レンジローバー・ヴェラールD200 (4WD/8AT)
カタチは乗り味を表す 2023.11.13 試乗記 「CALM SANCTUARY(静穏な聖域)」という開発テーマに磨きをかけ、内外装をリニューアルした「レンジローバー・ヴェラール」。ディーゼルエンジンを搭載する2024年モデルのステアリングを握り、その走りと無二なる世界観の進化を確かめた。乗ってみたいと思わせる力がある
2017年にレンジローバー・ヴェラールが登場した時の驚きは昨日のことのように、と書くと大げさですが、いまもありありとよみがえる。ボディーに段差や隙間や出っ張りがないトゥルンとしたフォルムは清流に磨かれた玉石のようで、鋭利なキャラクターラインや複雑なパネル構成でアピールする競合他車とは異なるアプローチだった。控えめだけど美しい、という往年の吉永小百合的なデザインで、デビューから数年を経ても見飽きることがない。
2024年1月、ヴェラールの内外装に手が加わることが発表された。具体的には、まずフロントはヘッドランプとデイタイムランニングライトの意匠が変わり、グリルの模様もより繊細なものになった。リアに目をやると、テールランプとバンパーが新しいデザインになっている。従来型の写真と並べて比べると、全体にシュッとしたというか、より洗練されたたたずまいになっている。
で、フェイスリフトを受けたヴェラールを間近に見ながら思い出したのは、自動車デザインの巨匠ジョルジェット・ジウジアーロの、ミラノ大学での講演会のスピーチだった。ジウジアーロは、こんなことを言っている。
「クルマを見慣れていない人には車種を見分けることができない。ましてや内部の細かい部分には興味を持たない。たとえばこのネクタイだって、見た目は気にするけれど、誰も織り方に興味を持たない。どう見えるかデザインするかが大切なんだよ」
ヴェラールは、車種を見分けることができない人でもパッと振り向かせ、内部の細かい部分に興味を持たない人でも乗ってみたいと思わせる力がある(と思う)。これだけ格好よければ中身がボロでもOKでしょ、と思っていながら、ドアを開ける。
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内外装で統一された世界観
ドアを開けて乗り込むと、インテリアも変更を受けていることがわかる。従来型はセンターコンソールに液晶パネルが上下にふたつ並んでいたけれど、マイナーチェンジによって11.4インチのタッチスクリーンに集約されている。外観のデザインコンセプトはインテリアにも連続していて、つまり凸凹がないシンプルな意匠だ。なんにもないけれど豊かな気持ちにしてくれる、というあたり、茶室を連想する。
外観と内装に統一感があるから、オーナーの方は駐車場でこのクルマを見つけて、近づいて、ドアを開けて、乗り込んで、走りだすという一連の動作の間、ずっと同じ世界観に触れていることになる。
ヴェラールのパワートレインは3種類。2リッターの直4ディーゼルと、2リッターの直4ガソリンは、いずれもマイルドハイブリッドシステムと組み合わされる。そしてもうひとつが、2リッター直4ガソリンにプラグインハイブリッドシステムを組み合わされるPHEVだ。
今回の試乗車はディーゼルで、430N・mという大トルクを1750rpmから発生するというスペックに偽りはなく、システムを起動してシフトセレクターでDレンジを選ぶと、アクセルペダルに軽く足を置いただけで2t強のボディーが軽々と走りだす。
ちょっとした加速時に回転を上げると気になるのが、ディーゼルエンジンの音。けれどもこれは、悪い意味ではない。木管楽器系の、朗らかないい音なのだ。「ホロロロロ」と、耳に心地よい。そしてアクセルペダルを戻して回転が落ちると、車内は静寂に包まれる。タイヤからのロードノイズも風切り音も巧みに遮断されていて、静粛性は非常に高い。
いい音が一瞬響いた後で静けさが強調される、というあたりは、日本庭園の鹿威(ししおど)しを思わせる。「コーン」→「シーン」というやつですね。
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湧き出るような力で押し出す
走行中はエンジンとモーターが連携しているはずだけれど、ドライバーにはモーターの存在は感知できない。発進加速がべらぼうに滑らかなのは、極低回転域でモーターがアシストしているからだと想像する。けれどもそれはあくまで想像にすぎず、エンジンとモーターの連携がシームレスだから、どっからどこまでがモーターの手柄なのかは判然としない。8段ATの変速もすこぶる滑らかで、ジウジアーロが言うところの、「内部の細かい部分に興味を持たない」方も、いい気分にしてくれるパワートレインであることは間違いない。
100km/h巡航だとタコメーターの針は1500rpmにも届かないから、車内は静穏で至って平和だ。しかも加速が必要な時には、湧き出るような力で押し出してくれる。このまま、どこまでも走って行けそうな気になるのは、頼りになるパワートレインとともに、乗員を慰撫(いぶ)してくれるような快適な乗り心地のおかげでもある。
ヴェラールには金属コイルのサスペンションもあるけれど、試乗車はエアサスペンションで、オプションとなる22インチサイズのタイヤを装着している。タウンスピードではそのせいか、乗り心地が硬いというほどではないまでも、結構スポーティーだなと感じさせた。
