ランボルギーニ・アヴェンタドールSクーペ(4WD/7AT)
唯一無二の存在 2017.10.03 試乗記 さらなるパワーを手に入れて「S」のイニシャルを得た「ランボルギーニ・アヴェンタドール」。740psまで高められた6.5リッターV12自然吸気ユニットと最新のシャシー技術によって、このフラッグシップスポーツの走りはどこまで研ぎ澄まされたのか。富士スピードウェイで試乗した。サーキット再び!
ランボルギーニのフラッグシップモデルであるアヴェンタドールが「S」に進化した。これを同社のカスタマーイベントである「Lamborghini Esperienza(ランボルギーニ・エスペリエンツァ)」において、われわれジャーナリストも試乗する機会を得た。
とはいえこれは、今年の夏に行われた鈴鹿サーキットでのイベントが、台風により事実上延期されたことによる“リスケ”といえそうだ。豪気なランボルギーニ・ジャパンの好意による、おかわりペルファボーレ(!)ということだと思う。
そんなランボルギーニの勢いは、試乗会そのものにも表れていた。午前中に行われたウオーミングアップ・ジムカーナを終えると、早速富士スピードウェイの本コースを走ることになったわけだが、そのセッションはアヴェンタドール、および「ウラカン ペルフォルマンテ」(こちらは機会を改めてリポートしよう)が各2回、時間が余ればさらにおかわり自由。そしてサーキット走行をする先導車の走りも、いつになくハイペースなものとなっており、その性能をかなりの濃さで堪能できたのである。
アイデンティティーに揺るぎなし
アヴェンタドールの最大の特徴といえば、「カウンタック」から続くシザースドアを配した迫力あるボディー、そして背中に積んだV型12気筒エンジンだろう。今回はその両方が磨き上げられ、さらなる制御デバイスも追加された。
ダウンサイジングやライトサイジングが叫ばれ、こうしたプレミアムスポーツにもその影響が如実に及んでいるなかで、ランボルギーニは自分たちのアイデンティティーを貫くことにまったく躊躇(ちゅうちょ)がないようだ。
6498ccの排気量を持つV型12気筒エンジンは、そのパワーが従来型の「アヴェンタドールLP700-4」から実に40ps増しの740psにまで高められた。これは限定モデルであった「LP750-4 スーパーヴェローチェ」、いわゆる“SV”の750psに次ぐ出力値である。ちなみに最大トルクは従来型と変わりない690Nmだから、この最高出力は150rpmのレブアップで得られたものだと推測できる。
ぶっといセンタートンネルの中央にある赤いキャップを跳ね上げ、戦闘機かガンダムでも動かすような心持ちでスターターボタンをプッシュすると、雷様が現れたかのようなごう音とともにこのV12は目覚める。そのさく裂音は相変わらずすさまじく、ある意味冗談のようである。でも、そこがたまらない。
新旧が混在する
剛性感に満ちたシャシーに守られながらピットロードを徐行し、コースへ躍り出た瞬間、アクセルを床まで踏み込んでみる。あっという間にエンジンはレブリミットまで吹け上がり、デジタルメーターがシフトアップを促す。筆者もそのタイミングに合わせてステアリングコラムに据え付けられた巨大なパドルをパチッと手前に引く。シンクロナイザーをカーボンコーティングしたという7段ATは変速スピードがすこぶる素早いが、電子制御クラッチの断続は荒っぽく、平手で頬をぶったたかれたみたいにバチーン! とつながる。
ふっ……古い! これが世界最高峰のスーパーカーに乗った、一般庶民代表である筆者の偽らざる第一印象だった。怒濤(どとう)のパワー&トルクにもめげず、その可変4WDシステムはしっかりとスタビリティーを確保してくれる。にもかかわらずこれを古く感じさせたのは、シングルクラッチの断続感だった。また先導車に走行ペースをコントロールされながら、この日の実質的な最高速だった270km/hに達する過程で、シフトアップするごとにこの振動でしゃくれ、ブレーキングで身をよじるリアセクションのブッシュやエンジンマウントだった。
もちろん、筆者にはすでにアヴェンタドールの運転経験はあった。そして以前もこのシングルクラッチには同様の印象を持ちはしたが、今回その出力が40ps上がったことによって、ことさらそれが深まったようだ。また前述したデジタルメーターやセンターコンソールの凝ったスイッチ類、所々に張り巡らされるカーボンファイバー製のパネルなどが極めて近代的な雰囲気を演出しているだけに、そのギャップを激しく感じてしまったのだと思う。
しかしその古さを補うかのように、新しい技術も搭載された。特に恐れ入ったのは、「S」へと進化したことで標準装備されたリアホイールステアリングの実力であり威力だった。これがアヴェンタドールSの巨体を、驚くほど軽快に曲げてしまう。そしてその制御に、違和感がないのである。
ちなみにこれは高速域では後輪を同位相に操舵して安定性を確保し、低速域では逆位相に動かして回頭性を得ているわけだが、仮想ホイールベースに見立てると、最大で-500mmから+700mmにまで増減するのだという。
