レクサスRZ350e“バージョンL”(FWD)
これがひとつの完成形 2026.02.16 試乗記 「レクサスRZ」のエントリーグレードがマイナーチェンジで「RZ300e」から「RZ350e」へと進化。パワーも一充電走行距離もググっとアップし、電気自動車(BEV)としてのユーザビリティーが大幅に強化されている。300km余りのドライブで仕上がりをチェックした。350eのセリングポイント
レクサスとしては初めてのBEV専用モデルとなるRZに2025年12月末、大きなマイナーチェンジが施された。といっても外装の意匠に変更はないが、バッテリーやパワーマネジメント、eアクスルも刷新、それに伴いシャシーも見直され……と、中身はベースモデルである「bZ4X」の進化を反映しつつ全面的に変更を受けている。加えて独自性として、7年以上の時を費やしたステアバイワイヤがいよいよ一部グレードに採用された。
と、そんなRZのなかで、最も廉価なグレードとなるのがこの350eだ。といっても、単なる引き算で安さを実現……とは意味合いが違っていて、2モーターの上位グレードに対して150km以上長い733kmの航続距離を達成している。最も足の長いRZというのが350eのセリングポイントということになるわけだ。一方でモーターの最高出力も前任の「300e」に対して1割余高い167kW=227PSを発生。0-100km/h加速も7.5秒と十分な動力性能を確保した。そして価格は790万円。これは300eに対して30万円安い値づけとなる。
補助金制度は手厚いけれど……
だからBEVは買い時が難しい……という話にもなるわけだが、そこに加えて今期は1~3月末までCEV補助金が最大130万円へと増額。350eはそれを満額頂戴できる見込みだ。さらに登録地の自治体によっては独自に充てがわれる助成金もあり、東京都の場合だと最大55万円が上乗せされる。これらを組み合わせれば「NX350h」の“バージョンL”よりも安くなるわけで、レクサスだけでなく国からも自治体からもRZ買いをあおられている状況にあることは感じとっていただけるだろうか。
背景にはCO2削減目標の国際公約や、エコカー補助金の非関税障壁化を指摘したアメリカに対する配慮があるわけだが、個人的には高額な補助金や助成金で販売をかさ上げするやり方は健康的ではないと思う。そうして安くなったぶんだけ残存価値がさっさと目減りしてしまうのは他のBEVの中古車価格が示しているわけで、さながら原資の税金を市場に溶かしてしまっているようにもみえなくはない。そもそも需要があるところから適価で求められて収めるのがビジネスの基本だ。買い手がもらえるものはもらっとこうというのは無問題だが、つくり手や売り手がそれをアテにしすぎては、後々自分の首を絞めることになるだろう。
数字には表れない“扱いやすさ”
RZ350eの主要コンポーネンツは日本のサプライヤーから供給されている。300eと同寸ながらエネルギー密度を高めた新しい角形バッテリーセルは、トヨタとパナソニックの共同出資となるプライムプラネットエナジー&ソリューションズ=PPESの姫路工場で製造されており、この密度向上によってバッテリー容量は71.4kWhから74.69kWhに向上した。
SiC素子を用いた新型インバーターの採用やケーシングのリデザインなど、効率向上のために全面的に変更されたeアクスルは、デンソーとアイシンが主体となるブルーネクサスが供給を担当している。加えてOEMが市場からのフィードバックも踏まえて充放電のマネジメントをしっかり磨き上げたことで、航続距離の大幅な伸長や充電能力の向上が達成できたわけだ。
新しいRZはその走りだしからマイナーチェンジによる進化のほどをしっかり伝えてくる。10km/h以下の極微低速からのコントロール性はより精細化し、歩くほどの速さから高速巡航域まで思い描く速度にアクセル操作でシームレスにもっていける、そういうリニアリティーはさらに向上した。それに加えて加速力をはじめとした動力性能的には日常のアシとして十分なところが確保されているから、もはやドライブモードの必要性も感じない。デフォルトですこぶる気持ちよく走り、止まることができる。
もはや長距離ドライブも余裕
RZのコーナリングについてうんぬんするなら2モーターの四駆モデルが適任だろう。でも1モーター前輪駆動の350eに乗っても、それらのベースとしてのスジのよさが感じられる。低重心からなる安定感はそのままに、120kgの重量差が効いているのだろう、切り返しなどでの身のこなしは明確に軽やかだ。クローズドコースでの速度域なら回頭性や旋回スピードに後ろ蹴りとの差は表れるだろうが、ワインディングロードを走るくらいの乗り方であれば、トルクステアやアンダーステアが顔をのぞかせるようなことはない。
RZが用いるe-TNGAプラットフォームは、北米向けの「ハイランダー」などもカバーするGA-Kプラットフォームとの関連もあるわけで、相当大きなマスにも対応できる素地があるのだろう。ちなみに間もなく登場する「トヨタbZ4Xツーリング/スバル・トレイルシーカー」は、このe-TNGAプラットフォームをベースに、積載力やけん引力を高めてヘビーデューティーユースにも対応できるものになるという。
今回の試乗では充電を絡めて長距離を走る機会はなかったが、ほぼ同仕様となるbZ4Xで東京から名古屋方面を往復した際には、エアコンやシートヒーターなども併用しながら復路1度の充電で約800kmを走り切った。150kWの急速充電に対応する受電能力を得たこともあり、このバッテリー容量と航続距離があれば東京~大阪など1000km程度の往復はストレスなく走れることだろう。
出力精度の高いパワートレインや、バネ下の大きさを感じさせない正確で無駄のない足の動き、そして当然の高い静粛性……と、RZの動的質感はさらなる高みに至った。彼らが常々志してきた「レクサスらしい走り」の像を最も鮮明に表しているのは相変わらずこの銘柄ではないか、と個人的には思う。もちろんそれは、ロングツーリングにも臆せず連れ出せる350eにもきっちり当てはまるものだ。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