ところが速度が上がるほどにしなやかさが増し、それと反比例するように市街地で感じたタイヤの存在感は薄まっていく。
265/40R22サイズの「ピレリ・スコーピオンゼロ オールシーズン」タイヤは確かに見てくれはかっこいいけれど、優雅に走るヴェラールなのだから標準サイズでよいのではないか、という疑念は、ワインディングロードに入ると吹っ飛ぶ。ステアリングホイールからは信頼できる手応えが伝わり、コーナーでは4本のタイヤが踏ん張っていることが伝わってくる。
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まさに「静穏な聖域」
外観とインテリアの世界観がつながっている、と書いたけれど、ヴェラールは、それだけではなかった。
ボディーに段差がないのと同じように、ディーゼルエンジンとマイルドハイブリッドシステムの組み合わせはシームレスに、力強く加速する。ボディーに凸凹がないのと同じように、乗り心地にも凸凹がない。角のない、トゥルンとした内外装の印象は、ドライブフィールにも通じるのだ。このクルマは、ルックスと乗り味が見事にシンクロしている。「名は体を表す」というけれど、この場合はなんて書けばいいのか。「カタチは乗り味を表す」か。ちょっと語呂が悪い。
ヴェラールの開発テーマは、「CALM SANCTUARY(静穏な聖域)」だったという。エクステリアとインテリア、そしてドライブフィールは、いずれも静かで平和で、しかもぜいたくさを味わわせてくれる。
デザイナーもエンジニアも、「静穏な聖域」に向かって一致団結、ワンチームとなってまい進したことがうかがわれる。そしてここでワンチームという言葉が出てくるのには、熱中していたラグビーワールドカップ2023で、公式スポンサーとなったランドローバーの映像をたくさん見ていた影響もあるかもしれない。
いずれにせよ、見た目だけで選びたくなるほどのデザインで、しかもパフォーマンスもデザインから期待するようなものだから、車種の見分けがつかない方から、内部の細かいところまで気にする人まで、自信を持っておすすめできる。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
レンジローバー・ヴェラール ダイナミックHSE D200
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4820×1930×1685mm
ホイールベース:2875mm
車重:2080kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:同期クローポール型
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/3750-4000rpm
エンジン最大トルク:430N・m(43.9kgf・m)/1750-2500rpm
モーター最高出力:25PS(18kW)/1万rpm
モーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)/1500rpm
タイヤ:(前)265/40R22 106Y M+S/(後)265/40R22 106Y M+S(ピレリ・スコーピオンゼロ オールシーズン)
燃費:13.6km/リッター(WLTCモード)
価格:1154万円/テスト車=1368万0080円
オプション装備:ボディーカラー<ザダルグレイ>(9万3000円)/4ゾーンクライメートコントロール(14万6000円)/Wi-Fi接続<データプラン付き>(3万6000円)/ラゲッジスペースパーティションネット(2万1000円)/22インチフルサイズスペアホイール(12万2000円)/グローブボックス<クーラー&ロック付き>(3万2000円)/22インチ“スタイル1075”<グロスブラックフィニッシュ>(20万4000円)/ブラックエクステリアパック(13万5000円)/リアシートリモートリリースレバー(2万1000円)/ヘッドアップディスプレイ(19万8000円)/プライバシーガラス(7万3000円)/ルーフレール<ブラック>(5万2000円)/フロントフォグランプ(3万1000円)/コンフィギュラブルキャビンライティング(4万2000円)/パワージェスチャーテールゲート(2万8000円)/コールドクライメートパック(38万円)/コントラストルーフ<ブラック>(13万8000円)/テレインレスポンス2<ダイナミックプログラム付き>(3万2000円)/20Wayフロントシート<運転席メモリー、マッサージ機能付き>&リアシート<電動リクライニング付き>(18万8000円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(5万8080円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1736km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:241.6km
使用燃料:18.0リッター(軽油)
参考燃費:13.4km/リッター(満タン法)/13.3km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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