トヨタ・プレミオ/アリオンの「ライバル車はコレ」【ライバル車はコレ】
3ボックス対決 2002.04.23 試乗記 トヨタ・プレミオ/アリオンの「ライバル車はコレ」 「セダンが不調」と言われて久しい平成不況まっただなかのニッポン。従来以上の“お徳感”を出そうと、トヨタが市場に投入したのが、ワゴンやミニバン並みのシートアレンジを誇るプレミオ/アリオン。自動車ジャーナリストの河村康彦が、ライバルを挙げる。トヨタ・プレミオ/アリオン(1.8リッター=176.0-216.0万円)
コロナプレミオ改め「プレミオ」、カリーナ改め「アリオン」となった、トヨタの最新FF(前輪駆動)ファミリーセダン。見た目ソックリな姉妹だが、エンジンフードやフロントフェンダー、トランクリッドやリアドアなど、実はかなりのボディパネルをそれぞれの“専用デザイン”としている。トヨタによれば、「プレステージ性を追求した落ち着きある造形」がプレミオで、「スポーティさを追及したダイナミックで若々しい造形」がアリオンだそう。でも、言われないとわからないのが、ちょっと寂しい……。
ボディ骨格からみれば、「フロント部分がカローラで、リアセクションはオーパのそれに近い」というこのクルマたち、サイズは、全長/全幅はかつてのコロナプレミオ/カリーナとほとんど変わらないものの、全高が1470mmと60mmも高くなっているのが特徴。トヨタのニューファミリーセダンは、ルーフの高さと、一気に120mmも延長されたホイールベースで、広いキャビンを形成したというわけだ。ちなみにタンデムディスタンス(前後シート間のヒップポイントの長さ)は950mmと、全長の長いビスタやマークIIのそれを大きく凌いでいる。
【ライバル車その1】トヨタ・カローラ(1.8リッター=174.8-214.8万円)
■これ以上、何を?
プレミオ/アリオンは、リアシートに秘密がある。シートクッションが座面前端を軸に起き上がったうえで、そこにシートバックが倒れ込むという欧州ワゴンばりのいわゆる「ダブルフォールディング」機能を備える。さらにこのリアシートはリクライニングすることも可能で、3ボックスセダンをして「ステーションワゴン並みのユーティリティ性を実現した」というのが、トヨタのセールストーク。そこまでやるなら「ハッチバックにすれば良いのに」という気がしないではないが、確かに後席のスペース的な余裕は、特筆すべき水準にある。けれども……。
ぼくには、どうもプレミオ/アリオンが“ちょっと大きなカローラ”と思えてならない。なぜなら、「ホイールベースを延長し」「車高を上げる」という、まったく同じパッケージングコンセプトで居住空間を拡大したのが現行カローラだからだ。そして、すでに必要にして十分なスペースを実現させている。室内は広いしトランクも大きい。これ以上“普通のセダン”に何を求めればいいのか? 先発のカローラと比較して、より多彩なシートアレンジを誇るプレミオ/アリオンだが、セダンとしての本質的な使い勝手や乗り心地、静粛性に大きな差があるわけではない。「ならばもうカローラで十分じゃないか!」と、ぼくなどは感じてしまうのだが……。
【ライバル車その2】日産ブルーバードシルフィ(1.8リッター=176.4-194.8万円)
■「とりあえず」のクルマ
「コロナ vs ブルーバード」という古典的な(?)ライバル関係を持ち出せば、プレミオ/アリオンと直接比較されるのが「ブルーバードシルフィ」。「見た目の質感」にも「走りの実力」にもコレといった不満はないのだが、「見ても乗っても3日で忘れてしまう」という点で、プレミオ/アリオンと共通するものがある。
シルフィの開発コンセプトが「50代のお父さんのためのクルマ」であったと説明された時、ぼくは思わず開発のチーフに「そんなクルマ、本当につくりたくてつくったんですか?」と不躾な質問を投げてしまった。日産の読みは「40代後半から50代のいわゆる団塊世代は、日本の人口比率の最多数を占める。だから確実な需要が見込める」ということだが、それを耳にして「そんなことだから日産はダメなんだ!」と、今度は心の中でつぶやいてしまった。ドン底状態にあるメーカーが、さらに“守り”の態勢に入ってどうする。それよりも「いかに提案型のクルマをヒットさせるかが日産の課題だろう」と思ったからだ。
幸か不幸か、ブルーバードシルフィはそれなりの売れ行きを示している。しかし、このクルマを買った人は「それが日産車であるから」ではなく、「とりあえずこんなクルマがあればよかった」という理由によって選んでいるのではないだろうか。ぼくには、様々な種類のモデルを提案したうえで、プレミオ/アリオンという“シルフィのライバル車”をリリースしたトヨタのやり方は理解できても、日産らしい提案を示してくれないうちに守りに入ったシルフィにエールは送れない。“史上最高益”の文字で新聞紙上を賑わす日産だが、ブルーバードシルフィを見るかぎり、まだまだ「明るい未来」は遠いと思う。
(文=河村康彦/2002年3月)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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