アウディTTロードスター 2.0 TFSIクワトロ(4WD/6AT)/TTSクーペ(4WD/6AT)
カッコいいだけじゃない 2015.09.21 試乗記 アウディのスポーツカー「TT」が、9年ぶりにフルモデルチェンジ。オープン2シーターの「TTロードスター」と高性能モデル「TTSクーペ」を駆って、その実力を確かめた。シェイプアップ&パワーアップ
三浦半島の某所で行われた新型アウディTTの試乗会当日は、あいにくの雨(というより嵐)。会場までの道中、前日に予習した新型TTにまつわる事前情報を脳内でもう一度復習しておく。
まず全長は従来型に比べて10mm短くなった一方で、ホイールベースは40mm延長されている。つまり、前後のオーバーハングがギュッと切り詰められた。ドアパネルやリアゲートをアルミニウムにするなど、軽量化にも取り組んだ。例えば左右ドアとリアゲートをスチールからアルミにすることで17kg、左右2脚のフロントシートで5kgなどなど、絞りに絞った「TTクーペ 2.0 TFSIクワトロ」の車重は1370kg。装備が異なるので単純に比べることはできないけれど、従来型から30kg以上のダイエットに成功した。
といったように、外寸や車重の変化から、従来型より引き締まったアスリートの体形を想像する。
パワートレインは2リッター直噴ターボと6段Sトロニックの組み合わせ。エンジンのチューンは2種類あり、ノーマル仕様は最高出力230ps/4500-6200rpm、最大トルクが37.7kgm/1600-4300rpm。ちなみに従来型の2リッター直噴ターボは、それぞれ211psと35.7kgmだった。
もうひとつ、パワフル仕様のTTSクーペに積まれるエンジンは、286ps/5300-6200rpmと38.8kgm/1800-5200rpmにまで強化されている。
日本におけるTTのラインナップは、以下の通り。TTクーペがFFとクワトロ、TTロードスターがクワトロのみ、TTSクーペもクワトロのみと、計4モデルとなる。
見た目の印象も変わった
と、エンジンのスペックなどをそらんじながら、とはいえアウディTTにとってそうした数値はそれほど重要ではないのではないかと思い直す。なぜなら、アウディTTはスポーツカー界のキムタクであるからだ。
だれもキムタクの歌唱力をEXILEと比べないし、演技力を堺雅人と比較したりしない。キムタクにとって一番大事なことはキムタクであること(=カッコよくあること)であり、演技力や歌唱力みたいなスペックではなく存在感で勝負できるスターなのだ。
同じことがアウディTTにもいえる。「ボクスター」より速いとか「Z4」より曲がるとかは、どうでもいいとはいわないまでも、アウディTTが気になる人にとってはそれほどの重大事ではないのではないか。アウディTTにとって大事なことは、ささいなスペックの違いよりもカッコいいか悪いかだろう。
ということで、新型TTがどんなカッコなのか、胸を躍らせながら会場に到着する。
パッと見た瞬間に新型TTが精悍(せいかん)さを増したように感じる理由はふたつ。ひとつは冒頭に記したように前後のオーバーハングが詰められ、加えてトレッドが10mm広がったことで、ギュッと凝縮した塊が低く構えている印象を与えるから。そしてもうひとつ、ヘッドランプの形がシャープになり、鋭いまなざしとなったから。
また、シングルフレームグリルもより強い印象を与える形状に変わり、これまでシングルフレームのグリル内にあった4つのリングは、ボンネット上に引っ越している。
思わずひざを打つ装備
今回試乗したのは、TTロードスター 2.0 TFSIクワトロとTTSクーペの2台。「せっかくのオープンなのにどしゃ降り……」と意気消沈しながらロードスターに乗り込む。
ここでうわさの、アウディバーチャルコックピットを試す。これは従来メーターパネルがあったところに、12.3インチの大型液晶ディスプレイを配したもの。普通に速度計と回転計を表示することもできるし、スイッチひとつでカーナビ画面を呼び出すこともできる。言ってみれば目の前の眺めがアニメーションになったようなものだから、最初は面食らった。けれど、使い方がわかると少ない視線移動で知りたい情報が手に入るし、インターフェイスも直感でわかる。慣れてくると、どうしていままでこのシステムがなかったのか、と思えるようになった。
もうひとつ、どうしていままでなかったのかと思ったのが、空調の吹き出し口の中心に調整スイッチが備わること。わかりやすいし、スイッチ類やメーター類が場所を奪い合うインパネからスイッチを減らして、すっきり見せることにも成功している。
総じてインテリアは機能的で“新しモノ感”もあり、わくわくさせてくれる。
スポーツカーならではの気持ちよさ
エンジンをスタートして試乗コースへ飛び出す。まず感じるのは、エンジンの気持ちよさだ。低回転域からピックアップがよく、乾いた快音とともに回転数を上げる。4000rpm以上で、回転計の針が上昇するスピードが速まる感じもエキサイティングだ。
「comfort」「auto」「dynamic」「efficiency」「individual」の5つのドライブモードから選択できるアウディドライブセレクトを「dynamic」に設定すると、さらにレスポンスがクイックになり、6段Sトロニックも低いギアをキープするようになる。
ちなみに、アウディマグネティックライドを搭載するアウディTTSはサスペンションの設定も変化するけれど、ノーマルサスペンションのTTロードスターの場合はパワートレインやエアコン、クワトロシステムの設定だけが変化する。
いやぁ、やっぱりスポーツカーって気持ちいいな、と思ったのもつかの間、風雨は激しさを増すばかり。高速道路では前が見えないほどの土砂降りに遭遇するなど、とてもスポーツカーのパフォーマンスを堪能するような状況ではない。
