三菱アウトランダーPHEV Gプレミアムパッケージ(4WD)
復活のきっかけとなるか 2015.08.20 試乗記 大規模な改良を受けて実力を上げた「三菱アウトランダーPHEV」に試乗。フロントデザインが改められただけでなく、乗り心地や操縦安定性も磨かれたという新型の走りやいかに?今や三菱の主力モデル
とうとう「ランサー エボリューション」の生産中止が決まった。三菱ワークスチームがWRC(世界ラリー選手権)から撤退したのはもう10年も前のことで、その頃既に三菱はリコールの不祥事で存続の危機に立たされていたから、いつかはそういう時が来るだろうとは覚悟はしていたのだが、実際にそうなると、ランエボ以前の「ギャランVR-4」の時代からWRCを取材していた私にとってはいささかの感慨なしとしない。ひとことでは言えないが、あの時代が本当に終わったんだなあ、としみじみ思う。
もっとも、そんな選択と集中、具体的にはアジアをはじめとした新興市場に活路を見いだす戦略がようやく実を結びつつあり、実際に直近では過去最高益を続けて記録している。ようやく復活の兆しが見えてきたのかもしれない。とはいえ国内では苦戦を強いられている。混迷の過去15年ぐらいの間に三菱の国内販売はざっくり5分の1ぐらいに激減してしまったのだ。三菱自動車の年間生産台数は120万台ほどだが、国内販売台数はざっと12万台にすぎない。そのうち8万台ぐらいは軽自動車なので、登録車と呼ばれる普通乗用車は4万台程度ということになる。大幅な改良を受けた新型アウトランダーの月販目標台数はガソリン、PHEV合わせて1200台。要するに、アウトランダーは技術的なイメージリーダーとしてだけでなく、販売面においても「デリカ」と並ぶ最重要モデルということになる。ちなみに、2リッターのFWD(前輪駆動)と2.4リッターの4WDで計6車種あるガソリンモデルの月販目標は200台、それに対してPHEVはすべて4WDモデルで同1000台と発表されているから、明らかにメインはPHEVのほうである。
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新しいのに、懐かしい?
アウトランダーが2代目に生まれ変わったのは2012年末。その際にPHEV(2013年1月発売)が追加されたが、それからあまり期間を置かないで大幅改良を行ったのは、「欧州製プレミアムモデルからの乗り換えユーザーの期待に応えるため」というのが発表会で説明された理由である。もちろん、クリーンディーゼルエンジンを積んだマツダのSUVなどが登場する中で、テコ入れが必要だったとも想像される。
「ダイナミックシールド」と称するグワッと大きく口を開けたアグレッシブでキラキラのグリルを持つ新型は、確かに今風のSUVに変身したように見える。が、近づいて全体を見回せば、顔つき以外はそうでもない。全体形は四角いのだ。実はボディー側面などは絞り込みがほとんどないスクエアなボディー形状である。今時のSUVはウエストラインから上のグリーンハウス部分がギュッと絞り込まれており、それに伴ってAピラーだけでなくテールゲートも大きく角度がついていることが多い。そのせいで室内に乗ると意外に窮屈で、視界も遮られる例が多いのだが、アウトランダーは違う。室内も実際のサイズ以上に広々と感じる。“クーペライク”なスタイルなどを主張するはやりのSUVとは異なり、昔ながらのクロカン4WDの質実剛健さを感じさせて、何だか安心できるというか、かえって新鮮な感じもする。古くさいオヤジ世代の感傷にすぎないのかもしれないが、何から何まで流麗である必要はない。以前に取材した経験でも、四角い車がいいという若い女性の声は少なくないのだ。
ガソリン車より明らかに上質なPHEV
ルーミーで使いやすそうな室内は、失礼ながら目新しい印象はない。むしろそれが懐かしい安心感につながっているともいえるが、欧州製プレミアムとはだいぶ方向性も装備レベルも違うようだ。もちろん、従来型に比べれば格段に洗練されてはいるのだが、相手は昔の自分ではなく、外にいるのだ。PHEVモデルは、上質に見せるためにあらゆる部分に手を入れたことがうかがえるものの、インストゥルメントパネルの基本的な形は従来型と大差ないし、ずいぶんと簡素なカーナビなど、いわゆるインフォテインメントシステムも最新のものとはいえないのが正直なところだ。また、ステアリングホイール上に無数のスイッチが付いているのに、メーターパネル中央に表示される航続距離や平均燃費、エンジンやモーターの作動状況を示すエネルギーフロー・モニターなどにページを切り替えるスイッチは、メーターナセル右側のインストゥルメントパネルに独立して設置されているなど、インターフェイスにはちぐはぐな感じが残る。一気に新しいユニットに切り替えられない悩みが垣間見えるのだ。
