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ホンダ CBR250RR(MR/6MT)

精巧すぎるミニチュア 2017.09.16 試乗記 田村 十七男 250ccの排気量で動力性能を極める……。ここにきて再燃の兆しを見せる“ニーハン”クラスのバイク競争に、ホンダがニューモデル「CBR250RR」を投入した。由緒正しき“RR”の名を冠する、小さなスーパーバイクの実力を試す。

今も“250ccクラス戦争”は続いている!?

言い訳や逃げ口上ではなく、素性を明らかにしようとする正直さで告白すれば、二輪専門ジャーナリストではないので二輪界の情報にはすっかり疎かったわけです。だからこそ驚いたんですね。今になって本気度が高すぎる250ccクラスのスーパースポーツをホンダが出すことに。その背景のひとつには、ちょっと大げさに言えば1980~1990年代の過激なオートバイブームをほうふつとさせるような、国内4メーカーの250ccクラス戦争が現在も続いていることが挙げられます。

カワサキの「ニンジャ250SL」やヤマハの「YZF-R25」に加え、スズキは今年の4月に「GSX250R」を発表。そんな具合にどのメーカーも懐かしい名前を付けたフルカウルのスポーツモデルを販売しています。ホンダもまた「CBR250R」を同クラスの戦場に送り込んでいましたが、同モデルの生産終了を見越して新型を投入。しかも名称はこれまた懐かしい“RR”。その辺の経緯をほほ笑ましく感じられるのは世代のご褒美かもしれません。しかし、ブランニューのCBR250RRの本気度は決して笑えないものでしたが。

CBR250RのDOHC 4バルブ単気筒エンジンをDOHC 4バルブ直列2気筒に刷新。最高出力も29ps/9000rpmから38ps/12500rpmに向上。250ccで回転数1万超えってのも“インラインフォー時代”のCBRを思い起こさせます。

さらに、クラス初の「スロットル・バイ・ワイヤ・システム」を採用。電子デバイスの高度化に伴い、「Sport」「Sport+」「Comfort」の3タイプのライディングモードが選べるお楽しみを追加しています。

250ccクラスのスーパーバイクとして2017年4月にホンダが発表した「CBR250RR」。既存のモデルからの流用ではなく、スタイリングデザインや車体、パワーユニットなど、すべてが新開発された。
250ccクラスのスーパーバイクとして2017年4月にホンダが発表した「CBR250RR」。既存のモデルからの流用ではなく、スタイリングデザインや車体、パワーユニットなど、すべてが新開発された。拡大
エンジンは249ccの水冷2気筒DOHC。高回転化によるピークパワーの向上と、バルブタイミングの最適化による低中回転域の力強さを同時に実現している。
エンジンは249ccの水冷2気筒DOHC。高回転化によるピークパワーの向上と、バルブタイミングの最適化による低中回転域の力強さを同時に実現している。拡大
ライディングモードの選択時に使用する、左ハンドルのモードスイッチ。走行中でもスロットルグリップを全閉にすれば、モードの切り替えが可能となる。
ライディングモードの選択時に使用する、左ハンドルのモードスイッチ。走行中でもスロットルグリップを全閉にすれば、モードの切り替えが可能となる。拡大
車両骨格には、新設計となる鋼管トラス構造のフレームを採用。アルミ製のスイングアームについては、右側のアームを「く」の字に折り曲げることでマフラーの張り出しを抑え、スリムな車体と深いバンク角を実現している。
車両骨格には、新設計となる鋼管トラス構造のフレームを採用。アルミ製のスイングアームについては、右側のアームを「く」の字に折り曲げることでマフラーの張り出しを抑え、スリムな車体と深いバンク角を実現している。拡大
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性能も価格も本気としか言いようがない

圧巻というべきはスタイリング。よりコンパクトで凝縮感を高めたフレームを包むカウリングの造形テーマは「スピードシェイプ」。エッジを立てた細部の集合体は、おっしゃる通り見るからに速そうなスタイルです。特にヘッドライト周辺のつくり込みは極めて繊細。全体的にギュッと締まった印象で、すばしっこさにかけては校内一の同級生を思い出しました。足が速くてうらやましかったな。

そんなこんなで随所に手をかけたCBR250RRのお値段は、税込み75万6000円から82万8360円。単気筒のニンジャが50万円以下。2気筒のGSX250RとYZF-R25が50万円代。価格の面でもライバルを大きく引き離しました。本気、としか言いようがないでしょ。

そんな運動神経にたけた同級生、いやCBR250RRに乗ってみると、見た目のエッジ感に反して、と評したら誤解を受けそうですが、要するにホンダらしい安定感に満ちた品行方正さを強く感じました。身長175cmの自分からすれば余裕のある車格だし、2気筒38psのエンジンにも破綻や破滅の予感は皆無。ただ、レブカウンターに刻まれたレッドゾーンは1万4000回転からなので、そこまで行けば違う景色を見せてくれるのかもしれません。

しかし、街中では1万回転すら回す必要はないんですよね。けっこうトルクがあるので気付けばすっすとシフトアップしちゃってる。ライディングモードの変更も体感できる差異はあれど、CBR250RRの秘めたるスペックを全解放するならミニサーキットだろうと思いました。

