【F1 2016 続報】第13戦ベルギーGP「一番の“成功者”は?」
2016.08.29 自動車ニュース![]() |
2016年8月28日、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで行われたF1世界選手権第13戦ベルギーGP。第8戦ヨーロッパGP以来勝利から遠ざかっていたメルセデスのニコ・ロズベルグが今季6勝目を決め、チャンピオンシップでもランキング首位のルイス・ハミルトンとの差を縮めることに成功した。しかしこの週末一番の“成功者”は、予選21位から3位表彰台を実現したハミルトンだったかもしれない。
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■3カ月に9戦が詰まった後半戦へ
およそ1カ月のサマーブレイクを終えたF1は、3カ月間に9戦がぎっしり詰まった後半戦に突入した。
前半の12戦を振り返れば、開幕から4連勝し43点もの大量リードを築いたニコ・ロズベルグに対し、第6戦モナコGPでの勝利を境にルイス・ハミルトンが猛攻を仕掛け、第11戦ハンガリーGPで逆転に成功。過去7戦で6勝をあげたハミルトンがチャンピオンシップでロズベルグを19点突き放した。
メルセデスの2人によるタイトル争いがハミルトン優勢に傾く中で、チャンピオンチームはベルギーGPでハミルトン、ロズベルグのパワーユニット(PU)に新パーツを装着することにした。ロズベルグにとっては改善PUを手に入れるいいニュースとなったが、前半戦のメカニカルトラブルで予定よりも多くコンポーネントを交換していたハミルトンにとっては、使用パーツ数が規定を超えグリッド降格ペナルティーを受けることを意味していた。今後を見据えて、熱エネルギーを回生するハイブリッド機構「MGU-H」ほか数々のパーツを戦略的に交換することにしたハミルトンは、最後列からダメージを最小限にとどめるレースを余儀なくされた。
ベルギーのスパ、続くイタリアのモンツァとパワー・サーキットを前にホンダもPU改善に着手、燃焼室やターボなどを新たにして後半戦に臨んだ。今季12戦でマクラーレン・ホンダが集めたポイントは42点、コンストラクターズランキングは7位。昨年同時期には17点で9位だったことを考えれば大きな進歩である。わずか3点差で6位にいるトロロッソを射程内に捉えた今、“黄金コンビ”復活2年目の集大成としての期待がかかるラスト9戦だ。
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■フェルスタッペン、最年少フロントロースターターに
予選では、ハミルトンのペナルティーでロズベルグが楽々とポールポジションを獲得するかと思われたが、全開率の高いスパで劣勢が否めなかったルノーPUを載せるレッドブルが善戦。ロズベルグは、ベルギーの隣国オランダの若きスター、マックス・フェルスタッペンの激しい突き上げにあいながら、0.149秒という僅差で今季6回目、通算28回目のポールを死守した。
第5戦スペインGPで最年少ウィナーとなった18歳のフェルスタッペンは予選2位で、最年少フロントロースターターの記録を塗り替えることに。苦戦続きだったフェラーリは思いのほか好調で、ベルギー現役最多4勝を記録するスパの名手、キミ・ライコネンが3位、セバスチャン・ベッテルは4位に入った。
5位につけたレッドブルのダニエル・リカルドの後ろには、フォースインディアのセルジオ・ペレス6位、同ニコ・ヒュルケンベルグ7位、ウィリアムズのバルテリ・ボッタス8位とメルセデスPU勢が並んだ。そんなメルセデス包囲網の中、マクラーレンはジェンソン・バトンが健闘し9番グリッドに食い込む力走を見せた。トップ10の最後には、ウィリアムズのフェリッペ・マッサがおさまった。
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■スタートでフェルスタッペンとフェラーリ勢が接触
レースは序盤から荒れた。スタートで蹴り出しの悪かったフェルスタッペンに対し、フェラーリの2台は素晴らしい滑り出しを見せ、3台は並んで鋭角のターン1「ラ・ソース」になだれ込んだ。しかしそこに十分なスペースはなく3台は接触、リタイアこそしなかったもののマシンを壊すなどして大きく順位を落とすことになった。
1位はポールシッターのロズベルグ、2位にはヒュルケンベルグが上がり、以下3位リカルド、4位マッサ、5位ボッタスと、混乱に乗じて中位チームが上位に顔を出した。ペナルティーで最後列から出たマクラーレンのフェルナンド・アロンソは12位、ハミルトンは15位でオープニングラップを終えた。
6周目にルノーのケビン・マグヌッセンが名物の急坂「オー・ルージュ」を過ぎた「ラディヨン」で激しいクラッシュを演じセーフティーカーが入り、ピットでタイヤを変えるドライバーが出始めたが、9周を終えたところでレッドフラッグが出されレースは一時中断となった。
17分後に10周目からセーフティーカー先導でレース再開。1位ロズベルグ、2位リカルド、3位ヒュルケンベルグときて、4位にはアロンソ、5位ハミルトンと最後列スターターの2人が表彰台を狙える位置までポジションを上げていた。接触で順位を落としていたベッテルは11位、フェルスタッペン14位、ライコネンは17位からの再出発だ。
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■最後列スタートのハミルトンが3位表彰台
中断中、長持ちするミディアムタイヤに替えたトップのロズベルグがプッシュして逃げにかかり、2位リカルドはロズベルグに置いていかれるも徐々にその順位を盤石なものとしていった。
注目はハミルトンの動きだった。ソフトタイヤを履いて12周目にアロンソを抜き4位へと上がると、いよいよ照準をポディウムに合わせ、その6周後にはヒュルケンベルグから3位の座を奪うのだった。
22周目になると再びピットに入り9位に後退。各車も追随してタイヤ交換を終えると、1位ロズベルグ、約10秒後方で2位リカルド、レッドブルから1.5秒差で3位ハミルトン、4位ヒュルケンベルグ、5位アロンソというオーダーとなった。このうち大勢がミディアムを選んだのに対し、ハミルトンは速いが脆(もろ)いソフトを装着し、33周目には今度はミディアムに履き替え4位と、忙しい作戦を採った。
程なくして3位を取り戻したハミルトンは、残り10周で18秒前方の2位リカルドを追ったが、メルセデスが飛ばせばレッドブルもペースを上げ、ギャップはなかなか縮まらないまま、タイムオーバーとなった。
プレッシャーもなく自らがやるべき仕事を完遂したロズベルグは、ハミルトンと並ぶ今シーズン6勝目をあげ、ランキング首位ハミルトンとの19点の差は9点にまで縮まった。しかしこのレース一番の“成功者”は、予選21位から3位表彰台を実現したハミルトンだったかもしれない。フェルスタッペンとフェラーリが順当に走り続けていればこのポディウムも難しかったはずであり、運すらも味方につけたハミルトンにとっては、ある意味最良の週末だったと言えよう。
次戦イタリアGPはヨーロッパでの最後のレース。決勝は1週間後の9月4日に行われる。
(文=bg)