スズキ・スイフトスポーツ(FF/6MT)/スイフトスポーツ(FF/6AT)
こんなクルマはほかにない 2017.10.06 試乗記 スズキのコンパクトスポーツモデル「スイフトスポーツ」がついにフルモデルチェンジ。車重1tを切る軽量ボディーに、パワフルでトルキーな1.4リッター直噴ターボエンジンを搭載した新型の走りやいかに? その実力をリポートする。レスポンス至上主義のエンジンチューニング
新型スイフトスポーツ(スイスポ)は、事前のウワサどおり、1.4リッター直噴ターボの「K14C」を積んでのデビューとなった。
「ストリートスポーツはエンジン回してナンボ」といった情緒や、これまで小型スポーツエンジンの代名詞だった「テンロク」の記号性を考えると、3世代にわたって使われてきた「M型」、先々代から先代の1.6リッターという排気量に郷愁をかられなくもない。ただ、スズキのエンジン戦略を考えると、現実的にはこれしか選択肢はなかった。
スズキ最新のエンジン戦略は明確にダウンサイジングターボにカジを切っていて、旧来のM型エンジンはすでにフェードアウトの段階にある。そして、この1.4リッターが、ひとまずは新世代スズキエンジンの最強バージョンということになるらしい。
もっとも、スペック的な数値だけでいえば、「スイフトRSt」の1リッター3気筒ターボであっても、先代スイスポに勝るとも劣らない動力性能は達成できたはずである。しかし、この1リッターは(フォルクスワーゲンとたもとを分かった)スズキでは、「従来の1.3リッターディーゼルの後継」と位置づけられた実用トルク重視型。スポーツエンジンの設計ではない。
そういうわけでターボ化された新型スイスポのエンジンは、先ごろ発売された「エスクード1.4ターボ」のそれを4ps/20Nm上回る。「エンジンは専用チューン」というスイスポの伝統は守られたわけだ。
このピーク性能値は燃料をハイオク化して過給圧その他の制御をリプログラムした結果だが、それ以上に注目すべきは、ウェイストゲート制御をエスクードの“ノーマルオープン”から正反対の“ノーマルクローズ”に変えていることである。ターボチャージャーの駆動力となる排気圧を逃がすウェイストゲートを、開いた状態を標準として「ムダに過給しない」のが昨今の高効率ターボのトレンドだが、スイスポはあえて逆に閉じた状態を標準として、過給圧を早期に立ち上げるレスポンス最重視の専用設計となっている。
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加速の鋭さに感銘を覚える
スイスポも含めたスイフトシリーズのチーフエンジニアをつとめた小堀昌雄さんに別の機会でインタビューしたとき、新型スイスポ最大のキモとして、小堀さんは“トルクウェイトレシオ”をあげた。 小堀さんがエンジン担当に下した指示は「このエンジンで、特別に高価の部品などを使わずに、できるだけパワーとトルクを出せ」というものだった。
なるほど、1t以下の車重に2.3リッター相当の最大トルク……という新型スイスポのそれは、ほとんど前例のない数値である。さらに、小堀さんいわく、トルクウェイトレシオは加速性能の目安となるだけでなく、操縦安定性において“ヨー応答性”に直結するのだという。「右足による荷重移動で、超軽量なハッチバックを俊敏かつ自在にコントロールする喜び」をとことん突き詰めたのが新型スイスポ……ということらしい。
新型スイスポに乗って、いちばんに感銘を受けるのは、たしかに加速のピックアップの鋭さと強力さである。この小さなナリからは想像しづらいほど強力に背中を蹴られる感覚は素直に新鮮。また、エスクードにあった過給ラグ的な“間”を新型スイスポではほとんど感じ取ることができないのは、車重の軽さに加えて、前記のウェイストゲート制御によるところも大きいのだろう。
それこそ2000rpmも回っていれば、右足の動きにほぼ間髪入れずに加速態勢に入る活発さは快感である。そこからリミットの6000rpm弱までのトルク特性は見事にフラット。特別なドラマはないが、最後まできれいに回る。今回は販売上も主力となるであろう6段MT中心の試乗になったが、その6段MTはあらためてレバーやクラッチの触感を改良したそうで、操作性も悪くない。
もう少し見た目も気にしてほしい
シャシーはスイスポらしく、ほどよいサジ加減。乗り心地も全体に引き締まっているが、総じて良好である。さすがに絶対的に軽くて小さいから“しっとり”と表現できる乗り心地ではないものの、突き上げは丸められており、ビターッとした高速直進性にも感心する。
標準スイフトでは良くも悪くも柔らかめのリアサスが特徴的だったが、 専用バネ&ダンパーに加えてトーションビーム本体も太くなったスイスポには、そういうクセはほとんど感じない。どんな速度域でも前後一体になったバシッと締まった安定感がある。
ステアリング反応もドンピシャに正確で、かつ本格的なスポーツタイヤによる絶対グリップ性能も十二分。大トルクエンジンにもグリップやトラクション が不足するシーンは皆無に近い。さらに、ステアリングを180度以上大きく回す領域まで、がっちりとカジが利くのは、いかにも本格スポーツモデルの味わいだ。
