第101回:ホンダS660 α(後編)

2015.05.22 水野和敏的視点

「個性」と「独りよがり」は違う

前回に続き、今回も「ホンダS660」を取り上げます。軽自動車の規格の中で、上手にミドシップスポーツにまとめたS660ですが、細かく見ていくと「どうして?」と思わせる部分も少なくありません。

まず気になるのが乗降性の悪さ。どういうわけかインストゥルメントパネルの右端が下方に突き出しており、ドアを開けて乗り込もうとすると邪魔になるのです。そこにはドアミラーの調整スイッチが配置されているのですが、なぜドアの開口部を狭めてまで、ミラーの調整機能を優遇する必要があるのでしょうか?

さらに悪いことに、ドアの下部ではスピーカーを収めたプラスチックのケースが異様なまでに突出しています。また車体のフロントピラーとシルが接合する角部のコーナーRが異常なほど大きく、ドア前端部の“足元通過スペース”を狭めてしまっています。そのせいで、S660の低いシートにインパネの出っ張りを気にしつつ体を滑り込ませると、必ずといっていいほど靴の先でスピーカーの格子を擦ってしまうのです。

すでにこの試乗車でも、ドアのスピーカー部と、そこから連続するアームレストの下端部には、靴によるものと思われる多数の擦り傷が付いており、広い範囲で黒いプラスチック部品が傷とともに白化していました。

日本でスポーツカーというと、「若者のモノ」というイメージがあります。もちろん若い人たちにも大いに乗ってもらいたいのですが、実際には年配の人たちが趣味として楽しむことも多いのです。

S660はスポーツカーですから、着座位置が低いのは当たり前。でも、だからこそ乗降性にはより一層、配慮しなければなりません。特に2ドア車ではドアが前後に長くなりますから、スーパーマーケットの駐車場など狭い場所では半分程度しか開けられないなんてことも多いはずです。テストコースの広い駐車場とは事情が違うのです。

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