トヨタ・プレミオ1.5F(FF/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・プレミオ1.5F(FF/CVT) 2007.07.17 試乗記 ……208万50円総合評価……★★★★
フルモデルチェンジした2代目「プレミオ/アリオン」。スポーティなアリオンに対して、上品さをウリにするプレミオの1.5リッターモデルに試乗した。
地味で皮肉な
“BC戦争”といわれた「日産ブルーバード」vs「トヨタ・コロナ」の華やかな戦いは、いまや昔。21世紀初頭には、「日産シルフィ」vs「トヨタ・プレミオ/アリオン」として、ひっそり販売競争を繰り広げる。
興隆するミニバン勢力に対抗するため、スタイリングには目をつぶって室内空間で勝負した「トヨタ・ビスタ」の失敗を活かして(?)、はたまたセールス側が分類に苦慮する「トヨタ・オーパ」の空振りをも考慮して(??)、純粋にセダンなカタチを維持しつつ、リアシートのアレンジで四角いピープルムーバーに挑んだのが、初代「プレミオ/アリオン」。使いやすい“5ナンバーサイズ”といった経験則を捨てなかったところが、いかにも商売上手な“横綱”トヨタである。
6年半ぶりのモデルチェンジとなった2代目は、縮小続くセダン市場で健闘した先代の特徴を継承しつつ内外装をリフレッシュ。“育ちすぎたカローラ”といったビッグキャビン・スタイルを採り、フェイスとテール部分を工夫してプレミオとアリオンの差異化を進め、マーケット拡大へ色気を見せる。カリーナ改めアリオンが心身“若め”層、テスト車のコロナの後継プレミオは、保守層担当だ。
ドアを開けて運転席に座れば、インテリアが小洒落ているのが、意外。硬めのシートが、また意外。高めの視点は旧型そのままなれど、走り始めればやはり硬めの乗り心地が、3たび意外!?
アメリカ車に憧れた時代はコロナとともに過ぎ去り、プレミオのカタログからもコロナの名が消えた。国内専用車種だけれどヨーロピアンなフレイバーをふりかけられた2代目プレミオは、グローバルな世界でもやはりドメスティックなモデルが使いやすいと再確認させる、地味で皮肉な存在である。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2007年6月4日に発売された2代目プレミオ/アリオン。初代のデビューは2001年12月だから、6年半ぶりのフルモデルチェンジとなる。
コロナ/カリーナの後継モデルとして登場した両者だが、どちらからも“昔の名前”が落とされ、サブネームが名実ともに車名となった。保守的な顧客層に配慮した、石橋を叩いたモデル移行である。
2代目も、これまで通り「5ナンバーサイズのセダン」というドメスティックな要求を満たした国内専用モデル。先代のシャシーを継承しつつ、新しい内外装が与えられた。オーソドクスな「プレミオ」、やや若やいだ「アリオン」といった違いを旧型以上に明確にした外観をもつ。ただし、内装、機関面は共通。
1.5もしくは1.8の4気筒にCVTを組み合わせる。FFを基本に、後者には4WDも用意される。追って2リッターエンジンがラインナップされる予定だ。
(グレード概要)
プレミオのグレード構成は、1.5F(FF)1.8X(FF/4WD)。テスト車1.5Fの“素”のグレードに加え、オーディオ類を充実し、「カラーバックモニター」「オプティトロンメーター」「ラグジュアリー・シート表皮」を標準で装備する「Lパッケージ」が用意される。1.8には、さらに豪華な「EXパッケージ」あり。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
インテリア重視を打ち出した日産の影響だろうか。トヨタらしく、あくまでやりすぎずオシャレにした室内。ドアグリップにデザインの遊びが見られるが、ごくまっとうにまとめられたインパネまわり。ダッシュ、ドアトリム、フロアコンソールに使われるテスト車の「ミディアムブラウン」のパネルは、すぐに木目“調”とわかるものの、落ちついた質感で、なかなか洒落ている。“ちょっと古い”イタリア車ファンは、「ランチア・デドラ」のアフリカンローズウッドを思い出すかもしれない。
ステアリングホイールの向こうには、大きな速度計と回転計が見やすく並ぶ。ナビゲーションシステムの6.5型ディスプレイは年輩の方が使うには小さく感じるが、操作面で一見でも迷わず使えるのがいい。
(前席)……★★★★
