マクラーレン570Sクーペ(後編)

2016.08.11 谷口信輝の新車試乗 谷口 信輝 SUPER GTや86/BRZ Raceなど、数々のモータースポーツシーンで活躍中のレーシングドライバー谷口信輝が、本音でクルマを語り尽くす! 今回も引き続き、「マクラーレン570Sクーペ」に試乗する。谷口にとって、このクルマは100点満点で何点なのか? レーシングドライバー視点で570Sクーペを斬る!
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タイヤの性能をフルに引き出したい

加速力やトラクション性能に感嘆するいっぽうで、(1)アクセルを踏み直したときのトルクのつき、(2)ハードブレーキング時のスタビリティー不足、(3)ブレーキタッチの初期で制動力が立ち上がらない、の3点について不満を漏らした谷口信輝。これらの指摘は、谷口の考えるクルマ哲学と深く関わっているという。この点を、もう少し具体的に語ってもらうことにしよう。

「たとえば、僕がクルマをチューニングするとしますよね。その場合、僕はとにかくクルマのタイムラグを消していきます。以前に『トヨタ86』をチューニングしたことがありますが、このときもエンジンにはターボチャージャーじゃなくてスーパーチャージャーをつけて、さらにファイナルをローギアードなものに替えている。そうやって、とにかくトルクが素早く立ち上がるようにするんです」「なぜ、そんなことをするかといえば、僕がトルクが欲しいと思ったその瞬間にトルクが立ち上がってくれないと、タイヤの性能を余らせてしまうことになるからなんです」

エンジンのレスポンスとタイヤの性能を余らせることの間にどんな関係があるのか、ここで簡単な解説を付け加えてみる。タイヤの性能には、ご存じの通り加減速を生み出す縦グリップと横Gを支える横グリップがある。ただし、タイヤは純粋に横方向だけ、もしくは縦方向だけに機能するわけではなく、その間も縦横の比率を変化させながら連続的にグリップ力を発生する。この特性を360度のグラフに表したものがいわゆるフリクションサークルで、文字通り円に近い形をなす。

そしてサーキットを走るレーシングドライバーは、極言すればこのフリクションサークルのフチに沿ってグリップを発揮させる、つまり常にタイヤの性能をフルに引き出すことを第一の目標としているのだ。そこで、コーナリングで横グリップを最大限に使い終わったときには、一瞬の遅れもなく縦グリップの仕事=加速を始めて、タイヤの性能を無駄なく使いたい。だから、必要と思ったときに直ちにトルクが立ち上がってほしくなるのだ。

 
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マクラーレン570Sクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4530×2095×1202mm/ホイールベース:2670mm/車重:1313kg(乾燥重量、軽量オプション選択時)/駆動方式:MR/エンジン:3.8リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ/トランスミッション:7段AT/最高出力:570ps(419kW)/7400rpm/最大トルク:61.2kgm(600Nm)/5000-6500rpm/タイヤ:(前)225/35ZR19 (後)285/35ZR20/車両本体価格:2556万円
マクラーレン570Sクーペ
	ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4530×2095×1202mm/ホイールベース:2670mm/車重:1313kg(乾燥重量、軽量オプション選択時)/駆動方式:MR/エンジン:3.8リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ/トランスミッション:7段AT/最高出力:570ps(419kW)/7400rpm/最大トルク:61.2kgm(600Nm)/5000-6500rpm/タイヤ:(前)225/35ZR19 (後)285/35ZR20/車両本体価格:2556万円 拡大