プジョー308 GT BlueHDi(FF/6AT)/308SWアリュールBlueHDi(FF/6AT)
これぞ本場の実力 2016.08.12 試乗記 プジョーのクリーンディーゼルエンジン、BlueHDiを搭載する「308」シリーズに試乗した。いよいよ上陸した“本場”のディーゼルの走りやいかに?1.6と2.0の2本立て
「待ちに待っていた」――そんなフレーズで歓迎をしたくなる、フランス発のモデルがやって来た。最新の排ガス対策システムと、高圧直接噴射装置を採用することを意味する「BlueHDi」の記号が与えられたディーゼルエンジンを搭載するプジョーとシトロエン車が、日本で正式発売されたのだ。
プジョーの「308」と「508」、シトロエンの「C4」とDSブランドの「DS 4」と、4つの車種にいずれも6段ATとの組み合わせで搭載されるのは、2タイプの4気筒ディーゼルエンジン。どちらも可変ジオメトリーターボを備え、2リッターユニットが180ps/400Nm、1.6リッターユニットが120ps/300Nmの最高出力/最大トルクを発生する。
排ガスのダーティーさを筆頭にネガティブ面ばかりがクローズアップされ、一時は完全に“死に絶えた”かにも思えた日本のディーゼル乗用車マーケット。それを今の時代へと復権させたのが、いち早く日本の基準への適合を図ったメルセデス・ベンツやBMW、さらにはそれら高額な輸入車勢よりもリーズナブルな価格によって、一気に普及を加速させたマツダの作品群であるのはご存じの通り。
けれども、古くからディーゼル乗用車がポピュラーな存在だった欧州の中にあっても、特に普及率の高かった市場であるフランス発のモデルは、少ない販売台数や日本の基準適合に必要な手間やコストなどの問題から、これまでなかなか参入が果たせなかった。
言うなれば、そんな“本場モノ”の作品であるからこそ、冒頭で述べたようにようやく実現となった日本への上陸を、「熱烈歓迎」したくなるというわけだ。
圧倒的な低速トルク
まずテストドライブを行ったのは、フォグライトの有無やシート地の違いなど、ごく一部を除いては同等装備を備えるものの、ガソリンターボエンジンを搭載する既存の「GTライン」との区別のため、あえてよりシンプルな「GT」グレードを名乗る、2リッターBlueHDiユニット搭載の308のハッチバックモデル。ちなみに、ディーゼルエンジン搭載モデルであることを外観から知るには、ハッチゲートに備わるBlueHDiのエンブレムが唯一の識別点となる。
自分好みの位置を選択しようとすると、メーター類はステアリングホイールのリム背後に隠れ、タコメーターの指針は右から左へと回転……という、現行308シリーズならではの“好ましからぬ唯我独尊”にちょっとイラつきつつ、何とかごまかしながら(?)ドライビングポジションを決めてエンジンに火を入れる。
アイドリング時に耳に届く音色は、確かにガソリンユニットが発するそれとは異質なもの。が、特にボリュームが大きいわけではなく、ハンディキャップは感じない。そんな印象は車外でも同様。始動直後でも排ガスが無臭なことも含め、「ディーゼルだから」という理由で近所に気兼ねをする必要はまるでなさそうだ。
カタログ上の車両重量は、前出ガソリンモデルのGTライン比で180kg重い。が、スタートの瞬間からそれを実感させないのは、やはり低回転域から圧倒的に太いトルクが発せられるからだ。そんな特性を受け、常用をするエンジン回転域は当然より低い。変速動作がガソリンモデル以上に滑らかと感じられたのも、そうした事情と関係があるのかもしれない。
エンジンとシャシーのバランスが絶妙
なるほど“GT”の名にふさわしいな、と思ったのは、2000rpmに近づいた付近からの、まさにモリモリと湧き上がる圧倒的なトルク感だ。
少々深くアクセルペダルを踏み込んでも簡単にはキックダウンは起こらず、それでいて背中に感じる加速Gがドンドンと上乗せされていく感覚。それは、回転数頼りという印象の強いガソリンエンジンのそれとは大きく異なるもの。ユニークなのはセンターコンソール上の“スポーツボタン”を押した時で、アクセル応答性がより敏感な方向へと変化し、操舵(そうだ)力が増してステアリングが重くなると同時に、何とキャビン内には“V8サウンド”が充満するのだ。
それはどう解釈をしても、4気筒のディーゼルエンジンが発することができるものではなく、恐らくはスピーカーを用いての電子的な“効果音”。が、これが意外にも前述の加速感とよくマッチをする。もちろん、「いくら何でもやり過ぎ」とネガティブに捉える人も、少なからず存在しそうではあるが。
そんな308 GT BlueHDiで感心したのは、こうしていささか存在感の強いキャラクターのエンジンが、決して“浮いている”わけではなく、ハンドリングやフットワークの仕上がりともきちんとバランスが取れていること。路面凹凸へのあたりはやや強めだが、ストローク感はふんわりした乗り味も、いかにも「フランス車ならではの美点」を実感させてくれる。
