第453回:ヴェラールの美しさの秘密を探る
ランドローバー社のクリエイティブディレクターにインタビュー
2017.10.25
エディターから一言
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レンジローバーブランドの特徴であるラグジュアリーさと優れた走破性能を受け継ぎながら、無駄を排した美しいデザインが自慢の「レンジローバー ヴェラール」。ランドローバーのクリエイティブディレクター、マッシモ・フラスチェッラさんにその見どころを聞いた。
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シンプルな中に美を見いだす
――レンジローバー ヴェラールのスタイリングは、しばしば「reductionism」(リダクショニズム=還元主義)という考え方に基づいてデザインされたと説明される。このリダクショニズムとは何か。
フラスチェッラさん:ランドローバー社のデザインはこれまでもシンプルであることを特徴としてきましたが、ヴェラールではそのシンプルさを“次なる次元”に高めました。ヴェラールではエクステリアデザインを構成するラインやディテールなど、いらないものを削(そ)ぎ落としていき、主だったキャラクターを形作るラインだけを残しました。例えば、使用しないときはドアパネルに格納される“デプロイアブル・ドアハンドル”は還元主義を顕著に反映したものと言えます。インテリアも同様で、スイッチ類の数は最低限に抑え、シンプルに徹しています。
――同じくリダクション(削減)するにしても、過去と現在ではどう違うのか。
フラスチェッラさん:過去においては、クロスカントリー4WD車としての機能性により重きを置いたデザインになっていたと思います。今も機能性の高さという点では変わりはありませんが、デザインにエモーショナル(感情的)な面が表現されているのが違っています。以前、われわれのお客さまは、ランドローバー車が「必要だから」買ってくださった。でも、今はそれだけではなく、「欲しいから」購入してくださるお客さまも数多くいらっしゃる。そういう違いがあるのではないでしょうか。
デザインと機能の高次元な融合
――こういったクルマにおいても、もはやデザインの優劣抜きには語ることができないと?
フラスチェッラさん:かつて、ランドローバー社においてデザインはあくまで「結果」だったと言えるかもしれません。機能に軸を置いた開発をした結果、ああいったデザインになっていたわけです。しかし、今はランドローバー社内でもデザイン部門が強い発言力を持っており、ブランド全体がデザインに重きを置くようになりました。同時に、クルマの機能性は格段に進化しています。優れたデザインと高い機能性という組み合わせはわが社の特徴であり、他に両立できているメーカーはないと思います。
――ヴェラールでは“SUVのクーペ”を目指したのか。
フラスチェッラさん:そういった言い方もできるかもしれません。今、クーペタイプのSUVがはやっていますから、多くの人はわれわれが、某ドイツメーカーのようなクーペ的なプロファイルを持ったSUVを作ると思ったのではないでしょうか。しかし実際は(ヴェラールが)そうではなかったので、驚いた人も多かったようですね。われわれはSUVにクーペ的な要素をそのまま移すのではなく、独自のやり方でエレガントさやスポーティーさを表現したかったのです。プロポーションのバランスを取っていく作業が、われわれの作業の大半を占めます。しかも、それをレンジローバーのイメージと合致しなくてはなりません。ヴェラールは、そのすべてが実現できている。そう自負しています。
(webCG)

webCG 編集部
1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』のインターネットサイトとして、1998年6月にオープンした『webCG』。ニューモデル情報はもちろん、プロフェッショナルによる試乗記やクルマにまつわる読み物など、クルマ好きに向けて日々情報を発信中です。
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