ちなみに、試乗車が履いていたタイヤは「コンチネンタル・スポーツコンタクト5」だったが、これが専用開発タイヤというわけではなく、ロットや仕向け地によっては他銘柄が装着される場合もあるという。
先代では標準スイフトと同サイズだった4輪ディスクブレーキも、今回はフロントをスイスポ専用に大径化する対策が採られた。制動力そのものは十分。高速からガツンと強く踏んだときの感触もきちんとチューニングされているようで、良好なタッチである。
ただ、あえていわせていただくと、ジンワリ踏むような弱いブレーキングでは、利きが唐突に感じられるケースもあった。また、標準スイフトと同径のリアディスクを、開口の大きい17インチホイール越しにながめると、性能はともかく、見た目には正直ショボい。
コスパも大きな売りのスイスポだけに、繊細なタッチに効果的な対向ピストンキャリパーはやりすぎだろうし、負担の少ないリアブレーキにコストをかけるのは非効率かもしれない。ただ、スイスポは日本車でも屈指のカリスマ商品。こういう細部にもピリリとスパイスを効かせてほしいのは本音である。
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MTで乗るべきか、ATで乗るべきか
新型スイスポは2ペダル変速機がCVTからトルコン式6段ATに換装されたのもニュースである。スイスポのようなクルマは基本的にMTで乗るのが王道だろうが、今回はATの魅力がすこぶる高いのも特徴ではある。
K14Cエンジンは前記のように、低回転から(1t未満の車重には)ありあまるほどのトルクがある。しかもリミットまで軽々と回り切るが、いっぽうであくまで全域フラットトルクで、最後の500~1000rpmで特別なドラマがあるわけではない。
こういう特性のエンジンはATとのマッチングがいい。3速以上のギアレシオはATのほうが高い設定になっているものの、体感的な加速はMTと明確な差はない。どちらもアクセルペダルを踏んだ瞬間に、思わず笑みがこぼれるほど、どこからでもズバッと加速する。
また、MTより20kg重い前軸荷重のおかげ(もしくは個体差)なのか、ステアリングから伝わってくる 接地感もMTよりリアルで鮮明だった。ただ、さすがにステアリング操作に対するハナ先の反応はMTのほうが 確実に鋭く軽快で、接地感というATの美点と天びんにかけると「甲乙つけがたし」というのが、現時点での正直な結論である。
まあ、このあたりはもう少し走行距離が伸びて(今回の試乗車のオドメーターはどれも1000kmに満たなかった)、各部がこなれた状態で、再確認したいところではあるけど。
……と、なんとも重箱のスミの物言いになってしまったが、こういうオタク話をいくらでも続けたくなるのも、これがスイスポだからである。
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その存在に感謝感激
新型スイスポの本体価格はMTで183万6000円、ATで190万6200円。性能や快適性にかかわる基本装備は最初からフル装備だ。
ただし、側突系エアバッグや自動ブレーキ&レーンキープアシスト、アダプティブクルーズコントロールなどがセットとなる「セーフティパッケージ」だけは、今どきのクルマとしては必須オプションだろう。しかし、新型スイスポはそれを追加しても、ギリギリで200万円を切る。本格スポーツモデルとしては間違いなく最安の部類に入る価格設定は、今もすこぶる魅力的である。
新型スイスポと同価格帯には、1.5リッターの「ホンダ・フィットRS」と「日産マーチNISMO S」がある。しかし、スイスポの軽さと動力性能の前ではフィットRSは普通のクルマにすぎるし、NISMO Sは良くも悪くも、スイスポより圧倒的に古臭くて、荒々しい。
新型スイスポにもツッコミどころはいくつかある。前記のブレーキもそうだし、絶対性能にはまるで文句なしのエンジンも、ぜいたくをいえば、トップエンドや排気音の演出にはもう少しヒネリがほしい。形状のみならず座面後傾角度まで手直ししたフロントシートはいいデキだが、握り部分に樹脂ガーニッシュがかぶさるステアリングホイールは、標準スイフトではアリとしても、 本格スポーツモデルには一考の余地はある。
ただ、そういう「あれもこれも」の要望にいちいち応えていたら、とてもこの価格ではおさまらないだろう。200万円でこれだけ楽しく、モダンで実用的、そしてお世辞ぬきに「速い」といいきれるクルマはほかにない。そして、シツコイようだが、この軽さと大トルクの組み合わせは、率直に新鮮な衝撃だ。なんだかホメすぎの気もするが、この時代にスイスポ伝統のツボを網羅しつつ、それなりの新しさも加味した新型が出てきてくれたことに、まずは感謝感激である。
