第431回:「NV350キャラバン」の荷室には夢が一杯!
メディア対抗カート大会にwebCGチームが参戦
2017.08.11
エディターから一言
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「日産NV350キャラバン」のマイナーチェンジを記念して(?)開催されたメディア対抗カート大会に、webCGチームが参戦。レインコンディションで行われた、熱いバトルの様子をリポートする。
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個人所有が40%を超える
NV350キャラバンとカート? 不思議な組み合わせと思われるかもしれないが、実はNV350キャラバンはその広大な荷室を生かした、趣味のクルマとしても人気である。カート以外にも自転車やオートキャンプ、サーフィンなどに用いられることが多いそうだ。シゴトはもちろん、アソビにおいても広い荷室は正義である。まずはそのNV350キャラバンの話を少々。
いわゆる商用車は、法人登録(社用車)が販売の主流となるのが当たり前で、同じ日産の「NV150 AD」や「NV200バネット」をみると、個人登録されるクルマはそれぞれ5%、19%にすぎない。ところが、NV350キャラバンの場合は個人登録が41%にも上るという。もちろん、個人事業主の職人さんが仕事のアシとして使うものが大半を占めると思われるが、それでも“ウチのクルマ”として所有する人が半分近くもいるということに驚く。NV350キャラバンは、平日は仕事のアシに、休日は荷物をたっぷり積んでレジャーにと活躍しているのである。
2016年のデータでは、NV350キャラバンのセグメントシェアは約26%で、一見すると上々の数字といえなくもない。しかし、キャブオーバーバンのセグメント自体がNV350キャラバンを含めて2車種で構成されているので、実はライバルの後塵(こうじん)を拝している状態にある。日産の資料では競合車Aとなっているが、ライバルとは「トヨタ・ハイエース」である。なるほど、“A”はエースか。
そのため、今回のマイナーチェンジでは70%以上のシェアを誇るハイエースに追いつけ追い越せという内容の改良が行われた。デザインに優劣をつけられるものではないが、フロントグリルやバンパーがより押し出しの強いものとなり、さらにリアコンビランプがLEDとなったり、ドアミラーにクロームメッキが施されたりした。個人所有が多いため、カッコよさは非常に大事なポイントらしい。
また、衝突回避を支援する「インテリジェントエマージェンシーブレーキ」を「バン」の全車で標準装備としたほか、頭上から見下ろしたような映像を見ながら駐車できる「インテリジェントアラウンドビューモニター」や、リアゲートを自動で開閉できる「バックドアオートクロージャー」も新たに設定された。この3つの装備は、現時点でハイエースには用意されておらず、日産が一歩先んじた形である。
2020年の東京オリンピックに向けて、キャブオーバーバンのマーケットは安定推移が見込まれている。トヨタも日産の抜け駆けを許さないだろう。NV350キャラバンVSハイエースの熱い戦いはまだまだ続く。
そして、熱い戦いといえば、今回のカート大会である。
勝利への近道とは!?
