荷室高も稼げるなど、多用途車としての配慮は行き届いている。

「エクステリアの“クロスオーバーデザイン”を反映させた」というインテリア。シルバーの装飾を施し助手席正面のパネルにソフトパッドを採用するなど、上質感も追及している。
「エクステリアの“クロスオーバーデザイン”を反映させた」というインテリア。シルバーの装飾を施し助手席正面のパネルにソフトパッドを採用するなど、上質感も追及している。 拡大
後席の様子。背もたれには1段階のリクライニング機構が備わる。
後席の様子。背もたれには1段階のリクライニング機構が備わる。 拡大
荷室の容量は、標準状態で先代モデル「SX4」よりも167リッター大きい420リッターを確保。フロア高の調整や後席の前倒しにより、容量をさらに拡大できる。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます)
荷室の容量は、標準状態で先代モデル「SX4」よりも167リッター大きい420リッターを確保。フロア高の調整や後席の前倒しにより、容量をさらに拡大できる。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます) 拡大
「SX4 Sクロス」は、1.6リッター直4エンジンを搭載するスズキのクロスオーバーモデル。2015年2月に発売された。
「SX4 Sクロス」は、1.6リッター直4エンジンを搭載するスズキのクロスオーバーモデル。2015年2月に発売された。 拡大
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メカニズムにもこだわり

フロントに横置きされる4気筒ツインカムは、新開発のM16A型。クランクもコンロッドも細く軽く攻めたほか各部の摩擦損失も減らした設計で1.6リッターから最高出力117ps/6000rpm、最大トルク15.4kgm/4400rpmを生む。
ターボで武装していないから平凡に見える性能だが、頑健で知られたM15A型に似た逞(たくま)しい回転感が魅力。これとコンビを組むCVTは副変速機を内蔵し、トータルで最高と最低の変速比幅を8.473(低速側4.006~1.001と高速側2.200~0.550が状況に応じて自動的に切り替わる)と大きく取って、SUV&クロスオーバーらしく広範な走行条件に備えている。

このエンジンを生かすのが“オールグリップ”と名乗る4WD駆動制御。普通に走る時は実質的にFFだが、滑りやすい路面で前輪が空転すると、その度合いに応じて後輪にも適切に駆動力を配分する。その変化が非常に微妙で滑らかなだけでなく、フィードフォワード的なのが大きな特徴だ。
つまり前輪が空転してから配分を変えるのではなく、速度、アクセル開度、操舵(そうだ)角などのセンサーから集めた瞬間ごとの情報を総合して状況を先読みし、実際に空転が起きる寸前に前もって対処する。だからドライバーは、いつ、どのように変わったのかは感じ取れない。

自然吸気の1.6リッター直4エンジン。燃費はJC08モードで17.2km/リッター。
自然吸気の1.6リッター直4エンジン。燃費はJC08モードで17.2km/リッター。 拡大
 
スズキSX4 Sクロス(4WD/CVT)【試乗記】の画像 拡大
ブルーの差し色で飾られる、「SX4 Sクロス」のアナログ式メーター。中央にはマルチインフォメーションディスプレイがレイアウトされる。
ブルーの差し色で飾られる、「SX4 Sクロス」のアナログ式メーター。中央にはマルチインフォメーションディスプレイがレイアウトされる。 拡大

「SX4 Sクロス」の4WDシステムとパワーステアリングは、操舵(そうだ)角センサーやヨーレートセンサーなどのデータを元に、複合的に制御される。


	「SX4 Sクロス」の4WDシステムとパワーステアリングは、操舵(そうだ)角センサーやヨーレートセンサーなどのデータを元に、複合的に制御される。
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素性のよさを感じる走り

コンソール上のダイヤルには基本モード(オート)のほかスノーとスポーツのポジションがあるが、どちらに切り替えてもガクンというほどの違いは出しにくい。ほかに駆動力を直結に近い状態にしてしまうロックボタンもあるが、これは深い雪の吹きだまりや砂地からの脱出専用だから、おそらく日常生活で使う機会はないだろう。

だからSクロスの走りっぷりは自然で素直そのもの。攻めたコーナリングでも205/50R17 89Vのタイヤ(テスト車は「コンチネンタル・エココンタクト5」を着用)がすんなり路面に張りついて、切り込んだぶんだけ忠実に曲がる。着座位置が高くてもロールが気になることはない。

こういう種類のクルマでは、とかく乗り心地が難点になりがちだが、その点でもSクロスは優等生。硬いのに柔らかいという不思議な境地に達している。細かい凹凸は優しく吸収し、大きな段差などはワッシと踏みつぶす。いつでも姿勢は基本的にフラットだ。ことさら凝ったメカニズムでもないのに、こんな総合的な高水準ぶりを発揮できるのは、ボディー本体の剛性が高いだけでなく、サスペンションを支える各メンバーまで全体を的確に煮詰めてあるからだ。だからブッシュ類をソフトにして衝撃を吸収しても、全体のソリッド感が保たれる。