レクサスRZ350e“バージョンL”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1895×1635mm
ホイールベース:2850mm
車重:1970kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:227PS(167kW)
最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
タイヤ:(前)235/60R18 103H/(後)235/60R18 103H(ヨコハマ・アドバンV61 E+)
一充電走行距離:733km(WLTCモード)
交流電力量消費率:120Wh/km(WLTCモード)
価格:790万円/テスト車=857万1000円
オプション装備:デジタルキー(3万3000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(23万1000円)/パノラマルーフ<IR・UVカット機能、Low-Eコート、調光機能>(40万7000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:531km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:290.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:4.8km/kWh(車載電費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
マクラーレンW1(MR/8AT)【海外試乗記】 2026.6.29 マクラーレンが、かつての「F1」や「P1」に続く“究極のロードゴーイングカー”として開発した、超高性能モデル「W1」。そのドライブフィールはどのようなものか? イタリアで試乗した西川 淳がリポートする。
-
ヒョンデ・ネッソ ラウンジ+(FWD)【試乗記】 2026.6.27 ヒョンデの水素燃料電池車「ネッソ」がフルモデルチェンジ。……といっても多くの方にはなじみがないかもしれないが、デザインが一気にモダンになったほか、満タンからの走行可能距離が25%近くも拡大するなど長足の進歩を果たしている。300km余りをドライブした。
-
アストンマーティンDBX S(4WD/9AT)【試乗記】 2026.6.24 「SUVの形をしたGT」こと「アストンマーティンDBX」が、さらに高性能な「DBX S」に進化。より機敏なフットワークと、よりパワフルなエンジンを得たハイパフォーマンスSUVは、どのような体験を提供してくれるのか? 飛ぶがごとく走る英国の巨獣の実力に触れた。
-
三菱トライトンGSR(4WD/6AT)【試乗記】 2026.6.23 三菱のピックアップトラック「トライトン」のマイナーチェンジモデルが登場。トヨタの新型「ハイラックス」を迎え撃つべく三菱は、シャシーを鍛え上げ、走行性能をさらなる高みへと引き上げている。400km余りをドライブした印象をリポートする。
-
ハーレーダビッドソンCVOストリートグライド3リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.6.22 ハーレーダビッドソンのユニークな三輪モデル「トライク」シリーズが大幅に進化。お値段800万円超(!)の最上級モデル「CVOストリートグライド3リミテッド」の試乗を通し、新しくなった乗り味と、受け継がれる独創のファン・トゥ・ライドをリポートする。
-
NEW
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2026.6.30試乗記アウディのコンパクトSUV「Q3」がフルモデルチェンジ。新しくなったのはすっかり押し出しの強くなったフロントマスクだけでなく、内装もすべて新設計。インフォテインメントや灯火類などにも最新のシステムを採用した意欲作だ。「スポーツバック」の4WDモデルの仕上がりをリポートする。 -
NEW
フェラーリ初の電気自動車「ルーチェ」をどう思う?
2026.6.30あの多田哲哉のクルマQ&A公開されるやさまざまな議論を呼んでいる、フェラーリ初の電気自動車「ルーチェ」。その存在を、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどうみるのか? また、多田さん自身が開発を任されたらどうするのか、話を聞いた。 -
マクラーレンW1(MR/8AT)【海外試乗記】
2026.6.29試乗記マクラーレンが、かつての「F1」や「P1」に続く“究極のロードゴーイングカー”として開発した、超高性能モデル「W1」。そのドライブフィールはどのようなものか? イタリアで試乗した西川 淳がリポートする。 -
気づけば増えた軽のBEV 多くのメーカーがそこに商機をみるわけは?
2026.6.29デイリーコラム勢いに乗るBYDや新興EMTが、日本国内への軽EV投入を相次いで宣言。ガラパゴス化しているといわれた軽自動車の世界で、国内・海外問わず電動モデル投入の熱が高まっているのはなぜか? その背景を探ってみよう。 -
プジョー5008 GTハイブリッド アルカンターラパッケージ(前編)
2026.6.28思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「プジョー5008」に試乗。まずはスタイリッシュな見た目が目を引く新型だが、国内に導入されるのはマイルドハイブリッドの1.2リッター直3ターボ車のみ。これで大きな車体を満足に動かせるかどうかが気になるところだ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦
2026.6.27エディターから一言世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。