参戦したのは筆者とwebCGほった、そしてwebCGでもおなじみの田村 弥(わたる)カメラマンである。
ちなみに筆者はカート初体験、ほったは3回目、そして田村氏はレースカメラマンであるだけでなく、自らサーキット走行などにも参加する、根っからの走り好き。カートの腕前も相当なものである。つまりwebCGチームは、田村カメラマンに撮影だけでなくメインドライバーもやってもらおうという計画のもとに結成されたのであった。これぞ勝利への近道といえるだろう。
初心者の筆者から練習走行に臨むが、当日の天候は大雨。水の浮いたコースにスリックタイヤでは、どうしたって滑る。他チームにペースを合わせようとして走ると、くるっとスピンしてしまう。ほかのドライバーがスピンを繰り返していない以上、雨だけがスピンの原因ではなく、おのれの腕前との“相乗効果”によるものといえるだろう。うーん、どうしたものか。練習といっても10分程度のもので、コツをつかむには短すぎる。これといった対策も思いつかないまま、5~6回のスピンを繰り返し、筆者は練習走行を終えたのだった。
次にwebCGほったの練習走行を見学する。各コーナーをじっくりと攻め、スピンの気配すら感じさせない。実に安定感にあふれた走りだ。さすが先輩である。田村カメラマンに「ウチのほった先輩、やりますね♪」と言ってみたところ、「いや、あのー、あれはちょっと遅いんじゃないかな……」。確かに安定してはいるが、ほかのマシンとはスピードが違いすぎて、どんどん離されていってしまっている。競技用タイヤを履いた8リッターV10マシンなどをマイカーにしておられるので、雨のドライブに対して過剰に慎重になってしまうのだろうか。しばらくすると、本人も周りとのペースの違いに感づいたのか、少しペースを上げ、スピンを繰り返し始めた。田村カメラマンにかかる重圧がグンと増す。
チームの練習時間を2人で使いきってしまったため、田村カメラマンは練習なしで予選に臨むことになった。というか、練習なしのドライバーを予選のトップバッターに起用せざるを得ない、webCGチームの(シロウトが2人という)苦しい事情をお察しいただきたい。しかし、その走りはさすがの一語である。スロットルのオン/オフやブレーキポイントなどが的確で、トップ集団に食い下がる。田村カメラマンの腕があれば、ひょっとしてひょっとするのではないか。
田村カメラマンの奮闘
いよいよ決勝へ。レースは30分間の耐久形式で行われ、周回数の多いチームが勝利となる。途中で2度のピットインが義務付けられており、webCGチームはそのタイミングでドライバーチェンジを行うことにした。1人10分間の走行×3である。先頭で切り込むのは筆者。練習走行のあとはうまいドライバーの見学を重ね、走るイメージだけはできている。
とはいえ、そんなに簡単にことが運ぶなら練習なんかいらないわけで、実際のレースは苦戦続き。スピンを繰り返し、あっという間にトップチームに周回遅れにされてしまった。分かってはいても悔しいものである。しかし、周回遅れになったあとに得られた収穫もあった。トップチームのドライバーはものすごく上手で速かったのだが、彼らのラインをなぞるようにすると、とてもスムーズに走れたのだった。「ちょっと分かった」と思ったところで10分が経過し、ピットインの指示が。分かりかけたところで終わる、人生ってこういうことが多いですね。
そして2番手ドライバーのwebCGほったにチェンジする。筆者ほどスピンは多くないものの、相変わらずの“安全運転”であり、webCGチームに浮上の兆しは見えない。ちなみにほった先輩は日常の運転がヘタではない。本人いわく“競走”が苦手だそうである。
わがチームは、いよいよエースドライバーである田村カメラマンにステアリングを託す。勝機を失ってからの出番で申し訳ないのだが、その走りにモチベーションの低下はまったく感じられない。前2人のドライバーが散々周回遅れになっているため順位は分からないが、周囲のマシンをリードするくらいのペースで周回を重ねていく。
最後の2ラップ。冷静な走りをキープしてきた田村カメラマンが見せたスピンが、最後まであきらめないで攻めていることを雄弁に物語っている気がした。
しかし現実は残酷で、webCGチームは5メディア中の5位。ぐうの音も出ない結果だが、田村カメラマンの「大会じゃなくてもいいから、また絶対やろうよ」の言葉が救いだった。
NV350キャラバンのマイナーチェンジとカート大会。最初は「風が吹けば桶屋がもうかる」みたいな話だなと思っていたが、カートの楽しさを教えてもらい、今では感謝の思いで一杯である。日産にはこれからもどんどんNV350キャラバンに改良を加えていただき、そのたびにわれわれのカートの腕を鍛えていただきたい。これこそ風が吹けば……かな?
(文=webCG藤沢 勝/写真=田村 弥)

藤沢 勝
webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。