第942回:「デメオ劇場」は続いていた! 前ルノーCEOの功績と近況

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フランス人からも高評価だった

ルノーグループの元CEOルカ・デメオ氏(1967年生まれ)が、ファッションコングロマリットのケリングに電撃移籍という話題は、2025年7月の当連載「第917回:自動車業界にアデュー! ルノーCEOルカ・デメオ氏の華麗なる転身なるか?」に記した。実際にデメオ氏は、同年9月15日付でケリングのCEOに就任を果たした。

今回は彼のルノーにおける成果を検証するとともに、近況をお伝えしよう。

まず、最後のデメオ時代の反映といえるルノーグループの売り上げデータを見てみる。2025年1月から9月までは391億ユーロ(約7兆2000億円)で、前年同期比3.7%増であった。第3四半期に限ってみれば114億ユーロ(約2兆1000億円)で6.8%増を記録した。販売台数も9.8%増の52万9486台で、欧州が7.5%増、そのほかの地域が14.9%増と、いずれも良好な数字が並んでいる。グループ全体の欧州販売台数では、フォルクスワーゲン、ステランティスに次ぐ3位を維持した。

筆者が考えるに、仕向け地に合わせたパワーユニットの設定も功を奏した要因だった。好例は筆者が在住するイタリアである。LPG/ガソリン併用車の1~11月新車登録台数では、サブブランド、ダチアの小型車「サンデロ」の4万0998台をトップに、上位4台がすべてダチアもしくはルノーのモデルとなった(データ出典:UNRAE)。

参考までに、2025年9月にドイツの自動車ショー、IAAモビリティーで発表された6代目「クリオ」のパワーユニットは、1.2リッター3気筒ターボと、ホースパワートレイン製の1.8リッターハイブリッドのみである。ホースパワートレインとは、2024年にルノーと吉利が合弁で設立した内燃機関製造企業である。総じて、過度にバッテリー電気自動車(BEV)に比重をかけなかったストラテジーがプラスに働いた。

デメオ氏はイタリア人にもかかわらず、筆者が知るフランス人のあいだで評判がよかった。第一は、前任であるカルロス・ゴーン氏や、過激ともいえる改革を進めたステランティスのカルロス・タバレス元CEOから比べれば、はるかにイメージがよかったことが挙げられる。

ルノー・トゥインゴE-Tech(photo:Renault)
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13の高級ブランドを統率する、ケリングのルカ・デメオCEO。(photo:KERING)
13の高級ブランドを統率する、ケリングのルカ・デメオCEO。(photo:KERING)拡大
筆者が住むシエナのルノー販売店で。この店の場合、今やダチアにほぼ半分のスペースを割いている。
筆者が住むシエナのルノー販売店で。この店の場合、今やダチアにほぼ半分のスペースを割いている。拡大
デメオ時代のルノーで推進されたもののひとつに、ヒストリックサービスがあった。これは2025年にパリで催された「レトロモビル」における、ルノーのブース。
デメオ時代のルノーで推進されたもののひとつに、ヒストリックサービスがあった。これは2025年にパリで催された「レトロモビル」における、ルノーのブース。拡大