おめでとう、累計生産台数1億台突破
「ホンダ・スーパーカブ」が世界中で愛される理由とは?
2017.10.25
デイリーコラム
本田宗一郎のこだわりから生まれた独自の機構
日本の街角でおなじみの働くバイクである「ホンダ・スーパーカブ」。ハンドルを握ったことはなくとも、郵便配達や店屋物の出前などを通じて、日本に住む人は生活の中で必ずどこかでカブのお世話になっているといっても過言ではない。そんなわれらがカブは、なんと来年で生誕60周年。人間でいえば還暦を目前にした今年10月、累計生産台数1億台突破という偉業を成し遂げた。
スーパーカブの歴史を振り返ると、その誕生は「スバル360」と同じ1958年。二輪メーカーとして軌道に乗り始めたホンダが、補助エンジン付き自転車「カブ」を発展させた小型実用バイク「スーパーカブC100」を発売したことに始まる。実用車としての使い勝手を追求し、乗り降りのしやすい低床式バックボーンフレームに、乗り心地や走破性などのトータルバランスを考慮し、既製品のなかった17インチサイズのタイヤを新開発して装着。メカニズムも特徴的で、運転を容易にするクラッチレバーレスの自動遠心クラッチ機構に、高出力と低燃費、耐久性をも兼ね備えた新開発の50㏄ 4ストロークOHVエンジンを備えていた。
これらの機構は、ホンダの創業者・本田宗一郎のこだわりから生まれたものであった。その理由は、出前のおかもちを持ちながら、片手運転ができるクラッチレバーレス構造にしたかったから。そして、宗一郎自身が欧州へ視察旅行に出向いた際、早朝、配達に使われる2ストロークの小型バイクの騒々しさが気になったことから、生活に密着したバイクこそ、静かでなくてはならないと考えたからだった。そんな“ホンダイズム”にあふれた初代は、発売されるやすぐに人気を集め、ホンダのメーカーとしての発展を支えた。
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世界中で受け入れられた理由とは?
意外にも世界進出は早く、発売翌年となる1959年には最初の地となるアメリカへ。当初は苦戦を強いられたというが、扱いやすさを伝えるキャンペーンを行うとともに、アメリカのニーズに合わせた専用モデルを投入。これがきっかけとなり、かの地での大ヒットをつかみ取る。その後、1961年には台湾でノックダウン生産を開始するなど、スーパーカブの世界進出は加速度的に進み、“日本のカブ”は瞬く間に“世界のカブ”となった。スーパーカブは現在、生産は世界15カ所16拠点で行われ、販売される国と地域は160以上にものぼる。これはカブが実用バイクとして優れていることはもちろんだが、それぞれの国や地域のニーズをくみ取った地域専用カブを積極的に投入するなど、使う人に寄り添った姿勢も支持されたのだろう。
1億台突破の記念すべきニュースとともに、もうひとつうれしい知らせが届いた。日本製カブの復活である。実は、スーパーカブの生産は、2012年より中国に移管されていたのだが、この度、日本の熊本製作所で再開されることとなったのだ。日本製となるのは改良が加えられた新型で、2017年11月10日に発売される予定だ。新型ではエクステリアを一新し、ライトはLEDになるというが、海外向け仕様のようなモダンなスタイルにはなっておらず、それはどこから見てもカブ以外の何物でもない。だが、これは決してノスタルジーなどではなく、それだけ初代モデルが完成されていたということなのだ。そんなカブは、これからも、時に姿や形を変えながら、世界中で人々の生活を支え続けていくことだろう。
(文=大音安弘/編集=藤沢 勝)
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大音 安弘
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