第475回:宣伝効果バツグン!?
「フィアット124スパイダー」の教習車が登場!
2016.11.11
マッキナ あらモーダ!
依然モテモテの「124スパイダー」
2016年10月29日、アバルトファンのためのメーカー主催ミーティング「ABARTH DAY 2016(アバルトデー2016)」が欧州で開催された。ドイツのニュルブルクリンク、英国のシルバーストーン、スペインのナヴァーラ、そしてイタリアのタツィオ・ヌヴォラーリの、4つのサーキットで同時開催するという大胆な企画だった。当日は、4会場合わせて3500人のファンが自慢のサソリ1100台(1100匹?)を持ち寄った。
イタリアには約500台が参集。その日サーキットデビューをした若者から、往年のアマチュアチームで鳴らしたジェントルマンドライバーまでそれぞれのスタイルで走りを楽しんだ。
その会場で、創始者カルロ・アバルト時代のヒストリックモデルに比肩して注目を浴びていたモデルが、新型「アバルト124スパイダー」である。いち早くデリバリーしてもらって乗りつけた幸運なオーナーは、他の参加者の羨望(せんぼう)の的だった。また、試乗コーナーには終日長い列ができていた。展示ブースでは、124スパイダーと記念撮影や自撮りをする参加者も少なくなかった。
そのアバルト124スパイダーの“とんでもない仕様”を、それもボクが住むシエナで発見した。
「フィアット500」に続け!
本エッセイでは、過去2回ほど「フィアット500」を教習車に使用している自動車学校「バルツァナ自動車教習所」を紹介した。
実は同校には、分家ともいうべき教習所が同じ市内にある。すでに紹介した本家と名称やロゴが同一であるばかりか、こちらもフィアット500を、2007年の発売当初から教習車として積極的に導入してきた。ある意味営業車なのだから、同じフィアットでも「パンダ」をはじめとする「より低いコストで導入できるモデル」にすればよいのだが、以前記した通り、500のほうがアイキャッチ効果が高いのだ。目下、教習車である3台すべてが500である。
先日分家のほうを通りかかったときも、真新しいイエローの500がちょうど路上教習(といってもイタリアは場内教習コースがないので、路上教習しかない)から帰ってきたところだった。5人いるインストラクターのひとりで、わが家でひそかに「とっつぁん」と呼んでいるステファノ・トッツィさんをつかまえて聞くと、「過去9年で、何台買ったか覚えていないほど、500をとっかえひっかえ使ってきた」という。
やがて次の教習のスロットが始まり、例の黄色い500が出発してゆくと、陰から現れたのは、なんと真っ赤な「フィアット124スパイダー」だった。それも、自動車学校を示す「SCUOLA GUIDA」 の文字が記されている。
「ど、どうしたんですか、これは?」
思わず、とっつぁんに詰め寄った。すると彼は「ちょっと前に導入したんだ」とうれしそうに教えてくれた。500以上に強力なアイキャッチとして活用するらしい。ちなみに後日彼らのウェブサイトにアクセスしてみたところ、早くも124スパイダーでの短い教習シーンが、それも『YouTube』の動画としてアップされていた。
奪い合いになっちゃうかも
当日は、彼の同僚がキーを持ったままほかの教習車で出掛けてしまっていたので、124スパイダーの車内を見せてもらうことはできなかった。だが、法令にしたがい、助手席側には補助ブレーキが装着されているという。
この124スパイダー教習車、唯一の欠点は「実技試験で使えないこと」だ。イタリアでは、監督官庁の官吏が教習所までやってきて試験を実施する。テストはほかの教習生数名とインストラクターが同乗した上で行うので、2シーターの124スパイダーでは不可能なのである。
それはともかく、124スパイダーに対する「教習生の評判は上々だ」と、とっつぁんは胸を張る。さすがに実技の初期段階では乗せないらしいが、それが教習生にとってステップアップへのファイトとなることを期待しよう。
なお、イタリアの教習所でインストラクターたちは、昼休みは家にいったん帰る人が少なくない。例の「SCUOLA GUIDA」のサインはマグネット式なので、「教習時以外は掲示してはならない」という法規にしたがい、ペロリとはがして乗って帰る。
冒頭のイベントでは、アバルト版124スパイダーはかなりの注目を浴びていた。イタリアの教習所のインストラクターは、プライベートでもクルマ好き指数が高い。毎日昼休みに、インストラクター間で124スパイダーの奪い合いが起きていないことを切に願っているボクである。
(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=関 顕也)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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