また外観の変化も、その空力性能を大幅に高めたようだ。猛獣が牙をむくかのようなデザインとなったフロントバンパーは従来比で130%、ダウンフォース向上を果たしているという。
乗りこなせば快楽になる
実際こうした要素が統合制御されると、アヴェンタドールSは快楽へとひた走るスーパーカーになる。局部的に見ればバラバラだと思われたその動きは、ときにこれをなだめすかして、ときにこれにむち打つように走るとひとつ流れを作りだし、その挙動にダイナミズムが出てくるのである。
レーシングカーのごときプッシュロッド式サスペンションは最小限のストロークで最大の効果を発揮し、制御の反応が早い磁性流体フルードを封入したダンパーは縁石を乗り越える走りにもしなやかさをもって対応する。高速コーナーではその速さからは信じられないほど挙動が安定し、自信をもってアクセルを踏み込んでいける。
そして低速コーナーでは鋭い切れ味をもってターンを繰り返す。多少のスキッドも4WDのトラクションがみごとに打ち消してくれる。先導車の走りを後ろから眺めていると、可変式のリアウイングがコーナーごとに動き、ニュートラルステアを作りだそうとしていることが見て取れた。
夢中で走らせながらも追い込み過ぎず、猛牛が行きたがる方へと舵を切るその運転はさしずめマタドールであり、そう考えると唯一の難点と思われたシングルクラッチの荒っぽささえもが一興と思うまでになった。
そもそもアヴェンタドールというスーパーカーは、速さだけを狙う存在ではないのかもしれない。それは、たとえばリアのエンジンフードをあえてかさばる段付きのガラス張りにした“歌舞伎っぷり”からも察しがつく。
V12の快感に埋もれながら、ドライバーは持てる限りの技術を駆使してクルマと同調する。これがアヴェンタドールSの楽しみ方なのではないか。だとすればそのシングルクラッチがもたらす“古さ”も、おそらくはデュアルクラッチ式となってしまうであろう次期型にはない、古典のよさだということができるかもしれない。
(文=山田弘樹/写真=田村 弥/編集=竹下元太郎)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ランボルギーニ・アヴェンタドールSクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4797×2030×1136mm
ホイールベース:2700mm
車重:1575kg(乾燥重量)
駆動方式:4WD
エンジン:6.5リッターV12 DOHC 48バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:740ps(544kW)/8400rpm
最大トルク:690Nm(70.4kgm)/5500rpm
タイヤ:(前)255/30ZR20 92Y XL/(後)355/25ZR21 107Y XL(ピレリPゼロ)
燃費:16.9リッター/100km(約5.9km/リッター、欧州複合モード)
価格:4490万4433円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
-
ホンダ・シビックe:HEV RS(FF)【試乗記】 2026.7.25 高速道路から山道へとステージを変えながら、「シビック」の追加モデル「e:HEV RS」に試乗。そのキーテクノロジーは、疑似有段ギア制御システム「ホンダS+シフト」だ。ベースとなったハイブリッド車や、同じS+シフトを搭載する「プレリュード」との違いを確かめた。
-
カワサキZ900RSブラックボールエディション(6MT)/Z900RS SE(6MT)【レビュー】 2026.7.24 カワサキが誇る人気のレトロスポーツ「Z900RS」が大幅に進化。このマシンならではの“凄(すご)み”はそのままに、エンジンの改良と高度な電子制御の採用により、スポーツバイクとしての魅力にいっそう磨きをかけてきた。卓越したその走りを報告しよう。
-
ランボルギーニ・ウルスSEペルフォルマンテ(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.23 2017年のデビュー以来、超ド級の走行性能を持つ“スーパーSUV”として、SUVブームの中を駆け抜けてきた「ランボルギーニ・ウルス」。その進化型である「ウルスSEペルフォルマンテ」の仕上がりを、イタリア南部のテストコースからリポートする。
-
ボルボEX90プラス ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.7.22 ボルボのフル電動SUV「EX90」が上陸。3列7人乗りのキャビンを有する圧倒的なサイズや空力性能を磨き上げたボディー、継続的なアップグレードに対応する最新の電子プラットフォームと、新たなフラッグシップにふさわしいトピックが並ぶ。果たしてその走りは?
