【F1 2016 続報】第4戦ロシアGP「絶好調と悲運の同居」
2016.05.02 自動車ニュース![]() |
2016年5月1日、ロシアのソチ・オートドロームで行われたF1世界選手権第4戦ロシアGP。今季絶好調、メルセデスのニコ・ロズベルグは4連勝を達成。一方で宿敵ルイス・ハミルトンは、またもパワーユニットトラブルに見舞われ2位で涙をのんだ。両者のポイント差は43点。悲願の初タイトルに向けて自信をみなぎらせるロズベルグに対し、3連覇をもくろむハミルトンは肩を落としていた。
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■フェラーリに焦りか?
今季これまでの3戦すべてで勝利し、昨季から数えて6連勝しているメルセデスのニコ・ロズベルグ。宿敵のチームメイト、ルイス・ハミルトンがミスや不運で出遅れたこともあり、3戦で36点ものポイントリードを築き、悲願の初タイトルに向けて好スタートを切っている。
その一方で、ロズベルグとメルセデスの連勝を後押しするかのような3レースを見せたのがフェラーリだった。開幕戦オーストラリアではトップ快走からタイヤ交換の判断ミスでセバスチャン・ベッテル3位、2戦目のバーレーンではベッテルがエンジントラブルでスタートできずキミ・ライコネン2位、そして3戦目の中国ではスタート直後の同士討ちからベッテル2位と、優勝が期待された割に結果がともなわなかった。
中国でのレース後、ベッテルはライコネンに当たってしまったことをチームに平謝りし、またそのきっかけをつくったとしてレッドブルのダニール・クビアトのドライビングを強く責めた。4冠王者のこの振る舞いに、結果を残せていない焦りのようなものを感じ取ることもできた。
2015年秋、ニューヨーク証券取引所に上場を果たしたフェラーリは、サーキットでの成功が至上命令ならぬ「市場命令」となった。ルカ・ディ・モンテゼーモロからフェラーリ会長職を引き継いだ(奪い取った?)セルジオ・マルキオンネの厳しいまなざしが、ベッテルやマウリツィオ・アリバベーネ代表らスクーデリアの一団に向けられているのだ。
4戦目のロシアGPを前に、フェラーリ、そしてメルセデスもパワーユニットをアップデートしてきた。ドイツの巨人と、イタリアから世界の頂点を目指す跳ね馬の攻防戦。速さでは王者メルセデスにまだまだアドバンテージがあるものの、この2大巨頭の真っ向勝負を期待するファンは、イタリアのみならず、また市場関係者に限らず、世界中に数多くいる。ここらで赤いマシンの奮起を期待したいところだったが……。
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■ハミルトンにまたもトラブル、ロズベルグやすやすとポール
2014年、2015年とロシアで連勝しているハミルトン。チャンピオンにとってソチは相性のいいコースだったが、前戦中国GPと同じく、パワーユニット(MGU-H)のトラブルが王者を襲った。
予選Q2でパワーロスを感じたハミルトンは続くQ3に出走できず、10番グリッド。最大のライバルの不在で、ロズベルグがやすやすと2戦連続、通算24回目のポールポジションを獲得した。
ポールから0.706秒遅れての2番手はベッテルだったが、ギアボックス交換で5グリッドダウン、7番グリッドとこちらもハンディを負うことに。代わってバルテリ・ボッタスがフロントローに並び、3位ライコネンを挟んでフェリッペ・マッサが4位と好調ウィリアムズ勢が上位につけた。
レッドブルはダニエル・リカルド5位、地元の声援を受けるクビアトは8位とやや低迷。フォースインディアのセルジオ・ペレス6位、そしてトロロッソのマックス・フェルスタッペンは9位からレースに臨んだ。
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■ベッテル、追突され早々にリタイア
スタートに関わるレギュレーションが変わった今年、オープニングラップでは必ずと言っていいほど波乱が起きていた。ロシアも例外ではなく、スタート直後の実質的な最初のコーナーであるターン2と、続くターン3で、ベッテルにクビアトが追突。フェラーリはコース外にはじき出され早々に戦列を去った。
セーフティーカーランの後、53周レースの4周目に再スタートが切られると、先頭はロズベルグ、2位に上がっていたライコネンにボッタスが襲いかかりウィリアムズが2位を奪還、3位に落ちたライコネンの後ろには4位ハミルトンがつけていた。ハミルトンの進撃は続き、7周目にはライコネンをオーバーテイク、早くも3位表彰台圏まで駒を進めた。
前方がクリアなトップのロズベルグは逃げにかかり、2位ボッタスとのギャップは13周もすると10秒以上に。ボッタス以下、ハミルトン、ライコネンが僅差で数珠つなぎとなるも、しばし順位変動はなかった。
隊列が崩れたのは17周目。2位ボッタスがピットに飛び込み、タイヤをスーパーソフトからソフトに履き替えた。翌周ハミルトンがその動きに倣い、ボッタスの後ろで復帰するも、19周目のストレートエンドでハミルトンがオーバーテイクを決めてみせた。
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■4連勝で上機嫌のロズベルグに対し、ハミルトンは……
ライコネンは21周目までタイヤ交換を引っ張り、ボッタスをオーバーカットすることに成功、表彰台の一角を手繰り寄せた。そして次のラップで首位ロズベルグがピットインすると、レース折り返し地点を前にして、ロズベルグ1位、ハミルトン2位、ライコネン3位、ボッタス4位という位置関係になった。ソチはタイヤのデグラデーション(摩耗による性能劣化)の心配がいらないコースゆえに、多くが1ストップで走り切り、上位陣もこのままの順位でゴールを迎えることとなった。
それでも2位ハミルトンは好タイムを記録し続け、ロズベルグとの間にあった12秒のギャップを7秒にまで縮めたのだが、ピットから「マシンの水圧に問題がある」と無線が飛んだことで間隔は再び広がり始めた。その後水圧は落ち着きを見せたのだが、ハミルトンにとってはここでの無得点は何としても避けたいところだった。
最終的にロズベルグはハミルトンに25秒もの大差をつけ、トップでチェッカードフラッグを受けた。
表彰台で上機嫌に振る舞うのは開幕から4連勝を達成したロズベルグ。2位まで挽回したチームメイトをたたえるほどの余裕を見せた。一方のハミルトンは、これまでチームメイトの連勝に王者らしくクールに対応していたが、度重なるトラブルにさすがに参った様子で肩を落としていた。
絶好調と悲運が同居するメルセデスに、なかなか帳尻が合わないフェラーリ。戦況はロズベルグ一人勝ちの様相を呈してきたが、史上最多21レースの2016年シーズンはまだ17レースも残っているのである。次戦からはF1のホーム、ヨーロッパラウンドが開幕。第5戦スペインGP決勝は5月15日に行われる。
(文=bg)