ジャガーFペースS(4WD/8AT)
Fペースは特上に限る 2016.10.18 試乗記 ジャガーのSUV「Fペース」のフラッグシップモデル「S」に試乗。380psものパワーを秘めたスーパーチャージドエンジンを搭載し、足まわりを22インチタイヤで固めた漆黒のFペースは、われわれに何を訴えかけてくるのだろうか。えも言われぬ迫力
FペースSは、Fペースの高性能モデルである。Fペースにはラグジュアリー系のグレードとして、「ピュア」と「プレステージ」があり、スポーティー系として「Rスポーツ」と「S」がある。
Rスポーツは3リッターガソリンV6が340psにとどまるのに対して、Sはプラス40psの380psを得る。380psもの大パワーを持つSUV系スポーツカーはこのクラスだとそれほど多くない。ようするにFペースSは「ポルシェ・マカン」を仮想敵とするジャガーなのだ。
漆黒の試乗車は、Fペースをコンパクトに見せていた。「アルティメットブラック」と呼ばれるペイントはつや消しのようでもあり、レーダーを反射するステルス塗装のように……実のところ、よく知らないのですが、ともかくSF映画に出てくる戦闘マシンのようで、シンプルにカッコイイのだった。
巨大な20インチホイールがSの標準で、「Sボディーキット」と呼ばれる光りものでボディーを飾っているはずなのですけれど、試乗車はひとあじ違う。ラジエターグリルや窓枠など、本来は光っているはずのパーツがブラックになっている「ブラックパックS」というセットオプションが選択されているのだ。
まったくもってダース・ベイダーみたいな雰囲気なのである。
まるでアメリカヒョウのごとし
まして試乗車は22インチという超巨大サイズのホイールを履いている。22インチはデカイっす。45の偏平タイヤが極めて薄っぺらく見える。しかもホイールがブラックフィニッシュで、タイヤかホイールか大八車か、判然としない黒い塊によって足元が覆われている。不穏な空気を漂わせるのは、ボディー黒/ホイール黒というコンビネーションにもある。黒い盤面に黒い針の腕時計があるけれど、あれの考え方と同種だろう。
ちなみにこの22インチホイールはオプションでどのグレードでも選ぶことができる。Sだと36万9000円だけれど、Rスポーツでも51万6000円、それ以外のグレードだと66万3000円もする高級品だ。これが20インチだと36万9000円だから、やっぱり22インチは飛び抜けて高価なのである。
しかしながら、それだけの、少なくとも視覚的な効果はある。でかいタイヤはクルマを凛々(りり)しく見せる。ましてホイールハウスに本来ゆとりのあるSUVはなおさら。でかいタイヤ&ホイール、どんと来いである。走ることが得意で、貧弱な足の動物はいない。FペースSのいでたちはまさにアメリカヒョウを思わせる野性味がある。
漆黒のドアを開けると、黒と赤2トーンの鮮やかなシートが目に飛び込んでくる。ラグジュアリー・スポーツカーのようなスポーティーかつ贅沢そうなシートである。ラグジュアリー・スポーツカーなのだから当たり前です。しかして、「パフォーレイテド・トーラスレザー・スポーツシート」という28万1000円のオプションなのであった。実のところ、標準シートとどう違うのか定かではないけれど、大人5人分のイスのエクストラコストだと思えば、ま、いいんじゃないでしょうか。
「赤と黒」はたぶん、小説のタイトルになるぐらい、西洋人にとって対照的な色なのだろうと推察する。筆者は何も知らない非西洋人であるわけだけれど、わけも知らずハッとして、グーだと思った。黒の中の赤は鮮烈な色の印象を残す。
これぞFペースの特上
スターターボタンを押して3リッターV6スーパーチャージドを目覚めさせる。低音のうなり声がフロントから聞こえてくる。もちろんアイドリング中は静かだけれど、走りだして低いギアで加速すると、野獣の雄たけびをあげる。
同じエンジンを積む35t Rスポーツで十分だと思っていたけれど、そうではなかった。V6スーパーチャージャーは遠慮なしに豪快なサウンドを発し、記憶の中の340ps版よりもよりスムーズにパワー&トルクを紡ぎ出す、ように思える。あるいは、一度経験した以上のパワー&トルクが湧き出てくることに、無意識に筆者の体が反応しているのかもしれない。
うな重の並と上と特上というメニューを見るたびに筆者はこう思うタイプである。特上は高いだけで味は同じである。上はうなぎの量が多いかもしれない。しかし、味は同じなのである、並と。