シャープな上下2段式のヘッドランプが目を引くフロントまわり。デザインの自由度を高めるため、灯火類にはいずれもコンパクトなLEDを採用している。
シャープな上下2段式のヘッドランプが目を引くフロントまわり。デザインの自由度を高めるため、灯火類にはいずれもコンパクトなLEDを採用している。拡大
メーターはデジタル式で、車速やエンジン回転数、ギアポジションに加え、ライディングモードの確認も可能。任意に設定したシフトタイミングをLEDの点灯・点滅で知らせるREVインジケーター機能や、ラップタイマー機能なども搭載されている。
メーターはデジタル式で、車速やエンジン回転数、ギアポジションに加え、ライディングモードの確認も可能。任意に設定したシフトタイミングをLEDの点灯・点滅で知らせるREVインジケーター機能や、ラップタイマー機能なども搭載されている。拡大
「CBR250RR」のデザインは、エッジの効いた複雑なカウル形状も特徴のひとつ。機能的な工夫も施されており、ロアカウルはエンジンまわりに積極的に空気を導き、冷却をサポートする形状となっている。
「CBR250RR」のデザインは、エッジの効いた複雑なカウル形状も特徴のひとつ。機能的な工夫も施されており、ロアカウルはエンジンまわりに積極的に空気を導き、冷却をサポートする形状となっている。拡大
フロントサスペンションは、バネ下重量の軽減と高い路面追従性をかなえる倒立タイプ。リアサスペンションはプロリンク式で、5段階のプリロード調整機構が備わる。
フロントサスペンションは、バネ下重量の軽減と高い路面追従性をかなえる倒立タイプ。リアサスペンションはプロリンク式で、5段階のプリロード調整機構が備わる。拡大
ボディーカラーは「マットガンパウダーブラックメタリック」と「ソードシルバーメタリック」に、テスト車の「ヴィクトリーレッド」を加えた全3色。価格はヴィクトリーレッドのみ2万1600円のプラスとなる。
ボディーカラーは「マットガンパウダーブラックメタリック」と「ソードシルバーメタリック」に、テスト車の「ヴィクトリーレッド」を加えた全3色。価格はヴィクトリーレッドのみ2万1600円のプラスとなる。拡大
マフラーは右側2本出し。サイレンサー内は3室に分けられており、そのうちの2室と3室に個別に排気管を設けるデュアルテールパイプ構造となっている。これにより、低回転域では力強いサウンドを、中高回転域ではレーシングマシンを思わせる高揚感のあるサウンドを楽しむことができるという。
マフラーは右側2本出し。サイレンサー内は3室に分けられており、そのうちの2室と3室に個別に排気管を設けるデュアルテールパイプ構造となっている。これにより、低回転域では力強いサウンドを、中高回転域ではレーシングマシンを思わせる高揚感のあるサウンドを楽しむことができるという。拡大
“RR”シリーズに共通する「トータルコントロール〜操る楽しみの最大化」というテーマをバックボーンに、「直感、体感、新世代“RR”」というコンセプトのもとに開発された「CBR250RR」。価格は、仕様に応じて75万6000円~82万8360円となっている。
“RR”シリーズに共通する「トータルコントロール〜操る楽しみの最大化」というテーマをバックボーンに、「直感、体感、新世代“RR”」というコンセプトのもとに開発された「CBR250RR」。価格は、仕様に応じて75万6000円~82万8360円となっている。拡大

凝縮と縮小の絶妙なバランス

で、この本気の“リトル・スーパースポーツ”にはどう乗るのがふさわしいのかを考えてみたわけです。

今回のCBR250RRを除くと、日系メーカーの250(スーパー)スポーツは、いずれもアジア各国で生産されています(まあCBRも日本で生産されているので、アジアといえばアジアですが……)。それに鑑みると、この手のモデルが、新興国の需要に応えるものなのだろうと推察できます。

じゃ、日本の僕らはどうか。何しろCBRやニンジャやYZFやGSXに懐かしさを禁じ得ない経験があり、いずれのモデルもいかに新型とはいえ、アジアの人々とは異なるフィルター越しに見てしまうのは避けられません。

ここに至り、CBR250RRの第一印象を述べます。それは、「精巧なミニチュアカー」でした。その筋に詳しい方ならすぐにブランド名が浮かぶだろうけど、あるでしょ。細部まで正確かつ多少のデフォルメを加えることで再現性を高めたミニカーが。オートバイだからカーではないですね。そこは突っ込まないでほしいのですが、いずれにせよ非常によくできているおかげで趣味性と物欲を歓喜させる高級品であると、そう感じたのです。

「ミニカーは走らない」。そういうツッコミも理解できますが、個人的なCBR250RRの印象をひと言に凝縮すれば、ハイエンド・ホビー感です。走らそうと思えば相当な力があると知りつつ、“ニーハン”の気楽さを生かしてさらっと街を流す。凝縮と縮小の絶妙なバランスを見せるCBR250RRをそんなふうに楽しめるのは、さまざまな経験で培った余裕を身につけた大人だけだと思うのですが、いかがでしょう。

(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)

 
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【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2065×725×1095mm
ホイールベース:1390mm
シート高:790mm
重量:167kg
エンジン:249cc 水冷4ストローク 直列2気筒 DOHC 4バルブ
最高出力:38ps(28kW)/12500rpm
最大トルク:23Nm(2.3kgm)/11000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:40.1km/リッター(国土交通省届出値 定地燃費値)/26.7km/リッター(WMTCモード)
価格:82万8360円
※数値は外装色「ヴィクトリーレッド」のABS装着車のもの。

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