ホンダ・ステップワゴンG・EX(FF/CVT)
個性の光るミニバン 2015.07.08 試乗記 最新型の「ステップワゴン」に試乗。5代目となったホンダの“5ナンバーミニバン”は、どんな仕上がりを見せるのか? 実際の使い勝手や走りの質を、装備充実のグレードでチェックした。ドアだけでも感心
2015年4月24日に発表された、ホンダの新型ステップワゴンが売れている。5月末までの受注台数は1万5000台と、5000台/月という販売目標の約3倍。新車効果によるスタートダッシュであることは考慮しなければならないけれど、好調であることは間違いない。
人気の理由を探るべく、「ステップワゴンG・EX」というグレードを借り出した。
エンジンをスタートする前に、新型ステップワゴンのウリである「わくわくゲート」を試してみる。このテールゲートは、上方向にガバッと開くだけでなく、左側の約6割が横方向にも開くのだ。
試してみると、確かに便利。大きなテールゲートを上方向に完全に開けるには、車体後方に約1200mmのスペースが必要だ。一方、横方向に開くのであれば、後方のスペースは760mmほどで足りる。だから後ろに壁が迫る駐車場でテールゲートが開かなくて四苦八苦、なんていう心配がない。
ちなみに、荷室床面は地上から50cmにも満たない低さで、したがってテールゲートを開けて後方から乗り降りするのも容易だ。状況によっては、左右のスライドドアから乗り降りするより安全なケースもあるだろう。
この横開きの“サブドア”は、安全確保のために停車時にしか開閉できない仕組みになっている。
インテリアにも進化のあと
「わくわくゲート」を開け閉めして、ああだこうだと試しながら、わが家に観音開きの冷蔵庫がやって来た日のことを思い出す。「めっちゃ便利!」「革命的!!」「大発明!!!」と大騒ぎしたのは最初の2、3日だけで、すぐに観音開きが当たり前になってしまった。
おそらく「わくわくゲート」にもすぐ慣れて、2、3年たったらいろんなミニバンに採用されているのだろう。
冷蔵庫の観音開き/両開きや電子レンジのターンテーブル、あるいはコードレス掃除機など、便利な発明はすぐにあって当たり前の存在になってしまう。かっちょいいデザインをした人は後年まで名前が残るのに、便利な発明をした人はあっという間に忘れ去られてしまってかわいそうだ。
だから、ここには記しておきたい。「わくわくゲート」は偉大な発明です、と。
便利な発明といえばもうひとつ、地味ながら床下格納式の3列目シートも進化している。左右を分割して床下に格納できるのだ。しかもシートバックに付いているストラップを軽く引っ張るだけで格納できるという簡単操作。これなら気軽に3列目シートを出したりしまったりできそうだ。
3列目シートに座ってみると、足元のスペースが先代モデルよりはるかに広いことに気づく。ただし、後に編集部のSさんに運転してもらって3列目の快適性をチェックした時に、そのからくりがわかった。3列目シートは座面が短いので、足元が広く感じるのだ。座面が短い3列目シートは太ももをサポートしてくれないので、加減速やカーブが続くと体を支えるのが大変だ。やはり3列目シートは短距離かお子さん向きだと思われる。
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悩める2列目シート
2列目シートは、左右が独立したキャプテンシートが標準となり、3人掛けのベンチシートはオプションとなった。したがって、7人定員が標準で、8人定員がオプションとなる。
2列目シートは前後に大きくスライドし、頭上空間にも余裕があるため、広々感がある。また、3列目シートと違ってシートのサイズもたっぷりとられているから、快適だ。
キャプテンシートは、車内のウオークスルーが可能。また、2列目シートを一番前のポジションまでスライドして助手席に近づけ、3列目シートを格納すれば、自転車をそのまま載せることができる。
いざという時のための8人乗りを選ぶか、機能的な7人乗りを選ぶかの選択が迫られる。
ステップワゴンは、新型となっても5ナンバーサイズを維持。ホイールベースを35mm延ばし、反対にエンジンルームを40mm縮めたことで、このゆとりある空間を捻出した。
とはいえ自動車税がエンジン排気量で決まるいま、5ナンバー枠に収まるかどうかはユーザーにとってどうでもいい話のようで、新型ステップワゴンの販売台数の約7割が、全長がはみ出して3ナンバーとなる「スパーダ」だという。
と、ここまで書いて、ようやく運転席にたどり着く。
気持ちヨシ、燃費ヨシ
運転席からの眺めは、先代から大きく変わった。速度やエンジン回転数、燃料計などはダッシュボード上部のスペースに表示される。よって、ステアリングホイールの円周内に情報を見るのではなく、ステアリングホイールの上から見ることになる。
全体に機能的ですっきりしたデザインは、モダンで好感が持てる。ディテールは凝っているのにパッと見はシンプルな印象を与えるあたり、デザイナーはいい仕事をしている。
収納スペースは豊富で、前席だけでも大型ティッシュボックスが収まるグローブボックスのほかに運転席と助手席にアッパーボックスが備わり、グローブボックスの上にはオープントレーまで用意されている。至れり尽くせりというか、最近忘れっぽいのでどこにスマホを入れたのか忘れてしまいそうだ。
ここで、「わくわくゲート」に並ぶ目玉である、ダウンサイジングした1.5リッターの直噴ターボエンジンを始動する。
発進加速は、タイヤのひと転がり、ふた転がりのあたりにセンの細さを感じさせるけれど、一度動き出せば問題ない。常においしい回転域をキープするCVTとのマッチングも上々で、気持ちよく走る。特にエコドライブを意識したわけではないけれど、128km余りを走ってから満タン法で燃費を測ると16.1km/リッター。なかなかやるじゃないか。
しかし、パワートレイン以上に感心したのが操縦性。ステアリングホイール中立付近の手応えが曖昧なのは残念だけれど、この車高なのに気分よく曲がってくれる。
背の高さというハンディを感じさせず、角の取れたまあるい乗り心地と素直なハンドリングを両立しているあたり、何かに似ていると思った。そうだ、このテイストは、トヨタの「アルファード」に似ている。
ドメスティックなミニバンなのに演歌っぽくもマイルドヤンキーっぽくもないデザイン、このクラスのミニバン初となるダウンサイジングエンジンと「わくわくゲート」といった新機軸。そしてさわやかな操縦性。同クラスのライバルと比較しても、はっきりと光る個性がある。
(文=サトータケシ/写真=三浦孝明)
テスト車のデータ
ホンダ・ステップワゴンG・EX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1695×1840mm
ホイールベース:2890mm
車重:1670kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:150ps(110kW)/5500rpm
最大トルク:20.7kgm(203Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)205/60R16 92H/(後)205/60R16 92H(ブリヂストン・トランザER33)
燃費:16.2km/リッター(JC08モード)
価格:258万8000円/テスト車=324万1400円
オプション装備:Hondaインターナビ+リンクアップフリー ETC(22万6800円)/マルチビューカメラ&リアエンターテインメントシステムパッケージ(10万8000円)/リア右側パワースライドドア&LEDヘッドライトパッケージ(9万7200円)/コンビシート<プライムスムース&ファブリック>(2万1600円)/1列目サイド&サイドカーテンエアバッグシステム+Honda SENSING(14万5800円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット(5万4000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:2357km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(9)/山岳路(0)
テスト距離:128.4km
使用燃料:8.0リッター
参考燃費:16.1km/リッター(満タン法)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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