番外編:バイパーとコーヒー<PR>
2017.02.17 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして東京・代官山のおしゃれなカフェに、われらが「ダッジ・バイパー」が出現! 仕事そっちのけでコーヒーを楽しんでいたwebCGほったに、オートバックス代官山店が突きつけたバイパーの“診断結果”とは?
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名車を眺め、コーヒーを楽しむ
まずは本ページ冒頭の写真をご覧いただきたい。駒沢通りに面したきれいなカフェの玄関に、場の空気にそぐわぬ黒いベタンコなクルマが……あろうことか、記者のダッジ・バイパーが展示されている。それも「webCG」の化粧プレートに常駐の警備員(写っていませんが)と、まさに上げ膳据え膳の待遇で。
わが家の暴れんぼうがお目汚しをしているこちらは、東京・代官山の「ポディウムカフェ」。地元ネタで恐縮だが、かいわいの方ならご存じだろう“鎗ヶ崎コーナー”のイン側に位置する、「オートバックス代官山店」のカフェ&ギャラリースペースである。
こういう風に書くと、「ああ、郊外の用品屋さんとかによくある、アメリカンダイナー風のアレね」と思われそうだが、そこは違う。全然違う。わざわざ文字にして説明するのも無粋なので、ここでも荒川カメラマンの見目麗しい写真をご覧あれ。
まあ、無粋といいつつ文字で説明しちゃうのが編集者の性(さが)なのだが、外装と統一感のある木製のカウンターと程よい採光で、とても落ち着けるしゃれた空間になっている。もちろん、店員さんが一杯ごとに豆をひいて抽出してくれるコーヒーは実に美味。注文すると「抽出方法はクレバードリップとエアロプレスのどちらにしますか?」などと聞かれて浅学の徒は緊張するが、安心してほしい。どっちで注文してもうまい。
実はこちら、われらがwebCG編集部のけっこうなご近所で、インタビュー取材の場所をお借りしたり、備品の補充がてらに一休みしたり、お昼のついでに立ち寄ったりと、編集部員もちょくちょくお世話になっている。
目的はもちろん上述のコーヒーなわけだが、重度のカーヲタを自認する記者としては、もうひとつ心引かれるものがあった。店頭にいつも、希少なスポーツカーや往年のヒストリックカーが展示されているのだ。これまでに見かけたものを挙げると、確か「オースチン・セブン」「日産フェアレディZ432」「トヨタ2000GT」「ポルシェ911スピードスター」などが置かれていたはず。
そして、なんと、あろうことか、これらのそうそうたる名車に続き、わがバイパーも期間限定でポディウムカフェに展示されることになったのだ。
みんな気になるマイカーの状態
何の因果か、代官山のポディウムカフェに展示されることになった記者のバイパー。その素行を知る皆さまなら、「あのヘッポコが!?」と噴飯すること請け合いであろう。なぜ、きゃつがかように分不相応な待遇に浴すこととなったのか。まずはその経緯を紹介させていただく。
そもそも始まりは、「結局、自分が買ったバイパーってどのくらいの“程度”のものだったんだろう?」という記者の疑問だった。
中古車オーナーであれば、マイカーの“当たり外れ”や、販売店での管理状態、納車前整備がどれほどマジメにされたかなどが気にならない人はいないだろう。記者も同じで、購入からずうっとそれが頭に居座っていた。頻繁に運転しているし、日々感じるものがないわけではないのだが、他の人のバイパーに乗ったことはないし、そもそも私は自分の感覚をまったく信用していない。自分で分からないのなら、誰かに聞くしかない。
昨年10月の納車から3カ月。記者はついに行動に出た。一度ホントに第三者に見てもらうことにしたのだ。そこで白羽の矢を立てたのが、オートバックス代官山店だった。以前から取材車のタイヤ交換などでちょくちょくお世話になっていたし、長年にわたり代官山かいわいの輸入車、高級車の面倒を一手に見てきたお店である。ダッジ・バイパーなんてけったいなクルマで押しかけても、きっと余裕の笑顔でキーを受け取ってくれるに違いない。
早速編集長のこんどーにこの計画を報告。どうせなら、ちゃんと取材して記事にしよう。せっかくならバイパーを展示してもらったらどうだ? と、トントン拍子で今回のもろもろが決まったというわけだ。
ちなみに、めでたくwebCGのオフィシャルな取材となったにもかかわらず、整備費用は取材経費ではなくオーナー持ちである。今年はぜひボーナスに期待したい。
高級車の街の“クルマ屋さん”
予約の当日、記者はwebCGマーケティング担当のSAGとともにオートバックス代官山店を訪れた。まずは出迎えてくれた警備員にあいさつし、本日の用向きを伝える。朝イチなので先客がいないのか、はたまた予約していたからか、このまますんなり入庫できるという。
SAG:普段はどうなの?