960kgという前軸重量に対して後軸重量は510kgと、データ上はやや“頭でっかち”の感が強いが、いざ乗ってみると決して「曲がりにくい」感覚は伴わないのも好印象につながった。
ちなみにそんなこのモデルでの100km/hクルージング時のエンジン回転数は1600rpmほど。それはまさに「これから!」というポイントで、かくしてその走りはやはり、“ディーゼルGT”感が満載ということになるのである。
1.6リッターも負けず劣らずの力強さ
一方、よりベーシックな1.6リッターBlueHDiユニット搭載仕様は、「308SWアリュール」でテストドライブを行った。
さすがにカタログ上では、最高出力も最大トルクも2リッターユニットに大きく見劣りをする。が、いざスタートすると、その瞬間の蹴り出し感は、むしろより力強いことに驚かされた。こうしたシーンも含め、低回転域を中心に用いる街乗りシーンでの、アクセル踏み増し時のトルクのビルドアップ感は、2リッターモデルに対しても「負けず劣らず」なのである。
一方で、エンジン回転数が高まっていっても目立った頭打ち感もなく、スッキリとパワーが伸びる印象の2リッターユニットに比べると、そうしたシーンでのパワフル感にはやはり明確な差がある。
それもあり、こちら1.6リッターモデルでもスポーツモード選択時に“V8サウンド”が聞かれる例の演出には、さすがに少々の違和感が残った。静粛性全般はなかなか優れているものの、GTグレードでは気にならなかったタイヤの空洞音が、60km/h付近をピークにやや目立ち気味だったことも記しておこう。
新たにディーゼルエンジンを手に入れた308SWの、動力性能面以外の走りのテイストは、基本的には既存のガソリンモデルと同様だ。ホイールベースが90mm、車両重量が50kgほど重いステーションワゴンのSWの方が、ハッチバックモデルよりも全般に走りのテイストがややおっとりとしている、というのも、やはりガソリンモデルの場合と同様の印象となる。
それにしても、BlueHDiをうたう最新のディーゼルエンジン搭載仕様の308が、ハッチバックモデルで299万円からというのは見逃せないポイント。いずれにしても、“本場仕込み”のディーゼルバージョンが加わり、「プジョー車を選ぶ楽しさ」が一気に加速したことは間違いないのである。
(文=河村康彦/写真=小河原認)
テスト車のデータ
プジョー308 GT BlueHDi
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4260×1805×1460mm
ホイールベース:2620mm
車重:1480kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:180ps(133kW)/3750rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/40ZR18 92W/(後)225/40ZR18 92W(ミシュラン・パイロットスポーツ3)
燃費:20.1km/リッター
価格:354万円/テスト車=379万3260円
オプション装備:メタリックペイント(マグネティック・ブルー)(5万9400円)/308タッチスクリーンナビゲーション(18万3600円)/ETC(1万0260円)
テスト車の年式:2016年型
テスト車の走行距離:1513km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
プジョー308SWアリュールBlueHDi
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4585×1805×1475mm
ホイールベース:2730mm
車重:1420kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 SOHC 8バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:120ps(88kW)/3500rpm
最大トルク:30.6kgm(300Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)205/55R16 91V/(後)205/55R16 91V(ミシュラン・エナジーセイバー)
燃費:21.0km/リッター
価格:323万8000円/テスト車=362万2860円
オプション装備:パールペイント(アルティメット・レッド)(8万1000円)/パノラミックガラスサンルーフ(11万円)/308タッチスクリーンナビゲーション(18万3600円)/ETC(1万0260円)
テスト車の年式:2016年型
テスト車の走行距離:1643km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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