ついに110km/h区間が登場!
高速道路の最高速度引き上げについて考える
2017.10.04
デイリーコラム
最高速度引き上げに潜む危険とは?
今年の年末に、新東名高速や東北道の一部区間で、試験的に最高速度が110km/hに引き上げられる。具体的には、新東名高速では新静岡インターチェンジ(IC)~森掛川IC間の約50km、東北道は花巻南IC~盛岡南ICまでの約30kmの区間だ。新東名では11月、東北道では12月から実施されるという。
高速道路の最高速度を100km/hから引き上げるのは、まさに画期的な話だ。高速道路は、遠くまでいかに短い時間で移動するかが目的なのだから、走行スピードが速いに越したことはない。しかし、それで事故が増えてしまっては、元も子もない。そのため速度規制を決めた警察は、非常に長い時間をかけて高速道路の最高速度引き上げを検討してきた。最初の「規制速度決定の在り方に関する調査研究」を行ったのは、平成18年から20年(2006~2008年)にかけてのこと。実に10年近くの歳月をかけたというわけだ。
欧米諸国では、高速道路の規制速度を引き上げたところ「死亡事故が減少した」「重大な衝突事故が減少した」といったポジティブな結果が出ている。また、速度を引き上げれば、当然、目的地に到達する時間を短くすることも可能だ。
しかし、不安な部分もある。それが「車両間の速度差の増大」(トラックの最高速度は80km/hのままなのだ)と「渋滞の最後尾における追突事故」だ。速度差の増大への対応策は、「追い越しルールの徹底」だろう。追い越しをするときは、追い越しレーンを使う。また、追い越しをしていないクルマは、追い越しレーンに居座らない。つまり、最右端の追い越しレーンは、追い越しだけに使って、追い越しが終われば走行レーンに戻る。追い越しレーンは常にあけておく。これが、高速道路での本来のルールだ。速度無制限区間があり、車両間の速度差がより大きいドイツのアウトバーンでは、しっかりとこのルールが守られている。だからこそ、速度無制限区間が成り立っているのだ。また「渋滞の最後尾における追突事故」の危険性は警察も十分に認識済みで、標識や渋滞を告知する標識誘導車の活用などを考えているという。見逃さないように注意しよう。
ちなみに、警察では「速度超過違反者のさらなる速度上昇」も想定しており、取り締まりを強化するという。最高速度が上がったからといって、スピードを上げすぎるのは絶対によした方がいい。
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最高速度を上げても事故は増えない
では、実際に規制速度の引き上げが実施されるとどうなるだろうか? 個人的な予想から言えば、「事故が増えるはずはない」。なぜなら、今回の試験区間が、相当に慎重に選ばれた場所だからだ。
試験区間に選ばれたのは、「道路の設計速度が120km/h」「自由流(交通量が少なく、ドライバーが自由な速度で走れる)での事故が少ない」「実勢速度が100km/hを超えている」「渋滞が少ない」という場所だ。そもそも「流れが速くて、それでも事故の少ないところ」で実施するのだ。つまり、速度を上げるというよりも、実際のクルマの流れに合わせたのに近い。逆に、中途半端に遅いクルマが減って、より走行速度が一定になる効果の方が強いだろう。また、世間の目を集める区間となることで、ドライバーへの追い越しルールの徹底なども期待できる。もともとリスクが少なく、速度引き上げのメリットだけが期待できる区間で実施するのだから、失敗する可能性は低いだろう。
しかし、その成功をきっかけに、どこまで速度引き上げ区間が広がるかは不透明だ。最高速度引き上げという過去にない事例ゆえ、まずはリスクの最も少ない区間で実施するというのは理解できる。しかし、次に実施する場所は、今回ほど条件が良くないと考えるのが自然だ。仮に2回目がうまくいったとしたら、3回目はさらに条件が悪くなるだろう。対象エリアを拡大するほどにリスクは高まる。どこまで警察は挑戦するのか? 過去の警察の慎重な姿勢を思い出してみれば、あまり楽観できないというのが正直な思いだ。
(文=鈴木ケンイチ/編集=藤沢 勝)
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鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
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