ほった:クルマを預けられるので、先客でピットが埋まっていても待たされるということはあんまりないですね。
そんな会話をしつつ、歩道をまたぎ、清潔なピットにへさきを突っ込んだところでドライバーチェンジ。後はお店のサービススタッフが、スムーズにバイパーをリフトへと運んでくれた。ちなみに、わが相棒の6段MTはワタナベ、折戸とあまたのwebCGメンバーを苦しめてきた難物である。百戦錬磨のサービススタッフとはいえ、多少はギクシャクするんじゃないかと思っていたのだが、そのスムーズな操作に正直拍子抜けした。運転ベタのオーナーとしては、ちょっと複雑なキモチである。
また、ピットの端で意地悪く観察していても、どのスタッフにもクルマを前に物おじしている様子は見られない。見学中の記者に「バイパーの下まわりは手を差し入れられるスペースが限られているから、大変なんですよ~」などと説明しつつ、皆テキパキと作業を進めていく。さすがは高級車の街・代官山の“クルマ屋さん”だ。17年落ちのアメ車ごときで気後れしていては、話にならないのだろう。
待ち時間を利用してドライビングウエアを物色
いつもの威勢はどこへやら。リフトの上でされるがままのバイパーをよそに、記者とSAGはピットを出てポディウムカフェで休むことにした。ちなみに、オートバックス代官山店には34台分の駐車スペースがあり、普通に「出勤前にマイカーを預け、退社後に整備済みのクルマを受け取って帰る」なんて芸当も可能だ。しかし、われらの場合クルマを預けて編集部に戻っても、仕事が待っているだけ。取材にかこつけてコーヒーを飲んでた方がよっぽどハッピーである。
めいめいに好みのコーヒーを注文したら、例のごとく抽出の待ち時間を利用して、店内を物色。ポディウムカフェの物販エリアはフロアと壁の一面が木張りとなっており、ちょっとしたブティックのような趣である。実際、取り扱われる商品はドライビングシューズやドライビンググローブ、サングラスなどといったウェアラブルなアイテムが主。試しに、分不相応にも「ネグローニ」のドライビングシューズに足を通してみたのだが、やわらかい履き心地に驚いたというか癒やされた。無粋者ゆえ語彙(ごい)が貧相で恐縮だが、ドライビングシューズうんぬんの前に、すごくいい靴という感じ。いい靴って、履いたら気持ちいいですよね?
もし記者がこれを購入したら、今ドライビングシューズ代わりに使っているオンボロコンバースはお役御免か。これ履いて試乗会に行ったら、ふだんオシャレぶってる評論家先生やカメラマンはどんな顔するかな? ケケケケ……。
そんな妄想を楽しみつつコーヒーを飲んでいたところ、ピットからサービススタッフが記者を呼びに来た。バイパーの整備が終わったのだ。
意外にも健康優良児
今回、バイパーに施された整備の内容は、以下の通りである。
- オイル交換
- パンク修理
- その他、一般整備(せっかくなのでグリスアップ)
……本当にこれだけ、これだけである。費用は締めて3万0813円ナリ。十余年前、職場の上司から30万円で購入した「ローバー・ミニ」は、1年目にして18万円の修理費がかかった。その6分の1である。
「エンジンにもトランスミッションにもにじみはないし、リアデフを含め下まわりもキレイです。古いアメリカ車だと聞いてみんな覚悟していたんですけど、非常にいい状態なので逆に驚きました」(店長の橋本 学さん)
いやいや、記者も驚いていますよ。そして困ってしまいましたよ。本来なら「こんなにトラブルが一杯、どうしましょう!」となるはずだったのに、無問題の太鼓判をもらっていたのではエッセイのネタにならん。整備内容の一覧を見て、「……お前、モービル1を9リッターも飲んだのかよ」などとひとりごちるのが関の山ではないか。どうしてくれる。
……というのは、まあ冗談である。
カキン、カキンという気持ちいい音とともにホイールが固定されていくバイパーを眺めつつ、記者はそもそも、こんなにすんなり点検・整備が済んだことに戸惑っていた。
私事で恐縮だが、私はあまり、この手のメンテナンスや用品装着などのサービスをすんなり受けられたことがない。ミニに乗っていたころは、バッテリー交換や壊れたオーディオの換装をしぶられていやな思いをしたし、出先で止まってしまった際には、ロードサービスに紹介された整備工場に「ウチでは見られないからよそに行ってくれ」と言われたこともあった。ちょっとめずらしいクルマに乗っている人なら、大なり小なり、こうした経験はあるはずだ。
→Podiumの公式フェイスブックはこちら
→オートバックス代官山店の公式フェイスブックはこちら
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ご近所でクルマを見てもらえるありがたさ
もちろん、そうした用品屋さんや整備工場を一方的に非難するつもりはない。ミニもバイパーも特殊なクルマなわけで、それに合った工具や設備……例えば、旧英国インチ規格のスパナや、幅345サイズのタイヤに対応したタイヤチェンジャーなど……がなければ、お店としては「ウチではムリ!」としか答えようがないだろう。
だからこそ、編集部のこんな近所で、バイパーなんて珍奇なクルマの整備が受けられたこと自体に、記者は本日2度目の拍子抜けをしてしまったのだ。
帰りがけ、サービススタッフの手によって丁寧に展示されたバイパーを眺めていたら、ドイツ製の高級車を積んだ積載車が2台、立て続けにピットの前に横づけするのが見えた。スタッフのひとりに「SOSですか?」と尋ねたところ、涼しい顔で「そのようですね」とのこと。このお店としては、そんなにめずらしいことではないのかもしれない。ミニの救済を断られたときのことを、ちょっと思い出す。
今回の点検整備に対する3万円の費用について、同じ内容で、もっと安く施行してくれるお店がないわけではないだろう。それをもって「この値段は高い!」と主張する人もいるかもしれない。しかしミニ、バイパーと乗り継いできた記者は、そうは考えていない。幅広いクルマを受け入れてくれるお店のありがたみが、身にしみているからだ。マイカーの面倒を見てくれるお店が身近にあることの安心感は代え難い。「技術にお金を払う」というのは、要するにそういうことなんだろう。
(文=webCG ほった/写真=荒川正幸)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。