プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)
ヤング・アット・ハートなあなたに 2025.08.09 試乗記 ステランティスの新開発マイルドハイブリッドシステムを搭載したプジョーのCセグメントハッチバック「308 GTハイブリッド」に試乗。その仕上がりを確かめながら、同じパワーユニットを採用する「プジョー3008」や「フィアット600」との走りの違いを探った。古い名前と新しい中身
試乗したのは新型プジョー308 GTハイブリッドである。日本では2025年6月に発売されたばかりだ。おや、と訝(いぶか)しむ人もいるかもしれない。2022年4月に3代目プジョー308が日本に導入されたときから販売されていたではないか、と指摘するのはもっともなことだ。確かに、この名前を持つモデルは当初からラインナップされていた。
新しいGTハイブリッドは、48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載している。もともとあったGTハイブリッドはプラグインハイブリッドモデルであり、これからは「308 GTプラグインハイブリッド」と名を変えて引き続き販売される。ややこしくて混乱するが、途中で車名が変更されたり命名規則が変わったりするのはよくあることなのだ。
このところステランティスが激推ししているのが、新開発のマイルドハイブリッドシステムである。新型プジョー3008や「プジョー408」でもこのパワーユニットが採用された。プジョーだけではなく、フィアット600や「アルファ・ロメオ・ジュニア」にも同じシステムが搭載されている。よほど仕上がりに自信があるのだろう。ステランティスが期待を寄せる重要なテクノロジーなのだ。
新開発の1.2リッター直3ガソリンターボエンジンに、モーターを内蔵した6段デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせている。マイルドと称しているものの、なかなかのハイスペックだ。モーター最高出力は22PSで、エンジン出力の136PSと合わせてシステム最高出力は145PSに達する。バッテリー容量も0.9kWhとマイルドハイブリッドのなかでは大きめで、約30km/hまでなら100%電動走行も可能なのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
熟成のプラットフォーム
試乗したのは、308にとって少しばかり気の毒なタイミングだったかもしれない。直前に新型「3008 GTハイブリッド」に乗っていたからだ。3008は、フルモデルチェンジを受けて新開発の「STLA-Medium(STLAミディアム)」プラットフォームを採用している。電動車に最適化されていて、新世代を担う自由度の高さが特徴だ。一方、308のプラットフォームは「EMP2 V3」であり、もとをたどればデビューは2013年。BEVには非対応なので、将来的にはSTLAミディアムに取って代わられる可能性が十分にある。
もちろん、旧世代というほど古いわけではないし、改良を重ねて機能が向上している。時間をかけて熟成されたと表現することもできるので、信頼性の面ではアドバンテージがあるといってもいいだろう。重いSUVを想定したSTLAミディアムよりも軽量でシンプルな設計になっているはずで、コンパクトカーの308には適していると考えられる。
3008を見たあとだと、308はかなり小さく感じられた。全長で145mm、全幅で45mmの差しかないのだが、全高は190mm低い。背の高いSUVはボリューム感が強調されるのだ。運転席に座ると、着座位置の低さを新鮮に感じた。ちょっと前まではコレがスタンダードだったのだが、感覚が変わってしまったようである。コンパクトカーは、今やニッチなボディータイプだと思ったほうがいいのだろう。
インテリアに関しては、正直なところ古さを感じてしまった。プジョーが「i-Cockpit(iコックピット)」を採用したのは2012年で、賛否はあれどオリジナリティーが高く評価されている。3008は「PEUGEOT Panoramic i-Cockpit(プジョーパノラミックiコックピット)」を初採用していて、これが未来感を強く打ち出した先進的なデザインなのだ。あんなに斬新に思えたインテリアも、進化形を目の当たりにすると色あせてしまう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
軽さが生むスポーティーな走り
車重は3008の1620kgに対して1450kgと170kgも軽い。しかも重心が低く、剛性面でも有利な車型だ。マイルドハイブリッドシステムのスペックは共通なので、操縦性能に関しては308にアドバンテージがある。3008でも十分だと感じたが、やはり敏しょう性ははっきりと違った。鼻先が軽く感じられ、素早い動きがドライバーを高揚させる。目の覚めるような加速が得られるとまでは言えないが、低い着座位置と相まってスポーティーな気分が味わえるのだ。山道に持ち込むことはできなかったので街なかでの印象になるが、ちょっとしたコーナーを走っているだけで心地よさを感じる。