アウトランダーのガソリンモデルも同様の改良を受けているとはいうが、実際に乗った感覚では、PHEVは別の車に感じるほど出来が良く、それに比べるとガソリンモデルは明らかに見劣りする。フロアやステアリングホイールなどに伝わってくる緩さが、ひと世代前、もしかすると2世代前レベル。CVTも改良されているらしいが、何か抜きんでて優れているほどではない。現代の標準からすれば平凡なパワートレインである。
いっぽうPHEVはガソリンエンジンの4WDモデルと比べるとおよそ300kgは重いから、それに対応した補強やセッティングの違いは当たり前ではあるが、基本骨格から違うように思えるほど、乗り心地や静粛性、ノイズ、バイブレーション処理など、すべてが洗練されている。しかも、予想以上に軽快に山道を駆け上る。電動パワーステアリングは若干スローだが、車重1880kgのSUVとしては意外なほどグイグイ曲がるし、身軽に加速してくれるのだ。この辺りは、前後同出力(最高出力82ps)のモーターを備え、4輪の駆動力を適切にレスポンスよく制御する三菱自慢のS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)の面目躍如といえるだろう。電動モーターを使ったいわゆるe-4WDは、雪の坂道発進などエマージェンシー用の“ちょっとだけ”4WDがほとんどだが、アウトランダーPHEVはハンドリングやスタビリティー向上にモーターを積極的に活用しているのだ。
伝え方の問題
アウトランダーPHEVのパワートレインは、従来通り118ps(87kW)/4500rpmと19.0kgm(186Nm)/4500rpmを生み出す2リッター4気筒DOHCに前後2基のモーターを組み合わせたもの。変速機は備わらず、ステアリングに付くシフトパドルも実は回生ブレーキの強弱を切り替えるスイッチである。それゆえアウトランダーPHEVは「アコード ハイブリッド」に似たレンジエクステンダー付き電気自動車(EV)に近いといえる。JC08モードでのハイブリッド燃費は20.2km/リッター(「Gプレミアムパッケージ」は20.0km/リッター)、EVとしての走行距離は60.8km(同60.2km)という。この数字は制御の見直しやフリクション低減によってそれぞれ従来型に比べて1.6km/リッターと0.6km向上している。
PHEVだから当然外部給電可能で、搭載しているリチウムイオン電池の電力量は12kWh、これは一般家庭1日分の使用量ぐらいは十分に賄えるレベルという。その特徴をアピールするために考えたのだろうが、カタログには車のバッテリーからの電気を使って贅沢(ぜいたく)なキャンプをする風景が載っている。AC100V(1500Wまで)電源が備わるのは確かに災害時にも役に立つだろうけれど、せっかくの星空の下、家電製品をそのまま持ち込んで、煌々(こうこう)と照明をともしてキャンプをするなんて、ちょっと、何だか、無理めな雰囲気だ。私なら、いまだに熱い三菱ファンのオヤジたちが参戦するヒストリックカーラリーのサービスカーとして、アウトランダーPHEVが活躍するシーンを提案しますね。栄光も挫折も過去は変えられないのだから、それを利用するぐらいの真っすぐな気持ちで明日を考えましょう。
(文=高平高輝/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
三菱アウトランダーPHEV Gプレミアムパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4695×1800×1710mm
ホイールベース:2670mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
最高出力:118ps(87kW)/4500rpm
最大トルク:19.0kgm(186Nm)/4500rpm
モーター最高出力(前):82ps(60kW)
モーター最大トルク(前):14.0kgm(137Nm)
モーター最高出力(後):82ps(60kW)
モーター最大トルク(後): 19.9kgm(195Nm)
タイヤ:(前)225/55R18 98H(後)225/55R18 98H(トーヨーA24)
燃費:20.0km/リッター(ハイブリッド燃料消費率/JC08モード)
価格:459万円/テスト車=468万5196円
オプション装備:有料色(ホワイトパール)(3万2400円) ※以下、販売店装着オプション フロアマット(3万396円)/トノカバー(2万1600円)/ラゲッジマット(1万800円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:2269km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
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