ランボルギーニ・アヴェンタドールSクーペ(4WD/7AT)
これぞスーパーカー! 2017.09.07 試乗記 740psという途方もないパワーを備え、350km/hもの最高速を誇る「ランボルギーニ・アヴェンタドールS」に試乗。この地をはうかのごときファイティングブルは、ランボルギーニのフラッグシップモデルであると同時に、スーパーカーの中のスーパーカー! とたたえるにふさわしい存在感に満ちていた。いざ公道へ
豪雨の鈴鹿サーキットで、あろうことかの一発勝負!――率直なところ、「テストドライブどころではなかった」あの“悲劇のサーキットイベント”の日からはや2カ月。
絶対に、もう一度乗ってやる! と、ひそかに誓った(?)そのチャンスは、意外にも早く訪れた。車両はもちろんランボルギーニブランドの頂点に立つアヴェンタドールSだ。
“グリッターブルー”と称する目の覚めるようなボディー色や、エクステリアにちりばめられたさまざまなカーボンファイバーパーツ類。その他、そこに装着をされた実に1000万円超(!)分というオプションアイテムから判断すると、今回用意されたモデルは、どうやら鈴鹿で一瞬触れた個体と同一である可能性が濃厚。
そんなフラッグシップランボルギーニをあらためて借り出し、今度は一般道上でテストドライブと相成った。
それにしても、ミニバンにコンパクトカー、さらには商用バンにタクシー……と、“一般車両”が幅を利かせる道へと降り立ったアヴェンタドールSが放つ、オーラのほどはハンパなものではない。
異形(いぎょう)というのは、まさにこうした物体にこそふさわしい言葉。路肩に佇(たたず)むこのモデルの姿は、端的に言って“違和感”の塊そのものでしかなかったのだ。
アヴェンタドールならではの強烈な記号である跳ね上げ式ドアを開き、ドライバーズシートへと身を委ねると、そこにもまた異次元の世界が広がる。昨今流行のハードスイッチ削減という動きにはまるで背を向けたかのように、多くのスイッチ類が並ぶダッシュボードとセンターコンソールに目をやり、走り始めてからまごつかないように、と、まずは自身での“コックピットドリル”を実行。
その後、センターコンソール上でもひときわ目立つ真っ赤なカバーを跳ね上げ、中にあるスイッチをプッシュ。そう、もはや完全に「ロックオンした敵機にミサイルを撃ち込む」に等しいそんな儀式を経ると、背後にマウントされた巨大な6.5リッターV型12気筒ユニットは、ごう音とともに目を覚ますことになる。
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それもスーパーカーの宿命!?
千差万別の考えを持つ人々が、さまざまな種類のクルマをドライブする巨大都市の混合交通の中を、こうしたモデルで煩雑な流れに乗っていかなければならないのは、率直なところ楽しい作業ではない。
トランスミッションは2ペダル式ゆえ、法規上は“AT免許”取り立てのドライバーでもドライブはOK。大排気量エンジンなので低回転域のトルクは十二分で、取りあえず移動をさせるだけならば、確かにビギナーにも難しい事は何もないはずだ。
けれども、2m超の幅からさらにミラーが大きく張り出したボディーは、渋滞中に脇を二輪車ですり抜けられるだけでもドキドキもの。何しろ、総額5500万円超という“不動産価格”の借り物を、周囲がどんな人たちか分からない中で走らせるのだから、考えようによっては「サーキット走行以上に緊張を強いられる」のがこうした場面でもあるのだ。
それでも、外観から察する限りは“絶望的”と思われそうなルームミラー越しの光景を含めて、想像よりは視界に優れていると同時に、渋滞気味の複数車線道路を進んでいく中でも、強引な車線変更を仕掛けられるような場面が皆無だったのは救いといえば救い。
なるほど、“逆の立場”を想像してみれば、できれば「関わりになりたくない」のがこうしたいかにもスーパーカー然としたルックスの持ち主であるかもしれない。
そうこうしているうちに、あっさりと最寄りの首都高入り口へと到達。当然のごとく左ハンドル仕様だが、こんな時に何よりもありがたいのが、今やあらゆる車両で標準装備の扱いとなったETCの車載器である、というのは、もはや言うまでもない事柄だろう。
やはりDCTがほしい
アクセルペダルを踏む力を、ほんの気持ちだけ上乗せしたつもりでも、瞬時にそれに反応して気持ち良く速度を増していってくれるのは、大排気量自然吸気エンジンの持ち主ならではの美点。2ペダルMTながら、オートモードを選択して走行しても違和感が少ないのは、あり余るエンジンパワーゆえ簡単にはキックダウンは行われず、「強い加速力が欲しくてアクセルペダルを深く踏み込むと、変速のため逆に駆動力が途切れてしまう」というこの種のトランスミッションが最も苦手とするシーンに遭遇をしづらいからだ。
周辺ライバルの多くがすでにDCT(デュアルクラッチトランスミッション)化を完了させ、自身でも弟分の「ウラカン」には“LDF”と称するDCTを採り入れた一方、アヴェンタドールでは「重量やサイズの面から、シングルクラッチ式が最良」とうたいつつ採用を続けているのは、さすがに今となっては少しばかり言い訳がましい印象が否めず。
駆動力伝達のダイレクト感はDCTも十分高いし、サーキットのラップタイムにフォーカスしても、有利なのはシームレスな変速が実現されるDCTにあるのは明白。何よりも、タイヤグリップの限界ぎりぎりを使っての走りの場面では、わずかなシフトショックが挙動不安定の引き金となりそうな気配を、先日のヘビーウエットの鈴鹿サーキットで身をもって体験しているのだ。
かくして、8400rpmにして740psという超高回転・超高出力型のエンジンに対応できるユニットが存在するならば、「すぐにでもDCTに切り替えたい」というのが開発陣の“本音”であろうと想像がつく。
ランボルギーニからも、12気筒エンジン+DCTというパワーパックの持ち主が登場するのは、きっと「時間の問題」に違いない!