発進はモーターで行うのだが、すぐにエンジンがかかってEV走行を試すことができなかった。エアコンが回りっぱなしだったことが響いたのかもしれない。車重の軽い「フィアット600ハイブリッド」ではモーターのみの走行ができたが、そのときはエアコンの負荷が軽かった。ストロングハイブリッドのようにはいかないのが当然で、モーターは補助的な役割だと考えるべきなのだろう。ただ、駆動力としては控えめでも、回生ブレーキの役割では強力な存在感を示す。ワンペダル運転とまではいかないが、アクセルオフではかなり強めの減速が電動車感を演出する。
「エコ」「ノーマル」「スポーツ」と、各走行モードを任意に切り替えることができるが、スポーツを選んでも極端にワイルドな性格になったりはしない。ホットハッチ的なクルマではなく、実用車なのだ。ファミリーカーとして使われることも想定されている。SUVが標準になったことで、コンパクトカーに乗ると狭く感じてしまうのは事実だ。確かに、後席は今の感覚では窮屈ということになるのだろう。ドライバーとしては軽快な運転感覚に一票を投じたいが、家族会議では少数派になることを覚悟しなくてはならない。
ならば経済性をアピールすればいいのではないか。WLTCモード燃費は3008 GTハイブリッドの19.4km/リッターに対し20.6 km/リッターとわずかながら上回る。試乗ではあまりいい数字にはならなかったが、日常使いならばもっといい燃費が得られるだろう。車両価格は79万円も安い……いや、この言い方はフェアではない。それは上級グレードと比べた数字で、受注生産の「3008アリュール ハイブリッド」だと差は10万円に縮まってしまう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
歴史をダイレクトに受け継ぐ
短時間のうちに2台に乗ったのでつい比較してしまったが、実際にはユーザー層は明確に異なっているだろう。爽快な操縦性を求めるなら308だし、快適性やゆとりを重視するなら3008が視野の中心に入ってくる。まったく異なるキャラクターなのだ。ということは、そのどちらにもマッチする新型マイルドハイブリッドシステムの優秀性を証明しているともいえる。
ハッチバックのマーケットは明らかに縮小しており、販売台数では308が突出した伸びをみせることは難しい。事情はどのメーカーも同じだ。同じCセグメントハッチバックに属する強力なライバルの「フォルクスワーゲン・ゴルフ」だって、かつてのような存在感を示すことができないでいる。
プジョー308が再び主役の座に復帰するのは難しい。SUVの広さや見栄えのよさを知ってしまうと、後戻りはできないのも理解できる。プジョー3008は自動車のトレンドを巧みに取り入れた完成度の高さが見事で、隙のない仕上がりだ。多くのユーザーが求める売れ筋モデルをつくり上げた手腕には感嘆せざるを得ない。ただ、それを認めたうえで、プジョーが培ってきたコンパクトなハッチバックの歴史をダイレクトに受け継ぐ308には心をつかまれた。
3008のボディーカラーはクールなブルー系とホワイトだけだが、308には鮮やかなレッドも用意されている。アクティブで華やかなイメージを表現したいという思いの表れなのだろう。あえて古くさい言葉を使うなら、ヤング・アット・ハートなクルマ好きには今も魅力的な一台なのだと思う。
(文=鈴木真人/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=ステランティス ジャパン)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
プジョー308 GTハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4420×1850×1475mm
ホイールベース:2680mm
車重:1450kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:22PS(16kW)/4264rpm
モーター最大トルク:51N・m(5.2kgf・m)/750-2499rpm
システム最高出力:145PS(107kW)
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:20.6km/リッター(WLTCモード)
価格:479万円/テスト車=495万4945円
オプション装備:ボディーカラー<オブセッションブルー>(6万0500円) ※以下、販売店オプション フロアマット(2万6070円)/NDETC40専用取り付けブラケット(825円)/ETC車載器(1万6060円)/電源ハーネス(2090円)/ドライブレコーダーV263A(5万9950円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2279km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:309.0km