スポーツカーのパフォーマンスは堪能できなかったけれど、クワトロのすごさは思い知らされた。深い水たまりも道路の一部が川になっている区間も、涼しい顔でやり過ごせる。まさに矢のように走る
もうひとつ、結局ほろを開けて走行するチャンスはなかったけれど、ノイズもボディー剛性も、ほろを閉めている限り後で乗ったTTSクーペとまったく遜色がなかった。ロードスターは専用のアルミ鋳造部材でボディーを補強しているとのことだけれど、確かにその効果は感じられた。ボディーがねじれる感じもなければ、がたぴしという低級音が聞こえることもない。
厳しい状況で頼りになる
続いて、TTSクーペに乗り込む。ほかのモデルと同じ2.0 TFSIエンジンを搭載するけれど、ターボの過給圧を上げ、シリンダーヘッド、ピストン、コンロッドに耐久性を上げた専用部品を採用している。結果、ノーマル仕様の230psから286psへと最高出力が引き上げられた。
前述の状況から、230psだろうが286psだろうが、その違いを試せる状況ではない。ただしはっきりわかったことがある。音が全然違うのだ。アイドリング状態から、TTSはドロドロという低音を交えた迫力ある音でドライバーを挑発する。そしてアクセルを戻すと、「バフン!」と派手な音が出る。この音はTTロードスターでも看取したけれど、TTSのほうが明らかに音量がデカい。
演出だよな、とわかっていながら、男というのはダマされてしまう生き物。
もうひとつノーマル仕様と違うのは、アウディマグネティックライドを採用するTTSは、アウディドライブセレクトを操作すると可変ダンパーシステムの制御プログラムも切り替わること。
「comfort」を選べば乗り心地重視に、「dynamic」を選べばハンドリング重視になる。この変化の幅はかなり大きく、クルマの性格を一変させる。ノーマルにするかTTSにするか、もちろんエンジンパワーの違いもあるけれど、可変サスペンションの有無も大きな問題だと感じた。
といった具合に、スポーツカーの試乗としてはイマイチ食い足りないけれど、超ハードな状況で半日ほどクワトロと過ごして、すっかりクワトロ信者になってしまった。大昔のランドローバーの広告に「The “go anywhere” vehicle」というのがあったけれど、アウディTTのクワトロは「The “go-anywhere” sports car」である。
そういえば、キムタクもサーフィンや釣りが得意なアウトドア派。タフな状況で頼りになるところも共通している。
アウディTTはカッコが大事だという思いは変わらないけれど、全天候型万能スポーツカーという、このクラスで突出した個性を持っていることを再確認した。
(文=サトータケシ/写真=三浦孝明)
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テスト車のデータ
アウディTTロードスター 2.0 TFSIクワトロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4180×1830×1360mm
ホイールベース:2505mm
車重:1470kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:230ps(169kW)/4500-6200rpm
最大トルク:37.7kgm(370Nm)/1600-4300rpm
タイヤ:(前)245/40R18 93Y/(後)245/40R18 93Y(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:14.4km/リッター(JC08モード)
価格:605万円/テスト車=648万5000円
オプション装備:オプションカラー<タンゴレッドメタリック>(8万5000円)/アシスタンスパッケージアドバンスト(35万円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1175km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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アウディTTSクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4190×1830×1370mm
ホイールベース:2505mm
車重:1410kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:286ps(210kW)/5300-6200rpm
最大トルク:38.8kgm(380Nm)/1800-5200rpm
タイヤ:(前)245/40R18 93Y/(後)245/40R18 93Y(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:14.9km/リッター(JC08モード)
価格:768万円/テスト車=836万円
オプション装備:オプションカラー<パンサーブラック クリスタルエフェクト>(15万円)/アシスタンスパッケージアドバンスト(35万円)/ファインナッパレザーSロゴ・エクステンデッドレザーパッケージ(18万円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1027km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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