安全・環境・基礎分野での日産の先進技術を体験
2011.10.13 自動車ニュース日産の「安全・環境・基礎」分野における先進技術を体験
恒例となっている日産自動車の「先進技術説明会」が、横浜の追浜工場に隣接したテスト施設「追浜グランドライブ」で開催された。
日産自動車が毎年、「先進技術説明会」を実施していることは、過去のニュースで知っている人もいるだろう。ただ今年は、EV(電気自動車)のプロトタイプといった大物はなく、登場がうわさされていた前輪駆動のハイブリッドカーは、残念ながら技術展示だけだった。
つまり全般的に小粒だったともいえるけれど、「山椒(さんしょう)は小粒でもピリリと辛い」のことわざどおり、日々のドライビングですぐに役立ちそうな技術が多かったのもたしかである。そのなかでも気になった技術を中心に報告する。
■手品のようなテクノロジー
今回は、「安全技術」「環境技術」「基礎技術」の3つに大別できた。そのうち安全技術については、車体前後に内蔵したカメラを使って周囲の人やクルマの存在を教えたり、レーダーを用いて2台前を走るクルマの減速をアイコン表示と音とシートベルトの巻き上げで知らせたり、アクセルとブレーキのペダル踏み間違いによる事故を軽減したりという技術があった。
最近事故が増えているペダル踏み間違いについては、「アラウンドビューモニター」と超音波ソナーを活用して駐車枠や周囲の壁などを検知し、アクセルペダルを踏んでもエンジンのスロットルを開けない制御を用いていた。体験では、壁を前にしてフルスロットルを与えても車両はゆるゆるとしか進まず、壁の直前で自動停止してくれた。
この技術、たしかに画期的だ。でも次の瞬間には、壁や駐車枠がない場所ではどうなんだろう? と考えるようになった。
たとえばスマートフォンには、誤動作防止のロックスイッチがある。それと同じように、特定のペダルやスイッチを操作しないとアクセルを踏んでも発進しないようにするなど、根本的な解決を施す時期にきているのではないかという気もした。
逆に2台前のクルマの減速を知らせてくれる機構は、すぐ前の車両が車線変更を行う前から、2台前のクルマがブレーキをかけたことを音とアイコン表示とシートベルトの張りで教えてくれるという、手品のようなテクノロジーだった。欲をいえば、一部の輸入車のように、ビックリするぐらい大きな音や明るい光で注意を促してくれたほうがいい。「二度とお世話になりたくない」と思うぐらいのほうが、安全運転に結び付くはずだからだ。
■疲労の少ない快適シート
環境技術では、新世代CVTの試乗のほか、EVの非接触充電システムと電力供給システムの実演、次世代燃料電池スタックと前述の前輪駆動用ハイブリッドシステムの技術展示があった。個人的にもっとも興味のあったのはEV関連の二つの技術で、日本がこの面で世界のトップランナーであることを実感した。でも「見せる力」つまりデザインについては、さらなる洗練を望みたい。
基礎技術では、固さと粘りを両立した超高張力鋼板、車体変形を考慮したボディー設計、快適で疲労の少ないシート開発がトピックだった。
無重力空間で人間が脱力したときの姿勢をヒントに、独自のシートシミュレーターと人体筋骨格モデルを使って開発したシートは、既存の製品と座り比べると、肩から腰にかけてを均一に支えてくれることが瞬時に体感できた。
すべての日産車にこのシートが装着されるのは、それはそれですてきなことだが、もっと分かりやすい伝え方として、「GT-R」などのプレミアムカー向けに、オーナーの体格を測定してシートを製作するビスポークプログラムを設定しても面白いのではないだろうか。
このシートを含めて、個々の技術はどれも素晴らしかった。だからこそ、どう見せ、どう伝えるかが大事だと感じた。米アップルのスティーブ・ジョブズ会長が亡くなった直後だから、そう思ったのかもしれない。スマートフォンがこれだけ普及したのは、ハイテクだけが理由じゃなかったわけだし。
先進技術をどう表現するか。デザイン力にたけている日産だからこそ、この面についても期待したい。
(文=森口将之/写真=荒川正幸)
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