 
スズキSX4 Sクロス(4WD/CVT)【試乗記】の画像 拡大
トランスミッションは、副変速機付きのCVTのみ。シフトレバーのそば(写真ではレバーの下)には、走行モードの選択スイッチが置かれる。
トランスミッションは、副変速機付きのCVTのみ。シフトレバーのそば(写真ではレバーの下)には、走行モードの選択スイッチが置かれる。 拡大
切削加工とブラック塗装が施された17インチのアルミホイール。標準で与えられる。
切削加工とブラック塗装が施された17インチのアルミホイール。標準で与えられる。 拡大
 
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どこか欧州車の風合いも

これらを総合すると、長時間の高速クルージングも得意ならワインディングロードでも安心感たっぷり。もちろん悪路も涼しい顔で踏み越える。諸元表での最低地上高は165mmにすぎないが、実際の床下はもっと高くて平らだから、よほどのオフロードでなければ走れない場所はなさそう。
アプローチアングルとデパーチャーアングルも大きい。少なくとも、クルマの限界に達する前に、乗り手の心理的な限界が訪れてしまうはずだから心配ない………と、ここまでは4WDの検証だが、SクロスにはFF仕様もある。エンジンも変速機も4WDと共通で重量が1140kgと70kg軽いぶん、燃費(JC08モード)が4WDの17.2km/リッターより18.2km/リッターと伸びるほか、価格も204万1200円と4WDより21万6000円も安い。どうしても4WDに固執するのでなければ、日常生活の相棒として気軽に乗り回すために、真剣に検討する価値はある。運転中の視点が高く周囲を見回しやすいから、座高の低い女性ユーザーにも喜ばれるはずだ。

ちゃらちゃら余分な装飾にこだわらず、こうして基本をしっかり押さえたSクロスには、どこかドイツ的な風合いも感じられる。そういえば2006年から2014年まで、地味な存在感ながら熱心なマニアに支持されたSX4もそうだった。同じく「スイフト」のプラットフォームを応用した傑作小型車「スプラッシュ」もそうだった。SX4はフィアットと、スプラッシュはオペルと共同開発し、その主導権はスズキが握っていた。そのうえでSX4は「フィアット・セディチ」として、スプラッシュは「オペル・アギーラ」としても販売された。そして今度のSX4 Sクロスもハンガリーにある子会社マジャール・スズキ社で製造される。やはり生まれと育ちの環境が、どこかクルマに息づいているのだろう。だとすればスズキは、最もヨーロッパの空気を深く吸った日本メーカーなのかもしれない。

(文=熊倉重春/写真=荒川正幸)

サイドビュー。シャープなキャラクターラインとSUVらしいフェンダーアーチモールが特徴とされている。
サイドビュー。シャープなキャラクターラインとSUVらしいフェンダーアーチモールが特徴とされている。 拡大
4WD車の前席には、2段階温度調節機能付きのシートヒーターが備わる。
4WD車の前席には、2段階温度調節機能付きのシートヒーターが備わる。 拡大
「SX4 Sクロス」のCVTは、7段のマニュアルモード付き。ステアリングホイールには、変速用のパドルシフトが備わる。
「SX4 Sクロス」のCVTは、7段のマニュアルモード付き。ステアリングホイールには、変速用のパドルシフトが備わる。 拡大
「堂々としていてダイナミック」とアピールされる「SX4 Sクロス」のフロントまわり。ディスチャージ式ヘッドランプとLED式のポジションランプを装備する。
「堂々としていてダイナミック」とアピールされる「SX4 Sクロス」のフロントまわり。ディスチャージ式ヘッドランプとLED式のポジションランプを装備する。 拡大
 
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テスト車のデータ

スズキSX4 Sクロス

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4300×1765×1575mm
ホイールベース:2600mm
車重:1210kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:117ps(86kW)/6000rpm
最大トルク:15.4kgm(151Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)205/50R17 89V/(後)205/50R17 89V(コンチネンタル・コンチエココンタクト5)
燃費:17.2km/リッター(JC08モード)
価格:225万7200円/テスト車=243万8802円
オプション装備:カーナビゲーションシステム(14万778円)/フロアマット(2万412円)/ETC車載器(2万412円)※いずれも販売店オプション

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:4206km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:104km
使用燃料:10.1リッター
参考燃費:10.3km/リッター(満タン法)/11.3km/リッター(車載燃費計計測値)

スズキSX4 Sクロス
スズキSX4 Sクロス 拡大
エンジンは、ピストンリンクの張力低減やコンロッドの軽量化、さらにクランクシャフトの細軸化を進め、アウトプットと優れた燃費性能の両立を図ったという。
エンジンは、ピストンリンクの張力低減やコンロッドの軽量化、さらにクランクシャフトの細軸化を進め、アウトプットと優れた燃費性能の両立を図ったという。 拡大
センターコンソール部の走行モード選択スイッチ。ダイヤルおよびボタンの操作で、走行特性を変えられる。メニューは、オート/スポーツ/スノー/ロックの4種類。
センターコンソール部の走行モード選択スイッチ。ダイヤルおよびボタンの操作で、走行特性を変えられる。メニューは、オート/スポーツ/スノー/ロックの4種類。 拡大
 
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