第9回:ダンシン・イン・ザ・レイン
2017.01.27 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして 拡大 |
周囲からは警告されていた。自分でも「それはダメだ」と分かっていた。しかし、つい出来心でやってしまったのである……。今回は、「ダッジ・バイパーで雨の日に出掛ける」という禁忌を犯した人間のたどった、哀れな末路のお話である。
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なんでそこが壊れるの?
中古並行、改造歴アリ、そして今年で17年落ちと、マージャンでいえばトリプル役満みたいに厄にまみれたわがバイパーは、時々、フツーのクルマでは考えられないような地味で切ないトラブルに見舞われる。
例えばこの正月休みには、突然ナンバープレートステーがひしゃげた。厳密には昨年末のことになるが、「さてさて実家に帰りましょか」とボディーカバーをはぐったら、ナンバーが首をかしげていたのである。仕方ないので相模原のバイパー屋さん(このお店についても、いずれぜひ紹介したいと思う)にSOSを発信。師走の忙しい時期……どころか、仕事納めのまさにその日に、無理を言って直してもらったのだ。
それにしたって、なんだってこんなところがいきなり壊れるのよ? メカニックさんに「自転車でもぶつけられたか、イタズラですかねえ?」と尋ねたところ、「いや、そもそもステーの強度が全然足りてない。これじゃ洋服の裾を引っ掛けただけでも曲がっちゃいますよ」と言われた。実際、わがバイパーのナンバーステーは、手で突いたら「びよよよん」と振動するくらいヤワかった。
かつて、このクルマの面倒を見ていたどこかの自動車屋さんが、強度とか考えずにテキトーに作ったものなんだろう。「走っているうちに、ステーごとナンバーが落ちちゃうこともあるんですよ。この状態で気づいてよかったですね」と慰められた。
世の健全な自動車に乗られる読者諸兄姉には関係のない話かもしれない。しかし、ただ走っているだけでナンバープレートが飛んでいく、そんなクルマが世の中にはあるのですよ。
いわゆる“変わったクルマ”につきものの、こうしたマイナートラブル。今回は、その中でもメジャー・オブ・メジャーに君臨する、「雨漏り」にまつわる出来事を紹介させていただく。
“おとそ気分”が招いた悲劇
すべての元凶は、2017年の1月8日から9日にかけて、関東一円を見舞った寒雨だった。
普段なら雨の休みは家に引きこもっている記者だが、このときだけはバイパーで出掛けなければならない用事があった。
何せ、お正月を過ぎて最初の休みである。昨年末にクリーニングに出した洋服や、修繕を依頼した革靴の引き取り、男の一人暮らしに必要な生活消耗品の買い出し、そして2017年の“ラーメン開き”など、これらを一度にこなすには、どうしても荷物の積めるクルマ(?)が必要だったのだ。
なお、「そこは3連休だったんだし、7日(土)に用事を済ませておけばよかったんじゃないの?」という件については審議を拒否させていただく。連休初日に雑事全般を済ませられるような計画性のある男なら、この歳まで独身やってませんよ。ははは。
かような事情から、8日の午前中に雑事もろもろを済ませるべく、記者はバイパーで街へと繰り出した。天気予報では雨は午後からなので、テキパキ立ち回ればかわせるはず。また、夏の夕立みたいにいきなり“どーん”と降ることはないだろうから、仮に雨をかぶるにしても、降り始めのぽつぽつ程度だろう。そうタカをくくっていたのだ。
結果は皆さまお察しの通り、記者とバイパーは、出先でどーんと雨に見舞われた。
で、何が起こったかといえば、やっぱりバイパーは雨漏りした。
場所は左右のドアパネル。ウィンドウモールなどからドアの中に入った水が、パネルのすき間や手すりの取り付け部分から染み出てくるような、そんな雨漏りの仕方だった。
しかしまあ、この程度は想定の範囲内。ミニに乗っていたころは、雨に降られたら助手席の足元が池になったもんである。それと比べたらこんな雨漏り、山から染み出す岩清水のようにつつましいではないか。
そもそも、ドアまわりの雨漏りについては購入前に周囲から警告されていたこと。記者はむしろ、その他の場所から水が入ってこないことに安堵(あんど)すらしていた。要するに油断していたのだ。
そして、その油断が記者の判断力を鈍らせた。
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ボディーカバーはかぶせてなんぼ
突然だが、バイパーは洗うのにけっこうお金がかかる。車幅のせいで、コイン式洗車機に入らないのだ。「だったら自分で洗えば?」と言われそうだが、いかんせん記者は近隣アパートの駐車場を間借りしている身分。水をまき散らして洗車などできないし、そもそも洗車に使う“水源”がない。
ところが、今は空から勝手に、しかもタダで、水が降ってきているではないか。ここはひとつ、お天道さまに洗車をお願いしてもバチはあたらないんじゃないかい?