最後に。新型スイスポは史上初の3ナンバー幅となった。日本ではスイスポ専用だが、グローバルではこれがスイフト本来の標準サイズ。つまり、5ナンバー幅の日本の標準スイフトだけが、グローバルでは異例のナロー車体なのだそうだ。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
スズキ・スイフトスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3890×1735×1500mm
ホイールベース:2450mm
車重:970kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6MT
最高出力:140ps(103kW)/5500rpm
最大トルク:230Nm(23.4kgm)/2500-3500rpm
タイヤ:(前)195/45R17 81W/(後)195/45R17 81W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:16.4km/リッター(JC08モード)
価格:183万6000円/テスト車=221万7240円
オプション装備:セーフティパッケージ<デュアルセンサーブレーキサポート+車線逸脱抑制機能+車線逸脱警報機能+ふらつき警報機能+先行車発進お知らせ機能+ハイビームアシスト機能+SRSカーテンエアバッグ+フロントシートSRSサイドエアバッグ+アダプティブクルーズコントロール+リアシートベルトフォースリミッター&プリテンショナー[左右2人分]>+全方位モニター用カメラパッケージ<フロントカメラ+サイドカメラ[左右]+バックカメラ+フロント2ツイーター&リア2スピーカー+ステアリングハンズフリースイッチ>(14万4720円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン、チェッカー>(2万0142円)/スタンダードメモリーワイドナビセット<パナソニック>(14万4018円)/オーディオ交換ガーニッシュ+アンテナ変換ケーブル(8424円)/ドライブレコーダー+VTRケーブル(3万7260円)/ETC車載器<ビルトインタイプ>(2万1816円)/ETCナビゲーション接続ケーブル<パナソニック製ナビ接続用>(4860円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:454km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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スズキ・スイフトスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3890×1735×1500mm
ホイールベース:2450mm
車重:990kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:140ps(103kW)/5500rpm
最大トルク:230Nm(23.4kgm)/2500-3500rpm
タイヤ:(前)195/45R17 81W/(後)195/45R17 81W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:16.2km/リッター(JC08モード)
価格:190万6200円/テスト車=228万7440円
オプション装備:セーフティパッケージ<デュアルセンサーブレーキサポート+車線逸脱抑制機能+車線逸脱警報機能+ふらつき警報機能+先行車発進お知らせ機能+ハイビームアシスト機能+SRSカーテンエアバッグ+フロントシートSRSサイドエアバッグ+アダプティブクルーズコントロール+リアシートベルトフォースリミッター&プリテンショナー[左右2人分]>+全方位モニター用カメラパッケージ<フロントカメラ+サイドカメラ[左右]+バックカメラ+フロント2ツイーター&リア2スピーカー+ステアリングハンズフリースイッチ>(14万4720円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン、チェッカー>(2万0142円)/スタンダードメモリーワイドナビセット<パナソニック>(14万4018円)/オーディオ交換ガーニッシュ+アンテナ変換ケーブル(8424円)/ドライブレコーダー+VTRケーブル(3万7260円)/ETC車載器<ビルトインタイプ>(2万1816円)/ETCナビゲーション接続ケーブル<パナソニック製ナビ接続用>(4860円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:472km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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