【F1 2016 続報】第14戦イタリアGP「2点差で残り7戦へ」
2016.09.05 自動車ニュース![]() |
2016年9月4日、イタリアのモンツァ・サーキットで行われたF1世界選手権第14戦イタリアGP。予選までは無敵だったルイス・ハミルトンがスタートで失敗、代わってトップに立ったニコ・ロズベルグがミスなく走り切り、今季最多となる7勝目を飾った。
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■終わるキャリア、続く伝統、休むベテラン
ヨーロッパでの最後のレースとなるイタリアGPでは大きな発表が相次いだ。
まずは木曜日、フェリッペ・マッサが今季でF1を引退することを明らかにした。2002年、ザウバーでGPデビューを果たしたマッサのキャリアはフェラーリ抜きでは語れない。テストドライバーを経験した後、2006年からいよいよ赤いマシンを駆る栄誉を担うことになり、その後8年間、139戦もの長きにわたり跳ね馬を駆った。2008年にはルイス・ハミルトンと最終戦までタイトルを争い、わずか1点差で栄冠を逃し悔しい思いをした。フェラーリで11勝した後、2014年にはウィリアムズに移籍。不調から抜け出せずにいた元チャンピオンチームの再建に尽力し、若手バルテリ・ボッタスとともに2年連続コンストラクターズランキング3位という結果をもたらした。しかし今年チームは苦戦を強いられており、前戦ベルギーGPではついにライバルのフォースインディアにランキングで抜かれ5位に転落、マッサ自身もドライバーズランキング10位(39点)と低迷していた。35歳のブラジリアンは、250戦目となる今季最終戦アブダビGPを最後にF1ドライバー生活にピリオドを打つ決断を下した。
続く金曜日には、F1の商業面を牛耳るバーニー・エクレストンとイタリアGPの主催者ACIが、今年で契約が切れるイタリアGPを2019年まで継続することで合意したと発表。近年高騰を続ける契約料で両者なかなか折り合いがつかず、開催を危ぶむ声すら聞こえていたが、ACIは地方政府などと掛け合い、費用の捻出にめどが立ったようだ。これで、世界選手権が始まった1950年以来続く伝統のGPであり、世界で3番目に古いサーキットであるモンツァでのF1が、そして最古参チーム・フェラーリの“聖地”での戦いが、来年以降も見られることになった。
そして土曜日、マクラーレンのジェンソン・バトンが来季「休養」を取ることがわかった。チームによると、2017年は若手有望株のストフェル・バンドールンをフェルナンド・アロンソのパートナーとする一方で、バトンとは2年契約を延長。バトンはいわばリザーブドライバーとしてレースに帯同しながら、将来的な復帰の可能性も残している。マクラーレンには、1998年と1999年の王者ミカ・ハッキネンが2002年シーズンに休養するという前例があるが、ハッキネンは復帰することなくそのまま引退した。今季最終戦に305戦目を迎える2009年チャンプ、バトンの今後はいかに……。
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■無敵のハミルトン、モンツァ3年連続のポールポジション
コース外の騒ぎをよそにイタリアGPはレースに向けて着々と進行し、その間、フルスロットル率80%ともいわれる超高速サーキット、モンツァはメルセデスとハミルトンの独断場と化していた。土曜日の予選ではQ1、Q2とハミルトンが最速。Q3ではチームメイトのニコ・ロズベルグを何と0.478秒も突き放し、今季7回目、通算56回目、イタリアGPでは3年連続となるポールポジションを決めたのだった。
今年8回目のメルセデス最前列に続いたのはフェラーリ勢。今季のパワーユニット開発枠をフルに使って地元決戦に臨んだスクーデリアは、Q3の2回目のアタックでセバスチャン・ベッテルがキミ・ライコネンを抜き予選3番手、ライコネンは4番手につけた。ウィリアムズのボッタス5位、レッドブルは苦手なモンツァでダニエル・リカルド6位、マックス・フェルスタッペンは7位。セルジオ・ペレス8位、ニコ・ヒュルケンベルグ9位とフォースインディアが並び、Q3に初進出した新興ハースのエステバン・グティエレスが10番グリッドにおさまった。
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■スタート失敗のハミルトン、ロズベルグがトップに
過去10年でポール・トゥ・ウィンは8回、圧倒的に勝利に近い位置からスタートしたハミルトンは、しかし、シグナルが変わると鈍い出だしで大きく順位を落とし6位に後退。1位ロズベルグ、2位ベッテル、3位ライコネン、4位ボッタス、5位リカルドに先行を許してオープニングラップが終わった。
53周レースの2周目にリカルドを抜き5位に上がったハミルトンは、同じメルセデスのパワーユニットで戦うウィリアムズのボッタスをなかなか抜けずにいた。またとない幸運が転がり込んできたトップのロズベルグは、その間ファステストラップで逃げにかかり、10周もすると2位ベッテルに4秒、ようやく4位に上がったハミルトンには10秒の差をつけた。
上位グリッドのうち、メルセデス勢は長持ちするソフトタイヤ、そのほかは、速いがその分寿命も短いスーパーソフトタイヤを履いてスタートしていた。14周目にボッタス、16周目ライコネン、その翌周ベッテルらが続々とピットへ飛び込む一方、チャンピオンチームは周回を続け、ロズベルグ、ハミルトンの1-2態勢ができあがった。メルセデス勢が1ストップで走り切ろうとしている中、3位ベッテル、4位ライコネンのフェラーリ勢らは再びスーパーソフトを履き、2ストップを採ることが明らかになった。
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■今年4回目のメルセデス1-2、ロズベルグが2点差に迫る
24周を終えて1位ロズベルグがこの日唯一のタイヤ交換、次の周にハミルトンも続き、両車ミディアムを履いてコースに復帰。最初のピットストップを終えての順位は、1位ロズベルグ、2位ベッテル、3位ライコネン、4位ハミルトンとなったが、メルセデスにはさまれたフェラーリはもう1回のピットストップを残していた。
メルセデスの敵はメルセデス。10秒後方で4位を走るハミルトンがペースを上げれば、首位ロズベルグもそれに応じて走らなければならなかった。34周目にベッテル、翌周ライコネンが2度目のタイヤ交換を実施すると、見た目の上でも1位ロズベルグ、2位ハミルトンというメルセデス対決の構図となったが、残り20周足らずで11秒の差はいかんともし難かった。
結局、ロズベルグが15秒の大差をつけ完勝、ハミルトンは2位に甘んじた。メルセデス今季4度目の1-2フィニッシュに続いたのはフェラーリのベッテル。ここのところメルセデスはおろかレッドブルにもことごとく敗れていたスクーデリアは7月のオーストリアGP以来となる2カ月ぶりのポディウムで、大勢の地元ファンの期待に何とか応えた。
チャンピオンシップをリードするハミルトンとランキング2位ロズベルグのポイント差がわずか2点にまで縮まったことで、タイトル争いの面白みが、がぜん増してきた。しかし「競り勝つ」「勝ち切る」という意味において、圧倒的な実績を誇るハミルトンに対抗するには、ロズベルグはこれまで見せたことがない「武器」を携え戦わなければならない。1982年チャンピオン、ケケを父に持つロズルグは、今年こそ万年2位の汚名を返上できるか?
ヨーロッパ最後のレースを終えたF1はシンガポールGPへと向かう。決勝は9月18日に行われる。
(文=bg)