しかるにジャガーFペースの場合、並が2リッターディーゼル、340psの35t Rスポーツが上、380psのSが特上だとして、やっぱり特上がイイ! 特上に限ります。と申し上げるほかない。849万円出して35t Rスポーツが買える人は、981万円、あと130万円奮発してSを買った方がいい。中途半端が一番いけない、と申し上げたい。
豪快でしなやか
22インチにも負けないボディー剛性と電子制御の脚も、特上だけのことがある。Rスポーツではオプションの「アダプティブダイナミクス」という名の電子制御ダンパーをSは標準装備していて、どうやらこの電子制御ダンパーがせっせといい仕事をしてくれていると思われる。
終始一貫、硬めの乗り心地ではあるけれど、ドライバーの操作を1秒間に最大500回モニタリングすることによって電子制御ダンパーが最適に調整され、ボディーを平行に保って、操縦性と乗り心地という本来は相反する要素を向上させている。
極低速ではビッグでファットなタイヤを意識させるけれど、首都高速の目地段差をしなやかに越えてみせる。SUVのスポーツカーというジャガーのコンセプトを最もわかりやすく具現しているのがSである。
アクセルを踏み込めば、野獣の雄たけびをあげて爽快な加速を披露する。まことに胸がすく。おまけによく曲がる。トルク配分は前10対後ろ90を基本とする、ほとんど後輪駆動で、前後重量配分は50対50にごく近い。
Fペースは特上に限るね。
(文=今尾直樹/写真=小河原認)
テスト車のデータ
ジャガーFペースS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4740×1935×1665mm
ホイールベース:2875mm
車重:1980kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:380ps(280kW)/6500rpm
最大トルク:45.9kgm(450Nm)/3500rpm
タイヤ:(前)265/40R22 106Y/(後)265/40R22 106Y(ピレリPゼロ)
燃費:10.1km/リッター(JC08モード)
価格:981万円/テスト車=1222万0124円
オプション装備:
メタリックペイント<アルティメットブラック>(10万2000円)/パーフォレイテド・トーラスレザー・スポーツシート(28万1000円)/アダプティブサーフェスレスポンス(3万円)/22インチDouble Helix 15スポーク(ブラックフィニッシュ)(36万9000円)/電動調整ステアリングコラム(6万5000円)/追加パワーソケット(0円)/レジャーアクティビティーキー(4万1000円)/キュイールグレイン・インストゥルメント・ストッパー(5万円)/イルミネーテッド・メタルトレッドプレート(Jaguarロゴ入り)およびトランク用メタルスカッフプレート(16万4000円)電動4ウェイランバー(6万2000円)/アダプティブクルーズコントロール(キューアシスト、インテリジェントエマージェンシーブレーキ付き)(25万4000円)/ブラインドスポット・モニター(リバーストラフィックディテクション付き)(11万3000円)/プライバシーガラス(7万9000円)/プラクティカリーパック(6万8000円)/アドバンスド・パーキングアシストパック(22万9000円)/コールドクライメイトパック(14万円)/ブラックパックS(15万8000円) ※以下、販売店オプション プレミアムカーペットマットセット(ジェット)(4万8924円)/ラゲッジコンパートメント プレミアムカーペットマット(4万3200円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:5380km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:326.4km
使用燃料:44.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.3km/リッター(満タン法)/7.9km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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