クルマのリアルな燃費がわかる!?
新たな測定方法「WLTCモード」って何?
2017.09.15
デイリーコラム
国際基準でキチンと測ろう
2017年6月に登場した「マツダCX-3」のガソリンエンジンモデルで、新しい燃費測定方法「WLTCモード」による燃費値が、国内では初めて示されました。マツダのホームページを見てみると、従来の「JC08モード」と新しいWLTCモード、両方の燃費値が併記されています。
WLTCモードとは、「Worldwide harmonized Light vehicles Test Cycle(世界統一試験サイクル)モード」の略称。「WLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure:乗用車などの国際調和排出ガス・燃費試験法)」に基づく測定方法です。“ワールドワイド”という名称からもわかるように、日本国内専用のものではなく、国際的に広く使われることを想定した燃費の測定方法であり、表示方法なのです。
実は1年前の2016年秋に、経済産業省と国土交通省から「乗用車の排出ガス・燃費試験方法に国際基準を導入します」という発表がありました。つまり、国を挙げて燃費の計測と表示を国際基準に移行しようというわけです。
なぜ、そのようなことになったのでしょうか? 一番の理由は、カタログ燃費と実燃費の乖離(かいり)です。クルマのオーナーであれば、昔からカタログ表示の燃費性能と実際の燃費値が異なることは実感できるはず。そのため、カタログの燃費表示については、昔から実燃費に近づけるように努力はされてきました。最初は一定速度で走った燃費を表示していて、後に、決められた速度で走ったり止まったりする“モード方式”が採用されました。10モード燃費(1973年~)です。それをさらに、実走行に近づけようとしたものが10・15モード燃費(1991年~)であり、JC08モード燃費(2011年~)でした。
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4種類もの燃費値を表示
しかし、条件を実際の走行に近づけようとすれば、それだけテストも複雑になります。また、自動車産業はワールドワイドなものになっており、複雑な燃費テストを販売国ごとに行うのも、自動車メーカーにとって大きな負担となりました。そうした背景のもと国際連合の下部組織である自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において、燃費測定の国際基準が定められたのです。日本が国際基準を導入するのは、そうした国際的な流れに沿ったものだったのです。冒頭のマツダに限らず、2018年10月以降に販売される新型車については、このWLTCモード値の表示が義務化されることになっています。
では、WLTPによるWLTCモード燃費は、実際に、従来のJC08モード燃費とどのように違うのでしょうか。
テストの内容は、JC08モード燃費よりも、冷機状態での走行時間が増えたり、アイドリング時間の割合を減らしたりと、より厳しく、より実際の走行に近づいたものとなっています。そして新しい燃費表示では、信号や住宅等の影響を受ける低速走行を想定した「市街地モード(WLTC-L)」、それらの影響をあまり受けない走行を想定した「郊外モード(WLTC-M)」、高速道路での走行を想定した「高速道路モード(WLTC-H)」の3種類と、それらを平均的な使用時間配分で構成した「WLTCモード」という、合計4種の燃費数値が表示されることになります。
正直、カタログを作成する人や筆者のようなメディア関係者には、面倒くさいという印象もあります。しかし、ユーザー目線で見れば、より現実に近いものになっているのは確かではないでしょうか。例えば、信号が多くてストップ&ゴーを繰り返す市街地と、一定速度で走る高速道路では、燃料消費量が大きく異なります。それを統合してしまえば、市街地走行と高速道路走行のどっちらにも合わない数値になってしまいます。クルマに詳しい人間であれば、市街地と郊外、高速道路を分けて表示してくれた方が、より正確にクルマの燃費性能をイメージすることができるでしょう。私自身は、新しい表示方法は悪くないと思います。しかし、クルマに詳しくない人は、いろいろな数字が表示されるのは煩雑だと歓迎しないかもしれません。
とはいえ、もう移行するのは決まったこと。順応するしかありません。一度慣れてしまえば、後で振り返ったときに「昔は、JC08モードっていう、もっと単純な方法が採られていて、カタログと実燃費の乖離は今よりも大きかったんだよ」ということになるのでしょうね。
(文=鈴木ケンイチ/編集=関 顕也)

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
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