使用燃料:28.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.0km/リッター(満タン法)/11.4km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド アップランド(4WD/6AT)【試乗記】 2026.5.6 ジープのなかでも最も小柄な「アベンジャー」に、4WDのマイルドハイブリッド車「4xe」が登場。頼りになるリアモーターと高度なマルチリンク式リアサスペンションを備えた新顔は、いかなる走りを見せるのか? 悪路以外でも感じられる、その恩恵を報告する。
-
アルファ・ロメオ・ジュニア エレットリカ プレミアム(FWD)【試乗記】 2026.5.5 アルファ・ロメオのコンパクトSUV「ジュニア」にラインナップする電気自動車「ジュニア エレットリカ プレミアム」に試乗。1973年型の「GT1600ジュニア」を所有していたかつてのアルフィスタは、最新のフル電動アルファに触れ、何を感じたのか。
-
トヨタGRヤリス/GRカローラ/GRヤリスMORIZO RR プロトタイプ【試乗記】 2026.5.4 進化を続ける「トヨタGRヤリス」と「GRカローラ」の、最新バージョンに試乗。硬派な4WDスポーツならではの、サスペンションチューニングの難しさを知るとともに、100台の限定モデル「GRヤリスMORIZO RR」に、そのひとつの回答を見いだすことができた。
-
シトロエンC5エアクロス マックス ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.5.2 シトロエンのコンセプトカー「OLI(オリ)」の思想を継承する新デザイン言語を用いた2代目「C5エアクロス」が上陸。ステランティスの最新プラットフォーム「STLAミディアム」や48Vマイルドハイブリッド機構によってどう進化したのか。その走りを報告する。
-
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】 2026.5.1 英国の名門アストンマーティンのスポーツモデル「ヴァンテージ」が、「ヴァンテージS」に進化。より高出力なエンジンと進化した足まわりを得たことで、その走りはどのように変わったのか? パフォーマンスを存分に解放できる、クローズドコースで確かめた。
-
NEW
ランボルギーニ・テメラリオ(後編)
2026.5.10思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。前編ではレブリミット1万rpmの4リッターV8ツインターボエンジンを絶賛した山野。後編ではレースカーさながらのシャシーによるコーナリング特性を聞いてみよう。 -
スズキeビターラZ(FWD)【試乗記】
2026.5.9試乗記スズキが満を持して投入した、コンパクトSUVタイプの新型電気自動車(BEV)「eビターラ」に試乗。スズキの将来を占う量販BEVの第1弾は、「よいものを手ごろな価格で」という彼らのポリシーにたがわぬ一台に仕上がっていた。 -
あの多田哲哉の自動車放談――ホンダ・プレリュード編
2026.5.8webCG Movies新型「ホンダ・プレリュード」に試乗した元トヨタの多田哲哉さんは、大いに感心した様子。一体、どんなところがベテランエンジニアの印象に残ったのでしょうか? 動画でリポートします。 -
新型「スカイライン」はこうなる! 各発表情報から日産の伝統的セダンの未来を探る
2026.5.8デイリーコラム日産が、正式にその存在を明らかにした新型「スカイライン」。1957年からの歴史を誇り、熱心なファンを抱える日産伝統のスポーツセダンは、次期型でいかなる姿となるのか? 日産が発表したさまざまな情報をもとに、その未来像を考察した。 -
思考するドライバー 山野哲也の“目”――ホンダ・プレリュード編
2026.5.7webCG Movies「ホンダ・プレリュード」には昔から思い入れがあったと語る、レーシングドライバー山野哲也さん。では、ハイブリッドモデルとして復活した新型に、ワインディングロードで試乗した印象は? -
第960回:レクサスは欧州人のマナーを変えた? 「ミラノ・デザインウイーク2026」の自動車ブランド出展から
2026.5.7マッキナ あらモーダ!イタリア・ミラノで世界的なデザインの祭典「デザインウイーク」が開催された。アウディ、レクサス、ルノー、イタルデザイン……と、自動車関連の出展も数多く見られた会場の様子を、伊在住の大矢アキオがリポート。今回はどんな展示が注目を集めていたのか?

















