それともうひとつ。
そもそも記者にとって、ぬれたボディーにそのままカバーをかぶせるというのは、どうにもはばかられる行為だった。お察しの通り、カビが怖いのだ。現に記者のまわりには、青緑のカラフルなカバーを持つオシャンティーどもが少なくない。恵比寿の一介のサラリーマンにとって、もちろんマイカーは大切な財産である。が、「送料込み1万1750円」のカバーライトもそこそこ大事な財産だったのだ。
以上が、私が家に帰ってからもバイパーにカバーをかぶせなかったことに関する、申し開きである。
明けて1月9日。お昼に差し掛かってようやく雨は上がった。
記者はうきうきしながら雑巾を取り出し、バイパーから雨滴を払っていった。砂っぽこりやらPM2.5やらでぼんやりしていた黒い樹脂パネルが、たちまちの内につやつや、ぴかぴかである。気持ちいい。チョー気持ちいい。
前日にもろもろの雑事を済ませておいたので、この日は出掛ける予定もなし。せっかくキレイになったのだし、ホコリをかぶる前にボディーカバーをかぶせてしまおう。
そう思い立った記者が、ラゲッジからボディーカバーを引っ張り出したとき、事件は発覚した。
ざばー。
えたいの知れない水音に記者は戦慄(せんりつ)した。見れば、ボディーカバーの端から水が滴っている。雨漏りしていたのだ。それも、“つつましい”とか言ってられないレベルで。
ひとまずカバーをボンネットに置き、ラゲッジルームをチェック。そして記者は目撃した。白い車検証入れが、水面にぷかぷか浮かんでいるところを。
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おまえそれでもクーペかよ?
状況を説明しよう。
そもそもバイパーのラゲッジルームは、フレームとおぼしき敷居によって右、中、左に3分割されている。最も広いのは中央で、その底部はスペアタイヤのお住まいである。これに対し、左右の部分はふくらんだフェンダーパネルの内側に位置しており、書類だのちょっとした荷物だのをしまうのに重宝するスペースとなっている。
今回水がたまっていたのはまさにこの場所。床面に手をついてみると、その嵩(かさ)は手首までつかるほどだった。
……などと、PCを前に冷静に当時を振り返るワタクシであるが、発見時は大パニックだった。齢35にして、「ぎゃー」と本気の悲鳴を上げたほどである。
とにかく水をかき出さなければならないのだが、使えそうな道具は手元にない。仕方がないので、愛用のホンダF1マグカップで水を排出。次いで新品のバスタオルを引っ張り出し、水を吸わせてはしぼってを繰り返した。結婚式の引き出物としていただきながら、開封すらしていなかったバスタオルである。彼も、こんな作業が初仕事となるとは思いもしなかったろう。
いやはや。げに恐ろしきは「おまえそれでもクーペかよ?」と言わずにおれない、わが相棒の耐候性である。なんと言うか、本当にレインテストやったんでしょうね? クライスラーさんよ? ボブさんよ?
……いや、この失態を他人(ひと)のせいにはすまい。もう十分してるけど。
今回の件は、普段「ボディーの組み付け精度はお察しください」などと言っておきながら、雨に対して油断していた自分に非がある。本連載の第5回で、「雨漏りなんてへのかっぱ」的なことを言っておいて、恥ずかしい限りである。反省いたします。
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雨漏りする、だけじゃない
ああでもやっぱり言わせてほしい。クライスラーさんよ、ボブさんよ。
1000歩譲って雨漏りするのは仕方ないにしても、水が入ってくる場所にピンポイントで電装品を置くというのはどうなのさ? 恐らくオーディオ関係の何かだろうが、発見時は「まさかECUとかじゃないだろうな?」と血の気がうせた。思わず「eBay」でバイパーのコンピューターの値段を検索してしまったほどだ。
それともうひとつ。
ラゲッジルームの防水はザルそのものだったけど、エンジンルームはホントに大丈夫なんでしょうね? 「車内の荷室もじゃぶじゃぶだけど、エンジンルームだけはOKっす」なんてありえないんじゃないの?
その可能性に思い至った記者は、「風呂に落としたスマホが、乾かしたら復活した」という都市伝説にすがり、クルマのそこかしこに乾燥剤を大量投入。事件発生の翌週、車内、荷室、エンジンルームともに完全に乾いていることを確認して試運転したところ、バイパーはひとまず問題なく走行し、オーディオも普通に鳴った。
本稿執筆前の最後の走行は、2017年1月22日。今のところ、わがバイパーは正常に走っている。
(webCG ほった)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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