-
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】 2026.7.21 アストンマーティンの擁するFRスポーツ「ヴァンテージ」が、より高性能な「ヴァンテージS」に進化。よりたくましいエンジンを獲得し、卓越したコーナリング性能に磨きをかけつつ、“優しさ”も身につけた最新モデルの走りを報告する。
-
NEW
モノとして優秀でも採用・搭載されなかった装備はあるか?
2026.7.28あの多田哲哉のクルマQ&Aいいといわれた自動車の機能や装備のなかで、「開発中にボツになってしまい、結局世に出なかったもの」はあるのだろうか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんに聞いてみた。 -
NEW
シトロエンë-C3マックス(FWD)【試乗記】
2026.7.28試乗記シトロエンのコンパクトハッチバック「C3」に電気自動車版の「ë-C3」が登場。さすがはシトロエンらしく、操作系やスペック、装備の設定、さらには乗り心地にいたるまで、普通のBEVとはひと味違う。誰にでも勧められるクルマではないが、そもそもシトロエンとはそういうポジションだ。 -
NEW
大矢アキオさんのトークイベント「集まれ! 横丁のクルマ好き FIAT PANDAとイタリア人の46年」開催!
2026.7.27From Our Staffイタリア在住の大矢アキオさんが、トークイベント「集まれ! 横丁のクルマ好き FIAT PANDAとイタリア人の46年」を開催! イタリアの名車「フィアット・パンダ」の魅力を語りつくします。話題の新型車「グランデパンダ」の最新情報も! -
スズキ・ジムニー ノマドFC(4WD/4AT)/ジムニー ノマドFC(4WD/5MT)【試乗記】
2026.7.27試乗記“ジムニー史上初”となる、5ドアのロングボディーで人気を博す「スズキ・ジムニー ノマド」。快適な後席と広い荷室空間が自慢のファミリーの新顔に、はたして死角はないのか? このクルマの本領であるオフロードも走行し、その実力をつまびらかにした。 -
なぜマツダはいま「ロードスター」に新グレード「PS」を設定するのか?
2026.7.27デイリーコラムマツダのスポーツカー「ロードスター」に、今さらながらの“ピュアスポーツ”なグレード「PS」が設定された。なぜこのタイミングで……? ロードスターの今後について、現役オーナーでもある工藤貴宏氏がリポートする。 -
番外編:バイパーと夏の涼
2026.7.27バイパーほったの ヘビの毒にやられまして今日もガソリンを鯨飲し、CO2をバラまいて走るwebCG編集部員の「ダッジ・バイパー」。この超大排気量・傍若無人マシーンの、唯一(?)の弱点といえば不調のエアコンだ。迫る炎夏に立ち向かうべく、怠惰なオーナーが放置していた冷房の復活に挑む。


















