“トヨタの中堅セダン”という先入観からは、意外なほど硬めでしっかりしたシート。運転席には、レバー式のシートリフターが装備される。シート地は薄く柔らかいベロア調。ソフトなドアトリムと併せ、やさしい感じだ。これまた“ちょっと古い”フランス車ファンは、ベーシックなルノーの内装を思い出すかもしれない。“素”のグレードの品のよさ。
初代プレミオのデビュー時には、ヘッドレストを外して背もたれを寝かすと、リアシート座面とつながるいわゆる“フルフラット”状態になることがアピールされた。2代目も、この機能は引き継がれた。
(後席)……★★★★
リクライニングできるリアシートが、ウリのひとつであるプレミオ/アリオン。その機能を除いても、実用セダンのお手本のような後席空間だ。足もとは広く、頭上空間にも余裕がある。シートの高さ、背もたれの角度とも自然。日射を遮るルーフも、しっかり後ろまでのびる。
ちゃんと引き出して使わないと肩にあたるヘッドレスト、中央席にも3点式シートベルト装備、チャイルドシートを後ろから固定するテザーストリップ、もちろんISOFIX対応と、業界のリーダーらしい安全装備の充実ぶり。
……と褒めておいてナンだが、リクライニング時の衝突安全性が、やや不安。次のステップはシートベルトリマインダーか(ベルトをしないと警告音を発する)。
なお、バックレストのリクライニングを実現する「荷室−キャビン」の仕切り「パッケージトレイ」にきっちり“カイゼン”が施された。取り付け部分が可動式になり、取り外す必要がなくなった。(参考:過去の試乗記)
(荷室)……★★★
実用セダンながら、ヒンジにカバーが付けられ、荷物の出し入れ時の見てくれに配慮される。あっけらかんと広い。491リッター(VDA法)の容量を確保し、ゴルフバッグ(9インチフルセット)を4セット収納可能だという。
リアシートは、6:4のダブルフォールディング式なので、必要ならラゲッジルームをさらに拡大することもできる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
テスト車は、1.5リッター“NZ”エンジン。可変バルブタイミング機構「VVT-i」を搭載し、110ps/6000rpmの最高出力と14.3kgm/4400rpmの最大トルクを発生する。CVTは、従来以上にエンジン回転数と車速の変化を乖離させないセッティングが施され、通常の走行なら一般的なトルコン式ATと変わりないフィールを得られる。静かな夜のドライブ時に耳を澄ませば、かすかに「ヒーン」というベルト音が聞こえ、停車寸前にロックアップが解除されるためか空走感が気になることもあったが、いずれも些細なことである。
あいにく「恰幅のいい男性4人乗車でゴルフバック4セット搭載」という典型的な使用方法はテストできなかった。しかし、2名乗車と撮影機材を満載して走ったところ、1.5+CVTという控えめな機関ながら、動力性能にまったく不満を感じなかった。なんら言い訳を必要としない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
実用面で過不足ないが、楽しみもないのが、プレミオの運転感覚。開発にあたり、いちばん割り切られた部分かもしれない。情報をあえて遮断したかの軽いステアリング。街なかでは硬めなのに、妙に左右にゆらゆらする乗り心地。突起を乗り越えるときの“生”な突き上げ。40-60km/h付近で、顔の前に充満するかのこもり音。しかし5分も乗っていれば感覚疲労を起こして、「運転していること」をも忘れてしまう。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:webCGアオキ
テスト日:2007年6月21日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:1053km
タイヤ:(前)185/70R14 88S(後)同じ(いずれも、DUNLOP SP10)
オプション装備:HDDナビゲーションシステム+音声ガイダンス機能付カラーバックガイドモニター+NAVI・AI-SHIFT(31万1850円)/ETCユニット(1万4700円)
走行状態:市街地(2):高速道路(8)
テスト距離:215.4km
使用燃料:16.01リッター
参考燃費:13.45km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
NEW
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
NEW
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。





