740psに負けないシャシー
こんなモデルが秘めたパフォーマンスをすべて解放させられるのは、もはやサーキットしかあり得ない……と、それは承知の上で、走りの実力の一端を味わうべく、アヴェンタドールSをワインディングロードへと持ち込んだ。
前述のように、700psをはるかにオーバーする“天文学的パワー”を発する心臓を搭載しつつも、意外にも「それに振り回される」という感覚を受けることがなかったのは、総合的なシャシーポテンシャルの高さを証明した格好だ。
4WDシステムの採用で駆動力が4輪に分散されることはもとより、ボディー骨格の強靱(きょうじん)さやこのブランド初の4WSシステム、さらにはタイヤのグリップ能力の高さなどが、お互いタッグを組んでモノをいっているのは間違いない。
もちろん、すさまじく速いのは間違いはないが、言うなればそれが「何とか手の内にある」という感覚。ただし、先日の鈴鹿サーキットでの印象を振り返れば、それは「あくまでも、路面がドライであれば」とただし書きが付くものでもあるのだが。
一方、ちょっと腑(ふ)に落ちなかったのはテストドライブ中、常に「直進性が期待値に届かない」という印象を伴ったことで、例えばそれは、「カタログ上のトップスピードである350km/hは、かなりの緊張を伴うのでは」と、そんな想像もつく。
いや、もしかするとそうしたシーンでこそアヴェンタドールSならではの可変空力デバイスが効果を発揮するのでは……とも思える一方で、鈴鹿サーキットでやはり直進性に乏しく思えた、同じ個体に乗った某同業氏から耳にした、「スペインでの国際試乗会で乗ったモデルは、こんなではなかったのに……」という言葉が、妙に心に残っていたりもするものだ。
それはともかく、そのルックスから加速力、サウンドから価格に至るまで、何もかもが“常識破り”であることこそが、スーパーカーのスーパーカーたるゆえんではありそう。
まさに「夢の一台」と締めくくるにふさわしい頂点のモデルなのである。
(文=河村康彦/写真=池之平昌信/編集=竹下元太郎)
テスト車のデータ
ランボルギーニ・アヴェンタドールSクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4797×2030×1136mm
ホイールベース:2700mm
車重:1575kg(乾燥重量) ※車検証記載値1890kg
駆動方式:4WD
エンジン:6.5リッターV12 DOHC 48バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:740ps(544kW)/8400rpm
最大トルク:690Nm(70.4kgm)/5500rpm
タイヤ:(前)255/30ZR20 92Y XL/(後)355/25ZR21 107Y XL(ピレリPゼロ)
燃費:16.9リッター/100km(約5.9km/リッター 欧州複合モード)
価格:4490万4433円/テスト車=5509万0453円
オプション装備:エクステリアカラー“Blue Nila”<グリッターブルー>(51万8400円)/カーボンファイバー製エンジンボンネット(86万4000円)/エクステリア・カーボンファイバー・パッケージ<底部>(186万9264円)/カーボンファイバー製エンジンカバー<T型>(25万9200円)/カーボンファイバー製エンジンベイトリム(43万6644円)/ヴィジブル・カーボンファイバー製エクステリア・ディテール(65万4804円)/カーボンファイバー製フレーム<X型>(53万2656円)/ブレーキキャリパー<ブラック>(14万5044円)/ヴィジブル・カーボンファイバー製ホイールキャップ・カバー(8万1864円)/ディアンテュス・フォージド・リム<シルバー、20インチ/21インチ、レッドのセントラルロック>(47万7468円)/Sensonumプレミアム・サウンドシステム(44万2800円)/パークアシスト・システム(51万8400円)/ビジビリティおよびライト・パッケージ(17万8632円)/マルチファンクション・ステアリングホイール<パンチングレザーのインサート>(16万7400円)/シートヒーター付き電動調節式シート(44万2800円)/ランボルギーニ・テレメトリ(20万4660円)/ブランディング・パッケージ<レザー>(11万3940円)/インテリア・ディテール<ハイグロスブラック>(10万8756円)/リアベンチ、シルカバーの内部パーツ<レザー>(10万2384円)/カラーステッチ(9万7416円)/新トリムのインテリア<レザー>(34万1064円)/ルーフライニング、ピラー、ウインドスクリーン・フレーム<レザー>(11万5344円)/インテリア・カーボンファイバー・フルパッケージ(128万5740円)/スポルティーヴォ・インテリア(22万7340円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:3779km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:211.9km
使用燃料:64.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:3.3km/リッター(満タン法)/4.4km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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